アリスたん!
アリスたん! 開けてよぉ!! アリスたんのお家に突撃訪問!
「こんにちはぁ〜! アリスたんママ! 今日もアリスたんに会いに来たよ!」
誰も来ない。アリスたんママが出て来ないってことは、アリスたん一人でお留守番しているか、二人とも外出中。
ぼくはもう一度、インターホンに向かって話しかけた。
「アリスたぁん! ほら、見てる〜?? アリスたんの王子様、ことぼくだよぉ? ロイくんだよっ?!」
ぼくが一生懸命手を振っても、反応はなかった。人の気配もしない。恥ずかしくて出て来れないのかな? それとも、アリスたんは本当に外出してる?
確信はなかったけど、これで諦めて帰るようならアリスたんのファン失格。ぼくは試しに、アリスたんの部屋の窓に向かって大声で叫んでみた。
「アリスたぁ〜んっ! もうっ! 開けてよぉ!! 生きてる〜っ?!」
アリスたんのことだから、もしかして昼寝してるとか、何かの作業に集中しすぎてぼくの声が聞こえないだけかもしれない。
そう思ってもみたけど、なんとアリスたんの部屋の窓が少し開いた。でも姿は見せてくれない。かわいい怒鳴り声だけ聞こえた。
『うるさいっ! キモい! 帰れ!!』
「うん、生きてるね」
今度は恥ずかしくなって出てきちゃったんだろうな、って考えるとニヤけずにはいられない。
(ほ〜んと、アリスたんはかわいいなぁ〜??)
満足したぼくは、アリスたんママから許可をもらって最近作ったばかりの合鍵を使って家に入った。
え? じゃあどうしてわざわざインターホンを押すのかって? だってそっちのほうが楽しいじゃない? アリスたんの罵倒も聞けたことだし。
ぼくはルンルンの気分で大きなお家の中をスキップして、アリスたんの部屋の前までたどり着いた。
(やっとアリスたんに会える!)
楽しみすぎて、軽快なリズムでドアをノックした。
「アリスたん♡ 来〜たよ♡」
『はぁっ?! 嘘っ! マジかよ? なんでいんのっ?!』
思った通り、アリスたんはびっくり仰天しているみたいだ。ぼくはまた嬉しくなって、アリスたんに見られてもいないのにニコニコの笑顔になって言った。
「合鍵作ったんだ♡ アリスたんが寂しくないようにって、アリスたんママが許してくれたんだよ? ぼくって信頼されてるよねぇ?」
自分で言っておいて、「信頼」という言葉にグッときた。そう。アリスたんのことを
『はぁっっ〜〜〜?! 合鍵?! ふざけんなよ! なんでママもそれ許すかなぁっ?! っていうか別に寂しくねェし! あたし一人が好きなの!! ウザい!! 早く帰って!!』
「も〜うっ、アリスたん? お腹空いてるでしょう? 今日はイチゴのタルト買ってきてあげたんだから、一緒に食べようよぉ♡」
『す、空いてない!』
嘘だ。だってさっきキッチンを見たら、アリスたんが手をつけてない昼食らしき料理が残ってたもん。やっぱり、今日も何かに没頭してご飯食べ損ねちゃったんだ。
「へぇ? そう。じゃあぼくが全部食べちゃおうかなぁ〜?」
『だめっ!! そこに置いといて! 後で食べてあげるからっ』
はいはい。アリスたんはイチゴもタルトも甘いお菓子も大好きだもんね? ぼくもそれと同じかそれ以上にアリスたんのこと大好きだよ? でもだからって、ぼくがアリスたんの言うことをすんなり聞いてあげるとは限らないけどね?
「ダメだよぉ。ぼくと一緒に食べなきゃ意味ないでしょう?」
『あんたと一緒にタルト食ってなんの意味があんの……?』
呆れたアリスたんのゴミを見るような目が目に浮かんだ。ぼくはそれを想像すると、ニヤニヤ笑いが止まらなかった。
「だってほらっ! イチゴみたいなアリスたんと一緒にイチゴタルト食べられるって最高でしょうっ?! アリスたんが
「キモぉっ!」
アリスたんの絶叫を聞いて、ぼくはさらに楽しくなった。
「だからさぁ、ドア開けてよぉ〜! 開けちゃうよ?? いいのっ?」
『いいよ、開けられるもんなら開けてみて』
「え?」、と不思議には思ったけど、とりあえずドアノブに手をかけてみた。
「アリスたんっ! 何これぇ?!」
ドアには鍵がかかっていた。ガタガタいうだけでびくともしない。だけど、そもそも鍵なんてついてなかったよね??
『鍵つけたの。あんたが家の中をうろうろするもんだから、防犯用にね!』
アリスたんは、「勝ち確定」みたいな声でそう言った。
「うろうろって、ぼくアリスたんママに挨拶してからお家に入ってるけど?!」
『現に今日、合鍵使って不法侵入してるでしょう?!』
「そっ、それは今日だけ! 合鍵使ったのは今日が初めてなの!」
「信じて!」って顔をしてみたけど、そういえばドア越しだから、それが悲しい。
『ふんっ! タルト置いてすぐ帰りなさい?』
「そんなこと言うんなら、タルトと一緒に帰っちゃうからねっ!?」
『は? ふざけんな』
「ドアを開けてぼくと一緒にタルト食べるか、ドアは閉めたままでぼくとタルトが帰っちゃうの、どっちがいいの?!」
アリスたんはしばらく黙っていた。「タルト」と「ぼくが帰る」のどっちを取るのかな??
『タルト!!』
「うん、うん♡」
『ドアは開けてやるけど、あんたよりタルトの方が大事だってことだからね?! タルト食ったらそれで帰る! すぐに帰る! それじゃなきゃ開けないけど?!』
「うんっ♡」
アリスたんに見られていないのをいいことに、ぼくは得意のダンスで狂喜乱舞した。もちろん、手に持っていたタルトは床に置いたまま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます