第2話 旅立ちの決意

朝が訪れると、アルス・フェルノスは村の静けさの中で目を覚ました。薄明かりの中、彼は夢の中での神秘的な使者の言葉を再び思い起こし、自分の運命に向き合っていた。彼の心は決意に満ちていたが、現実の課題も彼を待っていた。


彼は急いで身支度を整え、小さな荷物を準備した。簡素な衣服、食料、そして魔法の痕跡がない普通の道具だけを持ち、彼は村の外れにある古びた納屋に向かった。そこには、家族から受け継いだ古い地図と、数本の弓矢が保管されていた。


納屋の中には、魔物の襲撃で壊れかけた道具や、使い古された農具が無造作に置かれていた。アルスはその中から、使えるものを選び、弓矢と地図を持ち出した。彼が選んだ地図には、古代のエルフの森やドラゴンの山脈、神聖な遺跡が描かれていた。地図の一部はぼろぼろに擦り切れており、古い文字がかすかに読み取れるだけだった。


アルスは村の広場に向かい、そこで村の長老であるマルク・グレイに会った。マルクは長年にわたり村を見守り、村人たちの知恵と経験を持っていた。アルスが出発の意志を伝えると、マルクは眉をひそめた。


「アルス、お前はまだ若い。危険が多いこの世界で、どうやって生き延びるつもりだ?」マルクは心配そうな表情で尋ねた。


「マルク長老、僕には夢の中でのメッセージがあります。僕がこの世界を救わなければならないと。そのために出発します。」アルスは強い意志を込めて答えた。


長老はしばらく黙って考えた後、深いため息を漏らした。「君が本当にその決意を固めたなら、止めることはできない。ただし、これだけは覚えておけ。世界は君が思っているよりもずっと厳しい。気をつけるんだ。」


マルクはアルスに小さな袋を手渡した。それは古い時代から伝わる護符で、魔物から身を守る力があると言われていた。アルスはそれを受け取り、感謝の気持ちを込めて頭を下げた。


「ありがとう、長老。必ず帰ってきます。」アルスは決意を新たにし、村を出発する準備を整えた。


村の端に立つと、彼は振り返って、荒れた村の風景を見つめた。家々が崩れ、自然に呑み込まれている光景が目に焼き付いていた。この村のため、そしてこの世界のために、彼は全力で努力することを誓った。


アルスはエルフの森への道を歩き始めた。彼の足元には、岩や草が散らばり、風が冷たく吹きつけていた。森の奥深くには、古代の魔法の秘密が眠っていると信じて、彼は一歩一歩踏みしめていった。道のりは険しく、孤独な旅が待っているが、アルスの心は希望と決意で満ちていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る