第17話 葵さんと殿下との関係
その後、よくわからないまま俺は別室にローレン殿下と一緒に戻った。
別室でローレン殿下と今後について話を聞いた。
この後すぐにクルーザーで日本に向かうことになるらしい。
日本に向かうのは、俺の他クルーザーのクルーだけで、殿下と王兄殿下はここに残ると説明された。
まあ当たり前の話だ。
ここはお二人の母国で、セーシェルやドバイにいる方がおかしいとは言わないが、彼らのホームではないだろう。
そこは了承したのだが、今回俺と一緒に日本に行くために一度ドバイに寄る必要があるので、ドバイまではローレン殿下もご一緒することになる。
先ほど言われた女性の下賜についてのようだ。
自分の娘をドバイで引き渡すためであると言っていた。
しかし、彼の娘っていったいいくつだよ。
俺はロリコンじゃないからいらないとも言えないし、正直困った。
そうこうしているうちに王兄殿下が訪ねてきた。
王兄殿下の後ろには、少しきれいに着飾った葵さんが控えている。
葵さんって王兄殿下の娘って聞いていたけど、ひょっとして俺に下賜される娘って彼女なのか。
思わず俺の息子が大暴れしそうなところをかろうじて俺の理性が抑えるのに成功した。
いきなり彼女の前で息子をおったてるわけにもいかない。
何せこの場には葵さんだけでなくローレン殿下やドードンさんも殿下の通訳として同席している。
「陛下に言われたわけではないが、俺の娘を連れてきた。
君に娘を下賜することにした。
是非大切にしてほしい」
葵さんだよ葵さん。
下賜される娘って、葵さんのことだったんだ。
もともと断れるような話では無いが、葵さんを貰えるならば俺に文句など何もない。
「ありがたく頂戴いたします」
俺がドードンさんの通訳で王兄殿下のお言葉に日本語で答え、それを葵さんが王兄殿下に通訳して伝えている。
そのあと、葵さんが俺の横まで来て耳元でささやいた。
「末永くよろしくお願いします」
だって。
もうこれ以上にない幸福感に包まれた俺は、その後のことは覚えていない。
なにやら少しローレン殿下や王兄殿下と打ち合わせをしていたようだが、多分この後日本までご一緒するドードンさんが覚えているだろう。
一応の話し合いの席は葵さんの下賜で終わったようだ。
俺はせかされるように王宮から出されて、クルーザーを泊めているヨットハーバーに車で戻された。
船には来た時と同様にスタッフさんはすでに乗り込んでいるから、俺たちが乗り込めばすぐにでも出港ができる。
俺は操舵室に入り、出港に指示を出しただけだ。
船は無事にブルガンの港を出て、すぐにドバイに向かった。
後は普通の航海になるので操舵室を任せて俺はもう一度話をするために船室に戻った。
メインキャビンには俺が今必要と思われる全員がそろっていた。
ローレン殿下にドードンさん、それに葵さんだ。
「本郷様の言いたいことはわかっております」
葵さんがそう日本語で話かけてきた後に、ローレン殿下が思いつめた表情で話しかけてきた。
「本郷は、本当に俺に忠誠を誓うか」
ドードンさんの通訳でそういわれたが、俺は通訳が間違えたのかとすら思った。
何を今更なことを。
そう困っていると葵さんから助け舟が出た。
「これからお話しすることは国の未来がかかっております。
絶対に秘密にしていただかないと困りますが、それ以上に本郷様には協力をお願いしたいのです」
「私は、すでに会社を辞め殿下の下に来ておりますし、もうこれ以上職を変えるつもりもありませんし、正直これ以上の不義理はしたくもありません」
葵さんが殿下に通訳しているが、まだ難しそうな顔を崩していない。
「正直に、気持ちを伝えますと殿下に忠誠を誓うといったのは本当の気持ちです。
日本人のメンタルでしょうか、職場には責任が伴いますが、一旦その職に就いたのなら精いっぱいの責任を果たす覚悟はあります。
しかし、それ以上に私は葵さんを裏切りたくはありません。
陛下の前で女好きと暴露されておりますから隠す意味もありませんので、正直申しますと、せっかく縁ができたので大切にしていきたいと思っております」
ほかの女性をたくさん堪能しているのに今更どんな口で葵さんを裏切りたくないというのかと思ったが、正直な気持ちだ。
そう、俺の忠誠、違うか、気持ちは殿下にもあるがそれ以上に葵さんにある。
その俺の言葉を葵さんは顔を赤くして黙り込んでしまったので、ドードンさんが殿下に通訳していた。
その通訳を聞いた殿下は急に笑い出して、話を始めた。
まず、殿下と葵さんの関係から教えてもらった。
かなり突っ込んだ話なので、ドードンさんいる席で話しても大丈夫かと思ったのだが、これは国の上層部では有名な話なので、問題ないそうだ。
で、その関係は、葵さんは王兄殿下の娘であることには変わりがない。
殿下との関係は、その葵さんが殿下の初めてのお相手だというのだ。
そのあたり俺は詳しくはないが、ドードンさんの説明では、王族ではめずらしくもないらしい。
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