第227話 【ラウニャ視点】エドガールは馬鹿かもしれにゃい

【ラウニャ視点】


サンバートフォード王国、王都ヘイスティンフィル。

ラウニャはまだこの国に居たりするにゃ。


ラウニャは獣王の国の情報員。

サンバートフォード王国を担当しているので、間違ってはいないにゃ。

ただにゃあ……


「ねえ、ラウニャさん。何か珍しいものでも見えますか?」


部屋の窓から、ちょっとだけ黄昏の雰囲気を醸しつつ、街並みを見ていたにゃ。

部屋の机。

エドガールが大量の書類の山から顔を出した。


にゃんでラウニャはこんな国の中枢にいるにゃ……?

しかも隠れもしないで。


「別に。にゃんでもにゃい」


これじゃあ、全然諜報員じゃないにゃ。

エドガールにも、ラウニャが獣王国の密偵だってバレバレにゃ。

人生はわからないにゃ。

どこで間違ったのか。

もしかしたら間違っていないのか……


「そうですか。なら、お茶の時間にしましょう。少し、話をしたいのですが……。よろしいでしょうか」


彼は立ち上がり、棚の方へ。

そこにティーセットがあるにゃ。

彼はお茶が趣味。

いつもお茶を淹れてくれるにゃ。

べつにラウニャはお茶に詳しくないから、どんなのでもいいにゃ。

でも、いつも変わったお茶。

香り、風味が違うもの。

人間の趣味とはにゃんだかにゃあ……


「本日のお茶は……」


みゃー。

なんか、うんちくを垂れているにゃ。

これだから男の趣味は面倒にゃ。


でも、いい香り。


「どうです?」


「まだ、飲んでないにゃ」


お茶を一口飲む。

甘いリンゴのような香りがする。


「うむ。おいしいにゃ」


「それは良かった」


エドガールが安心した表情になる。

もうずいぶん偉い人になったんだから、そんなに気を遣わないでもいいのにと思うにゃ。

彼は現王アンディの魔法の先生。

そして、サカイの乱での戦果も大きい。

ナイトウの撃破、野戦での功績。

現在は王国の中心人物として、忙しい日々を送っているにゃ。

にゃんか、忙しすぎて、アンディとも会えないとかぼやいていたにゃ。

そこが一番親密に話し合わないといけにゃいと思うにゃ。

人間の国というのも、面倒な制度になっているにゃ。


「あ……えっと……そう。ラウニャさんも知っていると思いますが、ラグラゾフスラン帝国の動きです」


みゃー。

視線をうろうろとさせて、にゃんの話かと思ったけど、その話にゃ。

帝国の動きが怪しいと情報はもらっているにゃ。


「帝国が第6軍を新設したのは?」


「知ってるにゃ」


「初陣で、魔族の一部隊に完勝したようです。試運転だったようで、帝都に帰還しました。上々な成果なのでしょうね」


第6軍。

問題児ヴィタリ将軍の胡散臭い軍隊。

確か、数は二千程度にゃ。

普通なら影響ない規模のはずにゃ。

だけど、胡散臭い。

プンプン匂うにゃ。


「エドガールは、それをどう思ってるにゃ」


「私は怖いと思いました」


「怖い、にゃ」


「はい。その矛先はどこへ向けられるのでしょうか?」


普通に考えれば、それは魔族の国。

戦争中のボールベリホルム、だと思うにゃ。

だけど、彼の答えには、別のニュアンスが含まれているにゃ。


「ここ、サンバートフォード王国の可能性を考えてるにゃ?」


「はい。もしかしたらと。実際、こちらとあちらはそれほど仲が良いわけじゃありません。それに国同士になると、仲が良いからといって戦争にならないとは言い切れないですからね」


確かに国同士の関係は利害関係が大きなウェイトを占めるにゃ。

仲がいいとしても、戦争することに国益があるとしたら、それをするのが国の指導者にゃ。

彼らは冷静で、冷徹。

たぶん、それが優れたリーダーかもしれにゃい。


だけど、そういうリーダーは獣人の国だと人気がないにゃ。

獣人の王様は熱く、豪快に笑う人柄が好まれるにゃ。

たまに失敗するけれど、それは周りがサポートすればよいだけにゃ。

ということで、ラウニャが頑張っているのにゃ。

別に王様が好きってことじゃないけどにゃ。

それは秘密にゃ。


ちなみに今代の王様は……うん、化け物にゃ。

あれは戦っちゃいけない相手にゃ。

即位当時、バダンシュヴァール神国が何回かちょっかいを出してきたけど、コテンパンにやられて、だいぶ懲りたみたいにゃ。

最近は攻めてこないにゃ。


「私はどうも心配性で最悪を考えてしまいます」


「いいんじゃないかにゃ。リスクを考えて、対策をとるのは正しいことだと思うにゃ」


「それで動けなくなることもあるんですよ。足がすくんで……」


彼は紅茶に視線を落とす。

それじゃあダメにゃ。


「悪いことが起きそうなら動かないとダメにゃ。座っていたって、その悪いことが起きるだけにゃ。エドガールは一人で考えすぎにゃ。色々頼ればいいにゃ。エルリックとか、またあのルーカスとか。アイツらなら、大抵何とかするにゃ」


