第242話 【エルリック視点】ヴィタリ将軍

【エルリック視点】


「よお、エルリック! 師匠と、父さんもお疲れ様です。無事で何より」


俺たち最後の兵が、西門を出る。

砦の外では、先輩が魔法の準備をして待っていた。


「後、頼んます!」


「村戦力はもう一仕事よろしく!」


先輩がさも当然という風に、「お会計は割り勘ね」という様に頼む。

人使い荒いっすよ、先輩。


先輩、フィオナさん、マイラさん、リネットさんがいる。

村の魔法使い、その中でも実力者がそろっている。

俺たちが門を抜けると、先輩が土魔法を発動し、門をふさぐ。

先輩たちは城壁に手をつく。

魔法陣が描かれている。

それに魔力を込めると……

魔法陣は赤々と光る。

炎が上がる。


この砦に先輩が魔法陣を描いていた。

炎の魔法陣だ。

魔力を込めると一気に炎が上がる。

砦には何もない。

ただ敵兵がなだれ込んでいるだけだ。

そして、砦の中、全てが炎に包まれる。

つまり砦は大きなバーベキューコンロか……

いや、ピザ窯?

まあいい。

この砦に門は東西の二か所しかない。

敵兵は入ってきた東門から逃げるしかないんだが、しかし、そちらの門は、先輩が転移し、閉ざすことになっている。

東門近くはまだ火が回っていない。

ならば勢いのある兵士たちは止まることなく、場内になだれ込むだろう。

あの理性のない狂戦士たちだ。

罠とも思わずに。


城の中から敵兵の叫び声が聞こえる。

燃えて苦しむ兵士たちの叫びが。

それを聞きながら俺たち村の接近戦力は先輩の所に集結する。

転移するために。



フィオナさん、マイラさん、リネットさん、兵士たちを西門に残し、一部の戦力が敵軍の後ろに転移した。

いやー、チートっす。

まあ、先輩の転移だと、10人程度の人数が上限らしい。

通常この程度の兵力では何もできないが。

しかし村の戦力だ。

そして狙うのは一つ……


「おらあ! てめえら、あからさまな罠だろうが! 止まれよ。こんな幼稚な罠に引っかかってんじゃねえよ!」


ひときわ体の大きな男が兵士の暴走を止めようとしている。

武具の質も良い。

なかなかの実力者と思われる。

あれが将軍だろうな。


「じゃあ、よろしくお願いします。僕は東門を閉じてきます」


先輩は東門へと向かう。

俺たちは将軍を撃破へと突撃だ。



「こんばんは将軍殿。暴走する兵士たちを制御するのは大変じゃな。その苦労、察するぞ」


師匠が笑いながら将軍に話しかける。

将軍はこちらをジロリと睨む。


「おい、おい。王国の奇襲かよ。ずいぶん準備万端じゃねえか。だが、その人数じゃあ、俺は倒せねえぜ!」


一応、肝は据わっているようだ。

だがな。

恐らく師匠一人でも何とかするだろう。

そういう戦力なんだよ、将軍。


東門で土の魔力の発動を感じる。

大きな音がする。

恐らく先輩が門を閉じたのだろう。


「なんだ? まだいやがるのか!」


そして風の魔力を感知する。

敵兵の叫び声が上がる。

先輩の攻撃が始まったようだ。


「ほっほっ。こうしてのんびり話もできんようじゃて。すべてルーカスに持っていかれてしまうわい。ほれ、エルリック。おぬしに大将は譲ってやる。儂らは取り巻きで我慢してやろう」


「……いけ」


師匠が日本刀の柄を握り、ウィリアムさんが無言でデスサイズを構える。


「エルリック!? エルリック・ソーウェルか! なんだ英雄じゃねえか。英雄殺し、いいじゃねえか! いいだろう、相手をしてやる。俺はヴィタリ・ブラジェイ。帝国第六軍の将軍だ!」


将軍が凶悪な笑みを浮かべ、両手剣を構える。


「ヴィタリ将軍、まずは我々が!」


「こんな奴ら、相手にする必要はありません!」


横の二名が前に出るが。


「お主は儂の相手じゃな」


「……斬る」


師匠とウィリアムさんが突っ込む。

……一撃で倒しちゃあ、相手がさすがに可哀想に思う。

せっかく将軍を命がけで守ろうとしているのに。

この戦力、俺は必要あるんだろうか?


