第124話 食べることは…大事だと思うんだけどなあ…
「おー、その子がレアちゃんか! 初めましてフォイナです。ルー君の奥さんだよ」
僕はレアを家に連れて行く。
フィオナさんが出迎えてくれる。
「ルー君、お帰り。ネルちゃんはちゃんと食べた…あれ、何でルー君は女の人をお姫様だっこしてるのかな?」
エレノアさんも出て来て…
疑われるね。
「なに騒いでるのよ、エレノア。…おい…ルーカス、もう一人増やしたの! 六人目か! さすがに多すぎでしょ! なに、両手分妻を取るつもりなの!」
あー、説明前にリネット。
混乱するね…
「なあルーカス。妻が多いと大変だな…」
ネルにさえ心配される始末。
…連絡してから行動した方が良いね。
常に情報共有は大事。
チームは情報格差があると、ほとんどの場合、混乱し迷走する。
非効率な集団になる。
…まあ、きっとそういうことかな…
なんとか落ち着きを取り戻し。
改めてレアを紹介する。
「彼女がレアだよ」
「セントウレアと申します。ホムンクルスです」
レアは薄いスミレ色のワンピースを着ている。
スタイルが良いので、とても似合っている。
立つことはまだ難しいので椅子に座ったままだ。
「やっと外に出れるようになったのね。おめでとう!」
「ああ、なるほどね…こんな美人が裸で浮かんでいたんだ…」
「ホムンクルスですか…珍しい生命ですね」
エレノアさん、リネット、ティーレ、それぞれの感想だ。
さて、ではホムンクルスとはどういう者なのだろうか?
「レア、ちょっとステータスみたいのだけど、良いかな?」
「ルー君、それはプライバシーの侵害だよ」
「いえ、エレノアさん、大丈夫です。私はマスターの物です」
「レアは、僕の物ではないよ。しっかりとした一人の人格だ…ま、そこはゆっくりとね…」
まあ、レアは生まれたばかりと考えてゆっくりと成長していけばいいだろう。
ゆくゆくは一般の人間と同じように自分で考えて、行動し、責任を果たせるようになればいいと思う。
「ま、軽く考えて、健康診断のようなものだよ」
と、理由をつけておく。
半分はそうだけど、半分は興味。
前マスターが生み出したホムンクルス・セントウレア。
生命…種としてどういうことになっているだろうか?
種?
彼女は子供を作れるのだろうか…
ま、それは置いておいて…
ガラス瓶の中だと魔法が遮断されて、ステータスが見れなかったからね。
では…
体力: 2000
力: 1500
素早さ:1500
魔力: 2000
称号:禁忌の技術で生み出された生命、彷徨える魂
…
…
まあ、称号は予想通りか…
それにしてもステータスが高い…
「で、どうだったのルー君?」
「ええ、フィオナさん。数値はかなり高いですね。だいたい1500ですよ」
「え、それって、Sランクの相当じゃない!」
「はい。鍛えれば相当戦えます。あとはレアがそれを望むかと、センスの問題もありますが…」
試験体にしては数値が高いと思う。
溶液から出すことができない個体にここまでのステータスを持たせる意味が分からない。
…
溶液から出せない問題は一旦保留にして、ステータスの向上を研究したのだろうか?
何のために?
ホムンクルスを大量に生み出し、国でも落とす気か?
前マスター、ご老人が国盗り?
…いや…復讐としてならアリか…
復讐なら国を混乱させるだけでも一定の意味を持つ。
前マスター、天才錬金術師は意外にヤバイ人なのかもしれない…
そして称号だ。
「禁忌の技術で生み出された生命」はまあ、そういうものだろう。
不思議はない。
「彷徨える魂」、こちらだ。
彼女の魂は、彷徨える魂なんだ。
前マスターの研究資料では、彼女に自我が芽生えたらしい記述は発見できなかった。
そもそも、そういう方向の研究はしていないように見える。
まず、体、器を作っていた段階だ。
でも、レアには自我がある。
なら、その魂はどこから?
