第147話 義兄さんのためは建前、村のためが本音
男どもがいると話がまとまらないということで、オーレリアさん、ケイティさん、義母さん、リネットで別室へ移動。
彼女たちで話し合いが行われた。
当事者の義兄さんは蚊帳の外。
男の意見は要らないらしい。
まあ、家庭での男性の立場なんて低いものだ。
男性が権力を持てば、変なことをするだろうから、こんなところでいいんだろうと思う。
男の悲哀だね。
その結果、オーレリアさんがジェフリーの二番目の妻を勝ち取った。
どんな話し合いが行われたのかは不明だが、義母さんがケイティさんを説得したらしい。
伊達に村長婦人じゃない。
オーレリアさんは辺境伯のため、この村に住むことはできない。
ジェフリーと合う日数も少なくなるだろう。
それならジェフリーとケイティさんの結婚生活への影響も少ないかもね。
うーん…
そうだとすると、オーレリアさんは子供が欲しいって言っていたけど、会う回数が少ないと難しいか…
「ねえ、ルーカス。オーレリアさんを夜だけでもこの村に来させられない?」
リネットは、やはりその辺を心配しているようだ。
オーレリアさんはダーリンブニッジという街に居を構えている。
シェフィールド辺境伯領の中央あたりだ。
だいぶ遠い。
それに辺境伯となると常に忙しいだろう。
村に来れるのは、よくて年一回くらいだろうか。
七夕かよ…
「どうしても彼女を助けたいの?」
「そうね。仲良くなっちゃったし、同年代だしね。彼女、これから当主になるんでしょ。それってすごく大変なことじゃない。だから、これだけでも助けて上げられないかなって。少しだけでも楽になればね」
ふむ。
リネットもだいぶ落ち着いたものだ。
大人になったのだろうか。
他人に優しくできる。
良いことだと思う。
なら、夫として妻の要望に応えたいとは思う…
しかしねえ…ちょっとやり過ぎな気もしているんだよ…
「うーん…僕はあまり乗り気じゃないけれどね。できなくはないんだけど、あまり…」
「ねえ。お願いよ、ルーカス。可愛い妻のお願い」
リネットは可愛らしい仕草で僕に頼む。
いつもはそんな顔しないのに。
まあ、リネットらしいといえば、リネットらしい。
そして可愛いことは可愛いんだよね。
「しょうがないね。今回だけだよ」
それに乗ってあげよう。
オーレリアさんにも幸せになってもらいたいし。
多少やり過ぎになるかもだけど、まあ、なんとかなるだろう。
「ありがとう。大好きよ」
リネットは僕に抱き着く。
うん。
まあ、悪くないと思う。
「あれが夫婦というものですのね。仲が良く、羨ましいです」
「うーん…少し作り物臭いというか…まあ、仲は良いんでしょうね」
まあ、夫婦とはこんなもんだよ。
どちらか片方、もしくは両方とも少しは演技が入っているさ。
素のままの人間同士では、摩擦が高すぎる。
それでも一緒にいたいと思えることが大事なのかな、きっと。
オーレリアさんとケイティさんに見られていたか…
二人、普通に話ができる程には、仲が良くなった感じだね。
良かった、良かった。
さてさて。
オーレリアさんの移動方法だけどね。
転移の魔道具だ。
レティーシャさん用に開発している魔道具の転用となる。
個人専用で、その人しか使えない転移魔道具。
転移先はこの村に固定する。
更に転移元の場所を記憶する。
再度、使用した場合、記録した位置に転移し、戻ることができる。
この個人特定と、転移位置の記録が難しかった。
今まで実現できなかったんだけど、ネルと試行錯誤、何とか実用化できた次第だ。
それをオーレリアさん用にカスタマイズする。
この個人特定が正しく機能しないといけない。
村に変な人が殺到するようなことにならないようにしないと安心できない。
オーレリアさんは自分の領地に戻っても、この村に転移することはできる。
夜、義兄さんとすごし、翌朝、自宅に転移で戻る。
あとは義兄さん宅でルールを決めればよい。
いつの夜をオーレリアさんのものにするか、ケイティさんのものにするか。
ああ…
ジェフリー義兄さんもこちら側に仲間入りですね。
最近知り合った村民以外の人に転移の魔道具を送るのも、やり過ぎだと思うんだけど……
他の錬金術師にコピーされたら大変なことになりそう。
転移の魔道具が大量に出まわったら、文明が一気に進む。
神様に怒られそうだ。
バベルの塔になりかねない。
うーん、義兄さんの幸せな結婚生活のためだ!
まあ、なんとかしますか。
個人特定の個所をなりべく解析できないように作りましょう。
頑張るとしますか!
数日後、オーレリアさん用の転移魔道具の作成が完了した。
頑張ったよね、僕。
もちろんネルにも手伝ってもらいました。
ネルも寝不足です。
というか、起きて来ません。
自由人め…
で、本日稼働実験だ。
村長さん宅に集まっている。
応接室に、村長さんとジェフリー、リネット、ケイティさん、それと辺境伯関連の皆さん。
「では、ワーグマンさん、お願いします」
「何で、俺ですか?」
「はい。発動しない確認ですので」
ワーグマンさんに魔道具を渡す。
手のひらサイズの正六角形のプレートだ。
前錬金術師マスターの作ったもののように綺麗な卵型のものにできなかった。
あれって細かい模様も彫り込まれていて美術品としても価値のありそうなものだ。
僕のはただのプレート。
チェーンを付けてネックレスにできるようにした。
無くさないようにね。
本当はもう少し小型化できれば良いのだけれど…
それは今後の課題だ。
さて、ワーグマンさんで実験だ。
彼は恐る恐る魔力を籠める。
「…何も起きませんが」
「はい。それで良いのです。では、オーレリアさんお願いします」
オーレリアさんはそれなりに魔法を使えるようだ。
貴族とは、庶民を、領地を守る人種。
そのため、戦闘訓練が欠かせない。
魔力があるのなら魔法の訓練もする。
男性ならね…
女性の場合、政略結婚が主な仕事なので、戦闘訓練の必要はなのだけれど…
意外にお転婆なのかもしれないな、オーレリアさん。
彼女が魔道具に魔力を籠めると、魔法陣が発動し、そして彼女が消えた。
「お嬢様!」
「どこへ!」
騎士さんや、執事さんが大慌てだ。
いや…説明しましたよね、転移の実験だって。
転移先は村長さん宅の一室。
そこにはフィオナさんが待機している。
問題はない。
すぐに魔法陣が発生し、オーレリアさんが戻ってくる。
「ただいま戻りました」
彼女に特に問題はない。
実験は成功だ!
いやね。
修正したのは転移の魔法陣箇所じゃなくて、個人認証個所なので、転移自体には問題がないはず。
ただ、他の個所をいじったからとて、転移機能に問題がないとは言い切れない。
問題発生に確率はほぼ0パーセントだと思うけれど。
これって、本人が使用しないと転移しないから、どうしてもオーレリアさんが実験する必要があるんだよね。
これでどこか知らないところに飛んで行ったら、また辺境伯と戦争だったか?
いや、辺境伯にその戦力ないよね。
恨まれるだけかな?
まあ、実験が成功して良かった。
あと、転移距離が遠いので魔力量が必要になる。
そのため別途魔力蓄積用の魔石も組み込んである。
魔石への魔力の補充は、僕とかフィオナさんがお金をもらってやっても良いね。
小金が稼げそうだ。
良いんじゃないだろうか。
これで義兄さんとオーレリアさんは幸せな結婚生活が送れるだろう。
ケイティさんがね、ちょっと可哀想だけど…
村と辺境伯のためか…
村長一家は大変だね。
ああ、僕はただの農家で良かった。
「ねえ、ルーカス君」
義父さんに肩を叩かれる。
「はい。何でしょう。義父さん」
「義父さんね…まあ、いい。この魔道具だがね、画期的すぎないないかい?」
「はい。画期的すぎますね。だからオーレリアさん専用になっています」
「他は誰に渡すつもりだい?」
「レティーシャさんと、うーん…それとミラベルさん…ですか、ね」
姉さんは…まあいいか。
ミラベルさんが持っていれば。
エルリックも候補ではあるが、保留中。
アイツはまだこの村に来る時期ではない。
もっと勇者として活躍し、そして疲れたらなら喜んで迎えよう。
「それくらしにしておいてくれないかい。あまり大っぴらにする技術じゃないね。オーレリアさんたちも口外禁止ですよ」
義父さんは転移魔法陣の危険性を認識してくれたようだ。
さすがは義父さん。
オーレリアさんにも注意してくれる。
「はい! もちろん誰にも言いません。誰か漏らしたらその命をもって償います!」
オーレリアさんの決意が重いよ。
そんなに怖い村じゃないからね。
技術が流出したら、僕が責任を持って、破壊、抹殺しますからね。
最後、義兄さんに呼び止められる。
「なあ…ルーカス。何でそれほど世話を焼いてくれる?」
「ああ。もちろん義兄さんの幸せのためですよ。僕は義兄さんにも幸せな結婚生活を送ってほしいのです」
「…ああ。そうだな。幸せな結婚生活だな…」
「今年の結婚式もにぎやかになりそうですね。僕のところと、義兄さんのところと。ブライアンさんところはどうかなあ?」
「…去年のような事態は御免だぞ」
もちろん今年は去年の様にはなりませんよ。
フィオナさんはもう結婚したんですから!
さすがにあのクラスの無茶をする人はそうはいないでしょう。
たぶん…
よし、よし。
順調に多妻の家族が増えている。
義兄さんもこちら側。
僕の多妻が目立たなく…ならないよなあ…
そう言えばエルリック。
あれはいつ式をあげるのだろうかなあ?
セリーナさんとフレデリカさんは実質もう妻だよね。
しかし、勇者として活動しているから、子作りは難しそうだよね。
ふむ…
やはり、勇者はなかなか大変だ。
少しだけ、優しくしてやろう。
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