周りではレティーシャさん、レアさん、狩人チームも残った兵士と戦闘を開始する。

レティーシャさんの剣は冴え、レアさんは戦いの中で進化してるようだ。

問題はなさそうだ。


さてさて、せっかく譲ってくれた首だ。

ありがたくいただくとしようか。


「では、エルリック・ソーウェル。行くぞ」


ハバキリに魔力を与える。

刀身が光りだす。

命を喰わせろと叫びだす。

凶悪な聖剣だな。


師匠とウィリアムさんは観客。

他の兵士たちは他のメンバーで対応可能と判断したようだ。


「うははは、強えぇ爺さんたちだな。じゃあ、エルリックの後で相手をしてやろうかな、っと!」


将軍の身体強化が高まる。

魔道具による身体強化か。

闇属性の身体強化。


そして将軍が動く。

上段からの振り下ろし。

速い。

が、師匠よりは遅いな。

それを横によけ、足を斬る。

浅いか……

腿を少し斬った程度。


「おらよ!」


奴は腿の怪我も気にせず、剣を横になぐ。

痛覚が鈍化しているのかもしれないな。

奴の剣を後退して躱す。


「やるなあ、エルリック。強ええじゃねえか! だが、俺もまだまだだ!」


なに!?

闇の力が強まる。

これは?

魔道具に更に力を乗せるか。

それにヤツは耐えられる?


闇の力が強まり、腿の傷がふさがる。

筋肉が膨張し、体が一回り大きくなる。


「まあ、奴の強化を待ってやる必要もないのじゃがのう。どうなるのかは興味があるが、斬るのが良いと思うぞ」


「師匠。お約束というものが世の中にはあるんですよ」


「約束とな? 誰と誰のじゃな」


そうだな。

この辺の話は先輩とかフィオナさん、ネルさんじゃなきゃできない。

この時間で奴の首を刈ってもいいんだがな。

奴も最後くらいは見せ場が必要だろう。


と、奴の強化が終わる。


「待たせたな。その余裕、後悔させてやろう!」


血管が浮き出て、目が血走り、口が凶悪に笑っている。

……魔道具による影響が出始めている。

それでも一応理性は保っている。

さすがは将軍というところか。


「それじゃあ、続きだ!」


奴は手を上げ、魔法を放つ。

土の槍。

ハバキリで弾く。

重い。

通常よりも威力が高い。

奴は接近戦が得意で、魔法は苦手だろう。

それなのにこの威力。

これが闇による強化か。


「おらよ! 死んどけや!」


奴の横なぎの攻撃。

剣で受ける。

吹き飛ばされそうなのを堪える。

なるほど、奴はずいぶん強くなった。


「なんだあ、受けきるのか?」


「俺も成長しているんでね!」


奴は強くはなったが、技量が上がったわけじゃない。

ただ、力が、速度が増しただけ。


なあ、将軍。

俺もまだ上がるんだぜ。

光の身体強化を発動する。

体がうっすらと光る。

ともにハバキリの強化が増し、光が強くなる。

こいつ俺の光強化を喰ってやがるな。


奴の剣がハバキリに斬られる。


「俺のモラルテアが!」


なるほど銘ありか。

しかし、俺のハバキリが上だったということ。

格が違うんだよ。


「終わりだな」


「まだだ! 俺が死ぬわきゃねえんだ!!」


返す刀で首を斬る。

奴も避けようとするが、俺の剣が速く、首の半分を斬った。


「がああぁぁぁ」


苦しそうだ。

残りを斬ってやった、


「見事!」


「……よし」


師匠とウィリアムさんが戦いを見届けた。


他の戦いは。

村人たちと先輩により、砦に入らなかった兵士は駆逐された。


そして砦は赤々と燃えている。

フィオナさん、マイラさん、リネットさんがまだ魔力を込めているのだろう。

やりすぎな気もする。


キャンプファイヤーのように高く炎が燃え上がる。

薄曇りの夜は光がない。

その闇夜を炎が焦がしている。

もう兵士たちの叫び声は聞こえなかった。


帝国の第六軍はこうして壊滅された。

戦いの大勢は決した。

帝国は攻め手を無くし、王国が蹂躙されることは無いだろう。

この戦いが、この戦争の終わりを告げるだろう。



さて、フレデリカ、セリーナの所に帰ろうか。

きっと心配している。

そして……

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