第8話 限界の先。
サッサー・ウッホを心眼術で追っていたシヤは、移動を開始したサッサーを見て「逃げ出す気か!?行かせない!行くぞシーシー!」と声を荒げた。
「ジェード君達が来るのを待ちたいけど、早く行かないと、術人間にされてない子達は証拠隠滅で殺されかねないもんね」
「そういう事だ。シローとヨンシーは2人で背負おう。シーナとヨンゴ、索敵を任せる。集中だ」
シーナとヨンゴは「任せて!」、「マスターとのかくれんぼより余裕だよ!」と言って前に出る。年々悪化するミチトの訓練は、遂には真っ暗闇の山の中を目隠しをして検知術と心眼術で隠れた鬼を見つけるかくれんぼになっていて、毎年参加しているアルマとマアルに至ってはサルバンの訓練にもついていける猛者になっていた。
メリッサは兵を出してシヤ達の援護をすると言っていたが、「人質に近い状況で敵対する術人間がいる。乱戦は被害が甚大になる。兵を出すなら2時間遅れで行動して欲しい。そして戦闘音がする限りは、安全圏で待機してもらいたい」と言って止める。
「ですが、このジェネシス領でそんな…」
「いいんです。とりあえず依頼も何も飛ばして戦闘になる事を不問にしてください」
「それは…、お約束します。ですが奥様やお子様達は…、私の邸宅で保護しますよ?」
「平気です。闘神の訓練で、この子達でも第一騎士団の団員くらいなら無傷で倒せます」
メリッサはドヤ顔のヨンゴとヨンシーを見て、「え?」と聞き返すとヨンシーが「私も倒せるよ!」と笑っていた。
シヤとシーシーからしたら戦闘は問題ではない。
問題があるとすれば、土地勘のなさと術人間の総数。その術人間達が暴走をしないかだった。
シーシーはヤァホイの事もあり余裕が無かった。
心眼術をジェネシス邸宅の内通者のみに絞ってしまっていた。
シヤがメリッサの元を訪れた時、既に内通者はサッサーの元を目指していて、迎撃の準備をしていた。
動いていたサッサーは陽動で、内通者が代理マスターになる事で、術人間の部隊を率いて背後から強襲をしてきた。
「ちっ!背後から!?別の敵もいたのか?」
「シヤ、シローを降ろして!私がシローとヨンシーを起こす。シーナとヨンゴはお父さんの指示で術人間達を無力化して!」
家族というのはこういう時にありがたい。
誰も異論を唱えずに行動を開始する。
シヤはさっさと代理マスターを目指し、肉の壁になる術人間達をシーナとヨンゴが無力化していく。
相手は剣を持っていてもシーナ達には関係なかった。
本当に年々悪化するミチトの「一人で生きていいけるための訓練」にもついて行けるシーナ達は、無手で術人間達を制圧していて、「お父さん!術人間は13人だよね!」、「なら後6人!」と声をかける。
シヤは「頼もしい!行くぞ!シーナ!ヨンゴ!」と言って加速すると、代理マスターを仕留めにかかる。
だが前もって備えていた代理マスターだけあって、この状況に慌てる事なく、術人間達に指示を出す。
「術人間たち!あの女と子供に向かってファイヤーボールを雨のように放て!」
代理マスターの狙いはシローとヨンシーがまだ寝ぼけているシーシーだった。
シーシーなら防げると思うが、シローとヨンシーがいる以上、シヤに油断はない。
「やらせるわけがない!うぉぉぉぉぉっ!!心眼術!ファイヤーボールを赤!総数21!ウォーターボール!!」
シヤは瞬間的に21発のウォーターボールでファイヤーボールを迎撃する。
それは代理マスターからしても想定外の事で目を丸くした。
「悪魔の2番弟子…、十分悪魔じゃないか…」
シヤからすれば余裕ではあるが問題がある。
急成長のステップアップ。
実際、シヤはかつてミチトを本気で倒すために、ステップアップをしてでも倒そうとして、無理をしようとした時、子供のシーナとヨンゴの身体に、仲間だったシーナとヨンゴが憑依した。
