第114話 少女と一緒に大福を
翌日。
王都「コトバヤシ」へ向かう…
ちょっと疲れ気味。
旅先ってぐっすり眠れたことがない。
枕やベッドの感覚が家と違う。
たぶん、それで寝れないんだよね。
気持ちも高ぶっているし。
まあ、頑張ろう。
さて、ティーレに乗って、王都まですぐ。
王都には城がある。
山を背にして和風な城が立っている。
天守閣を持つ、正にイメージ通りの城だ。
しかし、天守閣がこの国で必要かはちょっと疑問。
あれって防衛のためとか、権力を見せるために立派に作ったものじゃなかったっけ?
この島で敵対勢力はいないだろうし、なら権力を見せつけるのもあまりね…
観光にはいいけど。
もちろん城には入れないので、眺めるだけ。
僕たちは隠密をかけたティーレに乗っているので、上から眺められる。
ドローン視点だ。
昔だと鳥瞰視点というらしい。
城を上空から見るのはこの国からしたら不敬かもしれない。
「しっかり和風よね…やっぱり転生者とかが建てたのかな? そうすると将軍様はその血筋かな?」
「将軍ってことはないんじゃないですか? それだと天皇陛下が必要じゃないですか。王様じゃないですかね」
「あの城で王様はちょっとイメージがないわね。それにもしかしたらそういうのいるかもしれないじゃない。国王より上の存在ね」
「さすがにそれは…」
いや、その可能性はあるか。
大昔の国って、権力の正統性を得るために、神を利用するのがあったような記憶がある。
神話を作り、その子孫と称するか、神から統治を認められたとするか、そのようなこと。
天皇陛下とは呼ばれていないかもしれないが、そのような存在がいるかもしれない。
神の子孫を国の象徴とする。
日本と同様に権力を持たないかは分からないが。
その象徴を頂点に、国が一つにまとまる。
国を統治しやすいかもしれない。
ま、それでも、通常は国王と呼ばれてそうだけどね。
そして、本当に神のいる世界だからね。
神の子孫ってのもいるかもしれない。
デミゴッドってやつだ。
ギリシャ神話あたりだと神様はすぐ、人間と子供を作りたがるからね。
うーん…人間の女性より、女神さまの方が美人なんじゃない?
何で人間に浮気するかな?
あ、性格に問題あり…
そんな感じがする。
城をしばらく眺める。
あの天守閣に王様がいるのだろうか。
いや、確か天守閣は生活する場所じゃなかったよな。
もっと下の階層かな。
どんな生活をしているんだろうか。
何を考え、どのように国民を統治しているのか。
そしてどんな食事をしているのか。
大奥があったりして…
そんな想像も楽しい。
コトバヤシの街は、さすがにホノメと比べて大きい。
人口も多そうだ。
雰囲気は似ているが、海に面していない分、建物とかは上品というか綺麗かもしれない。
人間は変わらないかも。
チャキチャキというのだろうか、元気が良い。
子供も元気に走り回っているから、景気も悪くないのだろう。
人通りの多い道を歩く。
買い食いをしながら。
ちょっと寿司を食べたり、団子を食べたり…
寿司が立ち食いってのが江戸時代っぽい。
なんか江戸村に来た感じ。
しかし、こっち来て食べてばっかだな…
剣の稽古もしていないし、太らないか?
帰ったらちょと真面目に動こう。
…ふと、気になる少女がいた。
黒髪おかっぱの10歳にならないくらいの少女だ。
彼女は一人だけ。
親も友達も一緒にいない。
小走りに路地に入ってく。
…それを追って影のような男たち三人。
すこし存在が不気味だ。
少女はその三人から逃げていたのだろう。
他の人たちは気づかなかったのだろうか。
彼女を助けようとしない。
うーん。
見ちゃったら助けないといけないよなあ。
何かあったら気分悪いし。
「フィオナさん、ティーレ…て、いない」
いつの間にかはぐれていたらしい…
…ま、二人なら大丈夫か。
強いからね。
少女を追って路地に入る。
少し入ったところ、少女が三人に囲まれていた。
男達は…うん、よく物語いる影人間だね。
初めて見たけど。
人間の服を着ているが、中身の人型は影のように黒い。
生命感もなく、魔力でできていると思われる。
きっと誰かの能力だ。
少女は…
無表情に影男たちを見ている。
危機感とか恐怖は感じられない。
こちらもちょっと不気味…
普通の少女なら泣かないかな…
さて、影男なら、倒すことに躊躇はない。
こういう敵は物理攻撃、属性魔法の効きが悪いことが多い。
影に対抗するなら光魔法だけど…
『…大丈夫…だとは思うわよ』
めずらしくアルベルタがはっきりしない…
他の属性だと効果が薄そうなのは確かではある。
光属性の浄化系の魔法を発動する。
効果はてきめん。
影人間が崩れ、衣服の身が残る。
うーん、誰の能力かは気になる。
索敵したが周りにはそれらしき気配はなかった。
残念。
さてと…
少女と僕が残った。
ちょっと体をかがめて、視線をあわせる。
「大丈夫だった?」
「うん! ありがとう、お兄ちゃん!」
少女はにっこりと可愛らしく笑う。
あの無表情はどこかに行っている。
意外に元気そう…
「どうしてこんなところに入ってきたの?」
「あのね、さっきの黒いのに追いかけられちゃって」
「お母さんは?」
「うん。おかあちゃんとは、はぐれちゃった」
「家はわかる?」
「大丈夫だよ。サヨはんちはこのちかくだよ。帰れるよ」
サヨちゃんていうんだ。
「紗代」もしくは「小夜」かな?
「じゃあ、送って行くよ」
「うー、まだ遊びたい。ねえ、ねえ。サヨはサヨって言うんだよ。お兄ちゃんは?」
名前はさっき聞いたよ。
自分のこと、名前で言っちゃってたからね。
「ルーカス。ルーカス・ブラウンだよ」
「ルーカス?…変な名前!」
まあ、確かにこっちの名前じゃないと思う。
しかし、この辺の街とか土地とかの名前だって、ずいぶん聞き馴染みのない音だと思うけど。
ここ「コトバヤシ」は日本語っぽいだけど、「ホノメ」、「オトド」ってどんな字なのかな?
少女は僕の手を握る。
そして僕を引っ張る。
楽しそうだ。
「じゃあ、お兄ちゃん。いっしょに行こう!」
なんだか気に入られてしまった…
なんだかまた流されている気がする…
でも、サヨちゃんの年齢ならハーレム要員ではないはず。
ま、たまには少女と遊ぶのも良いか。
前世だと確実に不審者扱いされる案件だよね…
「こっち、こっち! ここの大福が美味しいんだ!」
サヨちゃんのお財布になった感じ…
確かに、作りたての大福は餅がふんわりと柔らかく、しっかりと伸び、そして粒あんがほどよい甘みで上品。
なかなか良いものでした。
「サヨちゃん、口に粉がついてるよ」
「? んー…」
口をとがらせて、こちらに向ける。
拭けと?…
…拭いてあげる。
「ありがと!」
可愛らしい子ではあるんだけどね…
傍からみたら犯罪臭がするかも。
僕はまだ若いから大丈夫?
いやあ、無理っぽいな。
その後も、いろいろ連れまわされて、いろいろ見て、ちょこちょこ食べて…
ちょっと疲れた。
子供は元気だよね…
空が赤み始めたころ。
街の人も帰宅したのだろ、人込みは無くなり、まばらになる。
僕たちはベンチに座り、それを見ている。
フィオナさん、ティーレとは合流できていない。
「サヨちゃん、そろそろお母さん心配してない?」
「んー、心配してるかも…」
「帰った方が良いんじゃないのかな?」
首を傾げ、すこし僕を見つめる。
「お兄ちゃんは、この後どうするの?」
「えっと…オトドの洞窟に行こうかなって」
「オトド? サヨ知ってるよ! 『向こう』に繋がってるんだって」
「『向こう』って?」
「んー、向こうは向こう。サヨわかんない…」
サヨちゃんはベンチをピョコと下りる。
「じゃあ、行くね!」
やっと帰る気になったらしい…
「ね、ルーカスお兄ちゃん。また、サヨが困ってたら助けてくれる?」
「うん。助けるよ、もちろん」
「ありがと。優しいお兄ちゃん!」
ニッコリと笑って、それから駆けだす。
振り返らずに路地に消えていった…
違和感の正体。
たぶん見た目の年齢と実際生きてきた年月が違うのではないかと疑う。
大人が子供を演じているような違和感。
…前世でも、子役はあんな感じだったか、
しかし…転生の可能性。
更に一部人間以外が混じっているような気配も感じた…
気のせいか?
もしかしたら妖怪とか…
まあ、言葉が交わせて、悪意がないのなら問題ない。
…たまに悪意が無くても、人間が致命的になる習性をもつ生物がいるけどね。
さて、僕は何に巻き込まれたのか、巻き込まれていないのか…
考えたってしょうがない。
将来のルーカスに任せよう。
『やっぱり転生者は色々呼び寄せるわね』
…アルベルタさんが呟く。
そうですか…サヨちゃんは普通の人間じゃなさそうです…
頑張れ、未来のルーカス…
そのすぐ後にフィオナさん、ティーレと合流した。
ティーレの念話で合流できた。
もう少し早く念話を使えばよかったのでは?
「私の念話がルーカス様に届かなかったんですわ」
妨害されてたのかな…
「ほんと、ルー君は主人公体質よね。突発の一回だけのイベントならいいけど…」
主人公体質の自覚はないんだけどね…
ハーレム体質ではあるのか…
脇役がハーレムだったら…それはそれでイラっとする。
やはり主人公体質?
妙なイベントが発生したため、オトドは翌日に延期。
たぶん行っておかなきゃいけない気がする。
強制イベント的な?
未来にどのようにかかわってくるのか知らないけれど。
妙な新婚旅行になったもんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます