第240話 ダノムシュチク砦、大谷アタック!

「うーん、壮観な眺めですね。フィオナさん」


「いやー、三国志な眺めってことかな?」


「三国志は中国で、こっちはヨーロッパ的だからちょっと違うんでしょうけど。でも、こんな感じなんでしょうね」


砦の城壁上で、山の間の道を眺める。

帝国の兵士が埋め尽くしている。

まるで人がゴミの様だ。

ウゾウゾと巨大な一つの生き物のように動いている。

たしかにこれは人間を塊として、数字としてみないと戦争なんてできないのかもな。

だけど戦うのは一人一人の人間。

ただの数字じゃない。

そこはちゃんと考えないといけない。


やはり大量の攻城兵器を運んできている。

魔法がある世界ではあるけれど、魔法使いの魔力は無限ではない。

やはり兵器に頼ることになるようだ。

魔道具による多少の改良はあるにせよ、ラインナップは大体同じ。

投石器、破城槌、攻城塔。

対魔法攻撃用に防御を強化されている。


こちらの城壁の上にも巨大な弓であるバリスタや、投石器が設置されている。

やはり魔法使いの数が少ないのと、魔力量の問題だ。


「で、なんで僕がここにいて、こんな格好をしているの?」


隣でクリフ君がため息をつく。


プ、クフフ……

いや笑うのは悪い。

けどね。

見た目が全然クリフ君じゃないんだよね。

彼の髪の色が茶色から黒に、瞳の色もアンバーからこげ茶に変更されている。

これは浅野さんの髪の色を変えた魔法と、それをちょっと変化させた瞳の色を変える魔法で実施した。

そしてシークレットブーツで身長を15センチほどアップ。

僕と同じくらいの身長になっている。


「なに笑ってんの! ルーカス君だって、すっかり別人じゃないか!」


クリフ君がプクーと頬を膨らませる。


そう。

僕も黒髪、茶色の瞳になっている。

隣にいるフィオナさんも金髪に、ブルーの瞳。

ちょっと高めのヒールで身長を伸ばして……胸に詰め物。

まあ、そこはあまり突っ込んじゃいけないところ。


「説明したじゃないか。神国の勇者、大谷君と聖女アルレット、それに小西君の変装をするって」


「でもよく考えたら、向こうの兵士から距離があるじゃないか。あそこから僕らを認識できるの? 変装する必要はないんじゃないの?」


まあ、そうなんですが、念には念を入れてです。

クリフ君は小西君役で頑張ってもらいます。

強制です。


僕が大谷君で、フィオナさんがアルレットさん役ね。


「多少、ルーカスの悪ふざけが入っていると思うわよ。そんな顔をしてるわ」


ひどいよ、リネット。

僕はいつも真面目。

最善を尽くしているんだよ!



『ルーカスちゃん。相手が魔法準備してるわ。気を付けてね』


シルフが警告してくれる。

あ、この魔法は……


「これはメテオストライクよ!」


さすがフィオナさん。

彼女の得意魔法だ。

やはり、彼女が気づくね。


敵さんもなかなか強力な魔法使いを連れてきているようだ。

まだかなりの距離がある。

この距離から魔法が届くか。

超級魔法は、戦略級のものが多い。

すると射程距離は長くなる。

超級魔法使いをこちらに持ってきているか。

まあ、こっちにフィオナさん、エドガールさんがいるのは有名だから、その対策か。


『シルフ、魔法使いはどこかな?』


『あのへんね』


シルフの指さす方を確認する。

うん。

見えない。

ゴーグルの魔道具を使えば見えるかもしれないが、そうすると大谷君っぽくなくなるからなあ。

まあ、どうにかなるか。


手にしている杖をそちらの方向へ向ける。

これも大谷君仕様。

浅野さんたちに聞き取りをして、彼が使っている杖っぽいものを作成した。


ちなみに大谷君が使っている杖は、神国の国宝の杖とのこと。

光魔法の威力を高める神から与えられた聖なる杖。


対して僕の杖は、森の木をそれらしく切り出して、フィオナさんが持っていたヒュドラの魔石を付けたもの。

こっちも光魔法の威力向上の効果を付与しているが、やっぱり性能は本家のほうが上だろう。

劣化版の杖。

仮に名前をカドゥケウスとしておく。


『エルミリー、行こうか』


『応。任せておけ!』


さて、魔法発動前に魔法使いを除いてしましましょう!


カドゥケウスをかざす。

光の精霊が僕の前方に浮かび、杖の指す方向へ手をかざす。

光の魔法を発動する。

大谷君の光魔法は高出力のレーザーだ。

僕も同じ魔法を発動する。


いつもよりも太いレーザーが一瞬のうちに敵軍に突き刺さる。

ちょっと外れたか……

射線を少し移動させシルフが示した位置辺りを薙ぐ。

ついでに近くにあった攻城塔も通過させる。

攻城塔は一瞬で燃え上がり、崩れる。


『シルフ、どうかな?』


『さっすがルーカスちゃん。命中! 高ランク魔法使い一人撃破ね!』


まあ、人殺しだ。

そんなに嬉しそうにすることじゃないけどね。

どれくらい殺しただろうか?

50は下らないと思う。


「おー、地面がえぐれてるよ。光魔法で魔法発動前の相手を狙撃? いや、殲滅かな。えぐいことするね」


フィオナさんが結果を確認する。

光魔法は一瞬で相手に届くから、カウンターが取れる。

僕の光魔法も慣れたのか、発動が早くなり、威力も向上した。


「ルーカス君の攻撃魔法って普通じゃないよね。ちょっと相手が可哀想な気もしてきたよ」


「クリフ君、ダメだよ。これは戦争だ。こちらが魔法を撃てるということは、相手も魔法を撃ってくるってことだ。やられる前にやる。非情だよ」


「うーん……それにしても戦力差ってあると思う」


優しさはダメ。

攻め込んできたのは相手。

最善は自国、相手国の兵士を損なわず戦争が終わること。

それができないなら自国の被害を少なく、圧倒的に勝利する。

優しさで戦争を長引かせるのは下策だ。



さて、大谷君は一日に3発の魔法発動ができるらしい。

それを真似する必要がある。

連続で3発は撃てないだろう。

魔力の充電期間を持たなければいけない。


ということで変身を解く。


「ふう……さっぱりしたよ。やっぱり僕は僕が一番いいよ。それで、僕は何をすればいいかな?」


クリフ君は魔法攻撃が不得意だからね。


「投石器を手伝ってくれない? また一時間後にお願いね」


「……行ってくるよ」


そそくさとここを離れていった。

そんなに小西君役は嫌だったのだろうか?


「他人を演じるのって楽しいと思うんだけどね」


「悪いルー君が出てるわよ。さて、さて。私も行きますか!」


フィオナさんは魔力を集中させる。


超遠距離での魔法の打ち合いに発展する。

フィオナさんのメテオを相手は嵐の魔法で防ぐ。

さすがにフィオナさんのメテオを全て砕くことはできず、岩石はいくつかに砕かれ、落下する。

本来の威力ではないが、損害を与えることはできた。


向こうではエルリックのパーティのニナさんが巨大な氷魔法をぶちかましている。

相手は火魔法で迎え撃つ。


魔法戦は派手だ。

だが慎重さが必要。

対処を誤れば、被害が大きくなる。


さて、僕もいこうか。

ここはシルフもいることだし、風魔法、竜巻でしょうね。


『私もいるって!』


『あら、エイリアナちゃん。一緒に協力しましょう!』


『その余裕が嫌だっていってんの!』


エイリアナが僕に隠れて、シルフに文句を言っている。

正面からは怖いんだね。


『まあまあ、二人とも。いくよ!』


『いくよ、ルーカス!』


『シルフも、ちょっとだけ力を貸しちゃおう』


シルフは人間の戦争に力を貸してはダメなのではなかったでしたっけ?

ま、いいけど。


では魔力を練りましょうか。

ん?

マジックバックから剣を取り出す。

振り抜き、飛来した矢を叩き落とした。

強弓だ。

敵先頭はまだ1キロ弱先。

距離がある。

それを魔法を発動しようとしている魔法使いを狙って撃ってきた。

かなり正確に。

どんな射手だよ。

矢に魔力も帯びていたから、魔法を付与された、弓、矢を使っていると思われる。


少し興味があるが、危ないので排除しよう。


『エイリアナ、魔法の誘導お願い!』


『了解! 任された!』


『シルフも、ルーカスちゃんのお手伝いしたい!』


『なら、スピードを!』


『分かったわ』


風の槍だ!

風の力が極限まで集約された風の槍。

普通の風の槍ではこの距離は届かないし、届いたとしても威力がない。

八重の魔法陣を直列に重ね、その力を一本の槍に注ぎ込む。

レーザーのような速度の槍が、一直線に、一瞬のうちに敵陣に突き刺さる。


……うん。

距離が遠すぎて、結果が分からない。


『ルーカス! 速すぎだよ! 操作が大変だったんだからね!』


エイリアナが戻ってきた。


『外した?』


『私が外すはずないじゃない! 見事的中! 撃破!』


エイリアナが嬉しそうに飛び回る。


こうやって危ない指揮官クラスを排除していけば安全になるだろう。

シルフに危険な兵士を抽出してもらって、狙撃を繰り返そう。


しばらくすると帝国の兵士、攻城兵器が接近してきている。

魔法戦は下火になっている。

魔力が不足してきたようだ。


ここから魔力が回復するまで、兵器による戦いに移行する。


まずは防御側からだ。

城壁の高さがあるため、こちらの方が射程距離が長い。


「撃ち方始め! 近づけるな! すべて撃ち殺せ!」


第一軍団長ドレイク将軍が攻撃開始の合図を出す。

ラッパが鳴り響き、城壁上からの攻撃が開始される。


投石器から石が放たれ、弧を描き、敵陣に落下し、兵士を押しつぶす。

バリスタからは大きな矢が放たれ、敵兵士を数名一気に貫き、地面に突き刺さる。


敵攻城兵器には、厚い防御が装備されている。

いくつかは潰せたが、いくつかには接近を許した。

敵、投石器から石が飛んでくる。

砦に激突し、城壁を揺らす。


「敵の兵器に攻撃を集中せよ!」


ドレイク将軍が指示を出す。


防御側は攻撃側の兵器を一つずつ丁寧に潰していく。



さて、そろそろかな?


「フィオナさん、クリフ君! 『大谷アタック』だ!」


「ルー君……『大谷アタック』はちょっと格好悪いわよ。大谷君がすべっているみたい。可哀想よ」


「ルーカス君、また? ルーカス君だけで魔法を撃てるんだから、僕、いらなくない?」


つべこべ言わずにやる!

戦争は団結が大事!


『そうだ! いくぞルーカス! 我に続け!』


エルミリーが生き生きしている。

久しぶりの活躍だからね。

活躍の場が人間同士の戦争ってのは、どうかと思うが。


今回の光魔法攻撃で数台の攻城兵器を撃破。

大損害を与えた。


さて、さて……

こんなことをあとどれくらい繰り返したら、相手は負けを認めるかな?

やっぱり大将を倒さないとダメかな?

いっそのこと皇帝を暗殺とか……

さすがに暗殺は警戒しているか?

ふむ。

遠距離から光攻撃魔法を城に叩きこむか?

それが一番簡単かなあ。


エルリックの方はどうなっているかな?

連絡待ちかな。

しっかりやれよ、エルリック。

いや師匠と父さんだよなぁ、大丈夫か?

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