それは一時的で済んだが、その時の事を子供のシーナとヨンゴは覚えていなかった。
やりすぎて子供の2人が消えてしまったら、そうシーシーと話したシヤはステップアップしない為にも、退団を予定よりも早めてトウテに帰還し、その日以来無理はしないようにしていた。
「術人間達よ!もう一度だ!放て!」
もう一度術人間達がファイヤーボールを放とうとするが、今のやり取りの間にシーナとヨンゴが2人倒して居たので、飛んでくるファイヤーボールも先ほどよりも少なくて済むと油断した。
だが、そこにはサッサー・ウッホが自分が引き連れた10人の術人間と挟撃の為に戻ってきていて時間差でファイヤーボールを追加で放っていた。
アイスウォールで防ぐ、ウォーターボールで撃ち落とす。
一瞬の間にシヤは色々思案したが、同時にステップアップが始まってしまう事を気にしてしまっていた。
その瞬間、シーシーの前に飛び出したシローが、「シヤ!こっちは僕とヨンシーで防ぐから!シヤはマスターを止めるんだ!」と声を上げた。
子供の言葉に思えず、「何!?シロー!?」と返すシヤに、今度はヨンシーが「いいからママと連携組んで!術人間はシーナとヨンゴにも手伝わせるから!前に出る!」と指示を出した。
シーシーは「ヨンシー?あなたもしかして?」と言うと、ヨンシーは「黒い肌の私は綺麗だけど、白い肌も可愛いよね。産んでくれてありがとね。術人間を制圧して、攫われた子を助けるんでしょ!やろう!!」と言った。
シヤはステップアップが今回はシローとヨンシーに影響してしまったと一瞬後悔したが、シローとヨンシーはウォーターボールで最初のファイヤーボールを防ぐ間に、「シヤ!追加分を私とヨンゴと3人で受け止めるよ!」、「ほら!1番なんだからボサッとするな!シーシーも動け!代理マスターは任せたぞ!」と言ったシーナとヨンゴが、「マスターに教わってたから撃てるよ!アイスウォール!」「俺はアースウォール!と言ってファイヤーボールを受け止めた。
「シーナ…、ヨンゴ…」
「ふふ。また会えたねシヤ。しかもジェネシスで会えるなんてね」
「本当、面白いよな。しかもシローまでいるんだからよ」
シヤは消えた子供の方の事を気にして言葉に困っていると、「お父さん!早く動いてよ!私も!索敵を代わって!今は私が出るから力を貯めて!」とシーナが言い、ヨンゴも「先に俺から出て、切れるタイミングでシーナと代わるよ!シロー!ヨンシーと使い分けるんだよ!」と言い、シヤは目を丸くしてしまうと、シローが「シヤの力が僕たちが出てこれる力になるから!」と言い、ヨンシーが「沢山無理してよ!私達、戦闘状況だと長時間でてられないから!途中途中で子供達と切り替わるから!」と言うと、子供のシローとヨンシーが「お父さん、僕たちは消えてないから平気!」、「夢の中で挨拶したから仲良く戦うよ!」と言った。
シヤは真模式として一瞬の間に理解をする。
「俺の力が限界を超えると、シーナ達の力になって手を貸してくれる。ならば怖いものはない!沢山の無理…、異論はない!行くぞシーシー!合わせてくれ!」
「了解シヤ!シーナ!ヨンシーと連携取れるよね!?ヨンゴ!シローをお願い!」
シヤは一気に前に出て。術人間達に「安心しろ、すぐに助けてやる!」と言いながら剣を弾き飛ばすと、「冬場で寒いが我慢してくれ!氷結結界!」と言って足止めをする。
そこにシーシーが「シーナ!ヨンシーと吸収術!術切れにしてあげて!」と指示を出し、ヨンゴ!シローとこっちで6人の子を制圧して!私が代理マスターを倒す!」と言って前に出た。
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