彷徨える魂だ。
たぶん死亡した魂が、偶然にホムンクルスという器に移った。
…
そういうこと…
レアは今の体に入る前の人生の記憶がない。
なら、このことを伝える必要はないか…
もしかしたら前世の記憶を思い出すかもしれないが…
もしかしたら前世を思い出した方が幸せかもしれない…
もしかしたら前世を思い出すことで不幸になるかもしれない…
分からないな…
保留だ。
答えは出ない。
とりあえず分からないまま進むしかない。
いつもそんな感じだよね…
「で、レアはここで暮らすの?」
「はい。エレノアさん。地下室は日もあたらないし、閉塞感があるから。なるべく気持ちの良いところで暮らした方が良いと思う」
「はい。私はマスターの部屋の隅に置いてもらえば大丈夫です」
「それはダメ!」
「ルーカスの部屋はダメでしょ!」
「できるなら私もルーカス様の部屋が良いですわね」
エレノアさん、リネットが否定し、ティーレが違う意見…
「まあ、部屋は別だよ」
もちろん僕の部屋だと色々不都合がある。
いやあ、ありまくり…
まあ、別の部屋なら良いということで、レアとも一緒に暮らすことになった。
レアの魔道具は僕が魔力を補給しないといけないので近くにいた方が良い。
もし、僕がいなくて魔力が切れた場合、フィオナさん、ティーレあたりに補給を頼んでおこう。
さて、食事である。
レアが食事をできるということは、前マスターの資料から判明している。
しかし正しく機能するかは確認が必要。
そこでまずは軽い食べ物、つまりお粥だ!
こういう場合、以前はパンのミルク粥を作っていたが、元日本人としてはお米のお粥の方を推したい。
作り方は確か…
水を多めにすればいいのか。
水だけで炊くと、こちらの人たちには少し物足りないだろう。
昆布出汁で炊いた。
醤油で少し味をつける。
最後、卵を落とし、ふんわりと火を通す。
味見をしてみる。
優しい味だ。
塩味も少なめ、卵とお米の甘みがふんわりと口に広がる。
健康な人にはちょっと物足りないかもしれない。
まあまあだね。
「どうレア?」
レアがスプーンでゆっくりと口へとお粥を運ぶ。
少しの間口を動かし、飲み込む…
「はい…これが食べるということなんですね…」
その瞳から涙が落ちる。
「え、美味しくなかった?」
「…美味しいです…美味しいです…食べるということを知識としては知っていましたが…分かりません…これは…何という感情なのでしょう…」
「ん、良いよ。美味しいならいい。食べて。でも、お腹いっぱいはダメだよ。少しずつ食べることに慣れていこう。この世界には、もっと美味しいものがあるんだ。いっぱい、いっぱい食べていこう」
「…はい」
レアはお粥を口に運ぶ。
ゆっくりと、丁寧に。
「…まったく…ルーカスは食べることばっかだな。ルーカスらしいちゃ、らしいが。おい、レア。ルーカスが一般的な人間の平均だと思うなよ! こいつが食うことに意地汚いだけだからな!」
「いや、ネル。食べること、イコール、生きることだよ。僕が正しい!」
「アホか! みんなルーカスみたいだったら、その辺の土も全部食われてるわ!」
あ…
そういえば、前世、土を食べる文化というものもあったか…
…フレンチでも土を料理するところがなかったっけ?
うーん…
僕の畑の土を食べてみる?
味によって土の良し悪しがわかったり…
ハーマリーに聞いてみようか…
「おい、ルーカス。まさか土を食べてみようとか考えてんじゃないだろうな…」
「さすがに、僕でも土は食べないよ」
まあ、この時点ではそう言っておこう。
やるならこっそりとね。
お粥はレア用なので、一般の人用に別の物を作る。
炊き込みご飯にしよう。
炊き込みご飯はやはり出汁が命。
キノコと魚の炊き込みご飯にしよう。
生姜を多めに入れてね。
お味噌汁は…前回は具沢山だったから、逆にシンプルに細切りの大根のみ。
意外にこの大根のみのみそ汁が好きだったりする。
シンプルな大根の味が良い。
豆腐が欲しいと思う。
豆腐があれば油揚げも作れる。
みそ汁と言えば油揚げ。
大根のお味噌汁には豆腐より油揚げが合う。
炊き込みご飯の場合、メインのおかずが難しかったりする…
和食だし、和っぽいものが欲しい。
味が強すぎず、さっぱりしたものが良いか…
兎の肉をニンニクと醤油で焼いて、大根おろしをかける。
それに柑橘を搾る。
これでどうだ!
「ネルちゃんの言う通り、やっぱりルー君は食べることについては変態かな?」
いや、フィオナさん…
ネルも「変態」まで言ってませんよ。
ちょっと前世では、料理番組が好きで、毎日見てたり…
それの簡単に出来そうな料理を休日に作ってみたり…
その感想をノートに記録していたり…
ただ、それだけだ。
一般人の範囲だと思う!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます