愛逢月③ in 2024

かろうじて崩れ落ちてないだけとっくに壊れてる 罅なぞる爪


用もなく母とそばえて日が暮れた 愛とは何かわかった気がした


イグアナは潜るきらめく海の底 とうに限界は忘れていた


無理よ、んな頼られても。俺じゃどうにもならんって。お前が動けや。


蝉殻や 孤独にずっと耐えてきた ここに居るんだ 気づいてくれよ


森の中息を潜めた少女らは世の中を知り穢れはじめる


カラフルなライターが透き通るたび どす黒くなる私の内臓なかみ


鉄は熱いうちに打つべきと悟れるのは既になまされた証


瓶詰の告白さえも虚飾して救われる日を待つ罪人よ


白き朝 の子が殺人鬼になった 鐘の音響くウェストミンスター


プロペラ機 野心抱いて飛んで行け 藻屑と消える夢と知っても


遠雷のようなチャルメラ伝う夜は発泡スチロールのラーメン


着せられた厭世観を脱ぎ捨てて終夜よすがら遊楽と洒落こもや


客思こそ至高と語る価値観め 酔生夢死でなんか悪いか


幾重にも私は君を讒毀ざんぎして打ち込むラリーが増速する


おもり付き調理器具のパティスリー曰く「ササミはもはやスイーツ」

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