第246話 やっと日常、いやあ、忙しかったよね
帝国軍は撤退していった。
後で聞いた話だと、皇帝が殺されたらしい。
容疑者は宰相のマトヴェイ。
彼は皇帝死亡後、行方不明となった。
戦争どころではなく、次の皇帝を決めるのに大変らしい。
皇帝には子供が3人いた。
そして、帝国第4軍の軍団長も、名乗りを挙げた。
彼は皇帝と妾の子供だったようだ。
その位置では通常、皇帝を継ぐことはできない。
だが帝国の西で魔族の国への防衛にあたっていた第3軍、第4軍が、彼を立て、帝都へと攻めている。
第3軍の軍団長は、彼の親友。
そして彼自身、名将として軍での信頼も厚い。
容姿も良いため、国民の人気も高いとのこと。
第1、第2の有力な将軍が今回の戦いで亡くなった今、ほぼ戦力を温存していた第3、第4を押さえられるのか?
まあ、他人の国のことだ。
僕には関係ないだろう。
神国もかなりの被害を出し、逃げるように退却したらしい。
イザベル姉さんも大活躍だったようだ。
帝国と神国は仲違いをしたようだ。
うん、良かった。
2国が組んでこちらを攻めることは当分なさそう。
僕は帝国の退却を見届けた後、転移で村に帰ってきた。
村のみんなを移動させないといけないので、何回も転移が必要だった。
その後、東で神国を押さえてくれていた、亘理君たちも回収。
ついでに姉さんパーティも帰郷させた。
うん……疲れた。
ということで、ゆっくりと土いじりをしている。
いつものように土から頭を出しているハーマリーを、いつものようにつついたりしている。
『だからー、ルーカスはー、国のことに関わりすぎなんですよー。自分から苦労を買ってるんじゃないですかー?』
「そうはいうけどさ、ハーマリー。この国が無くなったら、ここも大変になるかもなんだよ」
『大丈夫じゃないんですかー。この村まで軍隊で攻められないでしょうー』
まあ、そうなんだけどさ。
色々な人にあって、関係ができた。
その人たちが苦労したり、もしかしたら亡くなるかもしれないのはちょっとね……
『ハーマリー。ルーカスの優しさがわからないのかしら?』
『ルーカスが疲れた顔をしてたからー、心配してあげただけですー』
『あんたが心配しなくても大丈夫よ。私が癒すから!』
メーリーアがハーマリーにビチャリと水を掛ける。
『ぷはぁぁ。これはー、育っちゃいますねー』
嫌じゃないらしい。
土の精霊が育つとは、何が、どこがだろうか?
『それはそうと、魔族の勇者はどうするのよ』
「え、春音さんのこと?」
どうとは、どういうこと?
『……ま、いいわ。ルーカスだからね。誰も私との絆を切ることはできないからね』
なんか納得している。
よくわからないが、こういうときは同意しておくに限る。
「そうだね。僕とメーリーアはいつも一緒だからね」
『ふふ。ルーカスもしょうがないわね』
『水のは性悪だけどー、単純なのですねー』
『黙りなさい、土の!』
メーリーアがハーマリーに水をぶっかける。
『ぷはぁぁぁ。生き返りますー』
彼女には、効かないらしい。
僕の畑なので、メーリーアもハーマリーが流れ出すほどの水は出さないからね。
今年も畑にはトマト、きゅうり、ナスがなっている。
今年はピーマンが良さそうだ。
ピーマンといえば、そうだな……
肉詰め、素炒め、野菜炒めに、チンジャオロース。
そして、カレーか……
あの苦みがカレーに合うんだよなあ。
獣人の国はスパイスが豊富。
やっぱりそろそろカレーに挑戦してみようか。
きっと、家庭のあの懐かしい味は作れないのだろう。
しかし、それっぽいものはできるかもしれない。
スパイスカレーなら作れるかもしれない。
あー……
獣人の国にお礼に行かないといけないか。
ボールベリホルム魔王国にもね。
小早川姉妹は元気にしているだろうか。
あの大筒は機能していただろうか。
手紙にも書いたし、トカゲ肉をふるまいに行きたいね。
ウチの村の人たちも戦争で大変だった。
ということで、風の精霊に索敵をかけてもらい、トカゲを狩りました。
僕が一匹、父さんが一匹、エルリックが一匹、亘理君が一匹。
結果、4匹のトカゲ肉を獲得。
うん、エルリックと亘理君がトカゲを狩れるようになりました。
一人前の狩人だね。
彼らの戦闘力なら危ないことはないんだけど、何故か文句を言われたな。
「トカゲ狩りって言ってましたよね?」と。
まさしくトカゲ狩りだっただろうに。
そうだ、亘理君の剣を作るのが良いかもしれない。
エルリックは光の聖剣ハバキリがある。
亘理君は聖剣を持っていない。
むしろ片倉さんが伝説級の武器を持っているんだよね。
ちょっと可哀想だ。
そろそろ僕も光の剣を打ってみる時期じゃないだろうか?
