エレナの恩返し 前編

「レウル~話があるんだけどいい~」


「あぁ、いいよ」


  朝方、俺は降り積もった雪によって真っ白に染まった庭を眺めていたが、後ろからエレナに話し掛けられたため振り向いて話に耳を傾けた。

 そして、エレナの話を聴いていく内に思わず「えっ」と声をあげて固まった、何故なら――


「お礼をしたい?」


「うん! 私は普段お世話になってばかりだから、雪が降って大変そうなクラインハルト家の人達に何かお礼をしたいんだ!!

 ただ、どうしてもいい考えが浮かばなくて――だから、何かいいアイディアがないか、物知りなレウルに訊きにきたんだ!」


 話の内容が雪で困って家の人達に何かお礼をしたいというものだったからだ。

 俺は何とかこの優しいの”お願い”を叶えようと考え込み、庭の雪が目に入り前世のある”イベント”を思い出してエレナに視線を向けた。


「エレナ! いい考えが浮かんだぞ!」


「本当、レウル!」


 エレナは俺がアイディアを思いついたと言うと、何のかげりもない眩しい笑顔で喜んだ。

 俺はこの笑顔はずっと守っていきたいと思いながらエレナに思いついたことを伝えた。


「パーティーとプレゼント?」


「そうだよ、まずはアイシャに頼んで飲み物と軽食とかを準備してもらう。

 その間に俺とエレナがコッソリとファスタリトへ行ってプレゼントを買ってくる、後はパーティーの終わってみんなが寝た後にプレゼントを配って回るんだ。

 どうかな、こんな感じでいいかい?」


 エレナは俺のアイディアを聴いて満足そうに頷くと「うん!」と返事をした。

 俺は早くアイシャのところに行こうと腕を引っ張りながら「やっぱり、レウルに相談してよかった!」と言ってくるエレナに苦笑を返すことしかできなかった。


「ふふふ、そうだね早く行こうか」

(エレナ! ごめんなさい!

 本当は”アイディアが浮かんだ”なんて嘘です。

 本当は前世のクリスマスをパクりました! ……でも、エレナも喜んでいるし、まぁいいか)


 俺は心の中でエレナの笑顔と罪悪感を天秤にかけた結果”エレナの笑顔”が勝利したため、前世の神様の誕生祭だとかいうことは全部忘れてアイシャのところへ向かうのだった。









「うわぁ~、レウルすごいよ! 辺り一面雪で真っ白けだよ! また、雪だるま作りたいな~」


「ふふふ、エレナ。

 雪景色を空中から眺めるのが初めてで興奮しているのは分かりけど、あんまり暴れると落っこちるよ」


 数十分後、俺とエレナは上手くアイシャをだま……ゲフンゲフン、アイシャにパーティーの準備をしてもらっている間にコッソリと家を出ることに成功していた。

 だが、初めての空中から眺める雪景色に興奮しているエレナに、俺はこのままだと危ないと判断し”シエル”に少し体を揺らすように言った。


「きゃぁッ! し、シエル――ごめんなさい! もう暴れないから体を揺らさないで~」


「ヒヒーンッ」


 エレナが少しだけ怯えながら俺達の乗っているペガサス――シエルに謝った。

 後、シエルについての説明は一章に登場するので、ネタバレ防止のためナシで。


 ――おぉ、メタイメタ「黙ってろ! 駄作者!!」グハッ!


「うん? レウル、なんか変な声がしなかった??」


「そうか? 俺には聞こえなかったけれど??」


「ヒヒーン?」


 そんな会話をしながら暫くして、漸く目的地だったファスタリトへと到着した。


 ファスタリトは何時もよりも行き交う人が少なく、代わりに小さな子供達が雪合戦や雪で滑り台を作って遊んでいた。

 俺はシエルを近くの丘の上に降ろした後、シエルにここの辺にいれば好きに遊んでいてもいいと言い残し、プレゼントを買うためにエレナと一緒にファスタリトへ向けて歩き出した。







「レウル、これはどうかな?」


「毛糸の手袋か……それもいいかもしれないど、防寒着は家にあるからな~

 それに、プレゼントを渡すんだったら普段渡せないものがいいと思うんだけど――何を渡せばいいんだろう??」


 数時間後、ファスタリトに到着した俺達はプレゼントに何を渡すかについて悩んでいた。

 そして、悩みながら辺りに視線を彷徨わせていると、


「あっ! エレナあれならどうかな!」


 偶然”魔道具”を売っている店を見つけて声をあげた。

 エレナもあの店に入るのを了承したため、二人でその店に向けて歩き出した。

 後、悪いけれど”魔道具”も一章に登場するため、説明はナシで。


 ――おぉ、メタイメタ「しつこいんだよ!」スカッ


 ――ハハハッ、何時までも同じ手が通じ「フンっ!」なっ! 隙を生じぬ二段構――グヘェッ!


「うんっ? レウル、また変な声がしなかった?」


「そうかな? 気のせいだろ?」


 再びそんな会話をした後、店に入った俺たちは再度プレゼントを探した。

 そして、俺は探していた”魔道具”を漸く見つけ、一応エレナに見せて確認をしてみると「それにしよう!」と即決したため家の人間全員分を買って店を出た。


 その後、元々クリスマスからきたアイディアだったため、ついでにエレナ用の赤い帽子と赤いスカートを買って”シエル”のいる丘に向けて二人で歩いた。

 だが、歩いている途中でエレナが何かを持っているのに気が付いて話し掛けた。


「うんっ? エレナ、その他のプレゼントとは別に持っている袋はなんだい?」


「えっ! えぇ~と、これはその~、美味しそうなお菓子があったから買ってきちゃったんだよ」


 すると、エレナが驚くほどバレバレな嘘をついてきたため、思わず袋を凝視した。

 そのまま暫くすると焦って視線を散乱させていたエレナが何かを見つけたかのように「あっ!」と呟いた。


「……ッ!」


 気になったためその視線の先を辿ったが、エレナが見つめているものを見つけて思わず息を飲んだ。

 何故なら、視線の先には今最も”エレナに見られたくないもの”があったからだ。


「そ、そう言えばレウルも何を持っているの。

 何か、袋のようだけど」


 そんな俺の気も知らず、エレナはその袋について質問してきた。

 俺は質問に「修行に使うもの」とだけ答えたが、エレナも先程までの俺と同じように袋を凝視した。


「さて! シエルも待っていることだし急ぐぞ!!」


「えっ! きゃぁっ!!」


 俺は何とか袋について誤魔化すためにそう言った後、エレナをお姫様抱っこの体制で抱えると丘に向けて走り出した。

 その後、俺とエレナは行きと同じく”シエル”に乗るとファスタリトの街を後にした。

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 もう本編が更新されることがないので一応ここに書いておきますけど、シエルはレウルとエレナが王都からの帰りに翼を折られたペガサスに出会い。治療をしたらなつかれて、それから一緒に暮らしています。

 魔道具はこの世界での家電のようなものです、魔力で動きます。

 後この二人はお互いに相手へプレゼントを買って渡そうとしていました。エレナがマフラーで、レウルがセーターとマフラーを編むための毛糸だったと思います。

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