あのルーカス……

うちの王様と同じくらいにおっかない奴にゃ。

あれも逆らっちゃいけない奴。

だいたいの問題を腕力で解決していく、バーサーカーにゃ。


「はい。そうですね……。ありがとうございます。ラウニャさん。いつも私の背中を押してくれて」


「まあ、乗り掛かった舟にゃ。ラウニャはこの国のためにそんなに動けにゃいけど、エドガールの話し相手くらいにはなれるにゃ」


「……ラウニャさんは。帝国と戦争になったら、それでもここにいてくれますか?」


「にゃ?」


「ラウニャさんは獣人の国の人。危険な所にいる必要はないですよね。……獣人の国に帰るのでしょうか?」


確かにラウニャの役目は、神国で召喚された勇者たちの見張り。

神国で召喚され、王国側へ移動したサカイたちを見張っていたにゃ。

神国側は別の子が見張っているにゃ。

そういえば、オオタニとコニシしか見なくなったと情報が上がっていたけど……


王国では、サカイグループは壊滅したにゃ。

だから、それほど重要度はにゃい。

ぶっちゃけ、ラウニャは帰ってもいいはず。

なんだけどにゃあ……

なんか、ルーカス周辺を見張っとけと、本国からの指令変更が来ているにゃん。

さて、どうしてにゃ?

森なんか行きたくにゃい!

でも、王都じゃあ、ルーカスの動向は分からないにゃ。

行かなきゃいけないにゃ!

どうして、こうなったにゃ!?


「ラウニャはもう少し、王国に残るにゃ。安心しろにゃ。もう少し、お前の背中を叩いてやるにゃ」


エドガールのとろでも多少は森の情報が入ってくるにゃ。

ここでいいにゃよね。

森で直接見張らなくても。


ラウニャのカップの中身は無くなったにゃ。

うん。

美味しかった。

じゃあ、ちょっと街でも散歩してこようかにゃ。


「じゃあ……」


「待って」


立ち上がり、歩き出そうとしたにゃ。

手を……エドガールに握られたにゃ!


「みゃん!」


ビックリしたにゃ。


「待って、ラウニャさん。……私と一緒にいてください!」


「だから、話し相手になると言っているにゃ」


「違う! 違うのです」


なんか、エドガールが必死にゃ。

どういうことにゃ?


「ずっと、一緒にいてください。私とこの国で一緒に生きてください。私にはラウニャさんが必要なんです」


……ずっと?

それはどういうこと?


「ラウニャさんに側にいてほしいのです。どうか、どうか……。『好き』なのです、貴方のことが」


みゃ!

好き、だと!?

ラウニャを?


「だって、ラウニャは獣人で、エドガールは人間にゃよ!」


「私には関係ありません。獣人かどうかなんて関係ないのです! 確かにその耳、尻尾は愛らしく、いつまでも触れていたいと常日頃考えてしまいますが」


常日頃……


「それがなくても、貴方がいいのです。その目まぐるしく変わる表情。強い口調なのに、可愛らしい声。お肉を美味しそうに口いっぱい頬張るところ」


あまり褒められている感じがしにゃいにゃ。


「それら全てが愛おしいんです。だから、どうか……」


ラウニャ、愛の告白をされてるにゃ。

王国の重要人物、エドガールにゃ。

コイツをそんな対象として見てなかったにゃ。

……だけど。


「保留にゃ」


「保留、とは?」


「ラウニャも急に言われて混乱してるにゃ。だから、保留にゃ。少し様子を見るにゃ。もしかしたら一緒にいてもいいかなあって思うかもしれないにゃ」


「はい! それで十分です。よろしくお願いします!」


「みぎゃあぁ! だからっていきなり抱き着くにゃ! まだ早いにゃ!」


抱き着くエドガールを蹴り剥がしたにゃ。



そういえば本国の姫様、カティシャ様がルーカスを婿にとったと連絡があった。

まあ、それで、ルーカスの見張り強化といことにゃ。

ルーカスも何人目の妻にゃ?


ヴァグン国王も奥さん三人にゃ。

強い男が複数妻を得るのは獣人の国では当たり前にゃ。

だけど、ラウニャは嫌にゃ。


「エドガール。もし、ラウニャ以外の女に色目を使ったら、殺すにゃ」


エドガールはキョトンとラウニャを見て……

それから。


「はい。私はラウニャさんだけです!」


嬉しそうに笑った。

ラウニャが殺すって言ったのに。

頭のネジが外れているにゃ?

うーん……

エドガールとのことは少し考え直しておくかにゃ。

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