うん。
楽しそうだ。
あ、そうだ。
龍王さんのところにもトカゲを持っていかないといけないかな。
龍王さんもトカゲが好きだからね。
ティーレのお腹も少しずつ大きくなっていた。
食欲も出てきたようで、たくさん食べるんだよね。
まあ、もともとたくさん食べていたけど。
健康なので安心している。
午後のポカポカ陽気を精霊たちと楽しんでいると、珍しくエレノアさんが来た。
「たまにはお外でルー君と一緒にお茶しようかと思って」
シートを広げて、その上にサンドイッチと紅茶を用意してくれる。
サンドイッチはタマゴ、ハムとレタスとトマト、照り焼きチキンとなかなかに豪華。
二人では食べきれない量だ。
「ちょっと張り切っちゃった」
エレノアさんが僕の隣に座る。
一つタマゴサンドを食べる。
マヨネーズの酸味とタマゴの優しい甘さが良い。
「エレノアさん、おいしいよ」
「よかった。でもルー君、何作ってもおいしいって言うから、本当かなっていつも思うのよ」
「本当ですって、この味がすっかり僕の家庭の味になっているんだから」
僕の胃袋はすっかりエレノアさんに掴まれているんだよ。
エレノアさんは嬉しそうにしている。
ゆっくりとした時間が流れている。
こんな感じが良いと思う。
ホンワカした感じ。
「なんか、最近まで戦争していた感じはないよね」
エレノアさんが呟く。
「そうですね。戦争は終わったけど、たぶん戦地だとまだ色々大変だと思う。アンディ王もエドガールさんも忙しくしてるんじゃないかな。でも、ここは村だからね。こんな感じが良いと思う」
よくわからないけれど、理屈になっていないけれど、それで良いんじゃないかな?
ポカポカして、フンワカしている気分。
今はそれがいい。
戦争の後処理は国の偉い人に任せましょう。
頑張ってねー。
「変なルー君」
エレノアさんが笑う。
彼女が笑ってくれる日々がいい。
それが僕の日常だよね。
「ちょっとエレノア。お茶の時間にいないと思ったら、やっぱりルーカスのところだったわね」
リネットが少し拗ねた表情で歩いてくる。
「ごめんね、リネットちゃん。でも、私、戦争のときにルー君と一緒に行けなかったから、たまには良いでしょ?」
「はー…… ワタシだって、それほど一緒にいたわけじゃないわよ。ルーカスは忙しそうに飛び回っていたし」
リネットはため息をついて、僕の隣に座った。
エレノアさんの反対側。
「ワタシももらうわよ」
二人では量が多かったので、ちょうど良い。
この量を食べたら夕食が食べられないよね。
「リネットちゃんからみた戦争ってどんな感じだったの?」
「そうね。ワタシがいたのは北のダノムシュチク砦っていってね。北の守りとしては重要な砦で……」
リネットの話をエレノアさんが相槌を打ちながら聞いている。
理解できているのかは分からないけどね。
リネットの話し方もそれほど深刻そうでもないし、臨場感があるわけでもない。
まあ、終わった話だ。
そんなもんでいいだろう。
きっと後世の小説家が、面白い感じで話を書いてくれるだろう。
あることないこと、脚色しつつ。
それでいいのさ。
「あー、リネットさん。やっと見つけた!」
「今日もいい天気ですねー。ルーカス様?」
グレースとアーヴィが合流。
そういえば、彼女たちは普段はエレノアさんとお茶を一緒にしていたか。
「ああ、リネットさん。珍しいですね。畑にいるとは。我々もご一緒大丈夫でしょうか?」
「マスター、こんにちは。ピクニックでしょうか?」
レティとレアも合流。
一緒に鍛錬をしていたのかな。
「さすがにこの人数じゃ、サンドイッチが足りないでしょうが!」
リネットが何故か怒る?
しょうがないなあ……
「僕がストックしていた甘いものを出そう」
マジックバッグから、大学芋、プリン、ホットケーキを出す。
作って、時間ほぼ停止のマジックバッグに入れていたので、ほぼ作りたて。
僕がどうしても甘いものを食べたくなったとき用の物だ。
「……ルー君。いつの間にそんなに作って。しかも、独り占めしようとしていたの?」
エレノアさんを始め、妻たちの視線が冷たいね。
しょうがないじゃないか。
錬金術とかやっていると、脳に糖分が欲しいときがあるんだ。
そのたびに食べさせると……太るよ、なんて彼女たちに言えないし。
実はまだマジックバッグ内に、ショーヨ国で買った食べものも入っている。
どら焼き、たい焼き、だんごに、羊羹、葛餅、干し柿。
しょっぱいのも欲しくなるので、せんべいを代表に、米菓をちょこっと。
僕が作ったポテトチップスもあったり。
塩味、のり塩、コンソメ。
それは言わないでおこう。
こそっとネルと夜食かな。
人数が増え、とたんに騒がしくなった。
まあ、それもそれで良いんだよね。
フィオナさんとネルがいない……
ばれたら、後で色々言われそうだな。
空を眺めると、一つ雲がゆっくりと流れている。
上空の風は弱そうだ。
エイリアナは森の散歩だろうか?
まあ、どうでもいいかな。
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