第13話柱《はしら》←愛を知る物語

1本いっぽんはしらがあった。それは役所やくしょなかにあり、ほかはしらとは一風いっぷうちがっていた。そのはしらだけは「芸術げいじゅつはしら」とばれ、地域ちいき住民じゅうみんいたり装飾そうしょくしていものだった。使用しようするにはルールがある。あたらしくデザインされたはしらは、最低さいていでも3日間みっかかん見物けんぶつできるようにそのままにすること。おおやけ不適切ふてきせつなものはかないこと。きたい場合ばあいはその内容ないよう日時にちじ予約よやくすること。


いままでこれらがまもられて芸術げいじゅつはしら運用うんようされてきた。趣味しゅみはな紅葉もみじそらものまつりや花見はなみ季節きせつ見合みあったもの学校がっこう最優秀さいゆうしゅうき、それをはしらってめてもらうものみなそれぞれたのしんではしら活用かつようしていた。


あるとき1人ひとりどもがはしら家族かぞくいた。そのどもには家族かぞくなかった。おや超高齢ちょうこうれい出産しゅっさんだったため、寿命じゅみょうくなったのだ。どもはもし両親りょうしんきていてくれたらこんなふう家族かぞくごしていたんだろうなぁと、いろんな場面ばめんはしらいた。事情じじょうっているものたちはなみだした。


そのはしら4日間よっかかんち、あたらしいデザインになった。

それまでの3日間みっかかんどもは毎日まいにち自分じぶんいたていた。自分じぶんいたあとはどんなかれているのかになったどもは4日目よっかめ芸術げいじゅつはしらまえおとずれた。あたらしいデザインは宇宙うちゅうだった。宇宙うちゅうあかぼうがくるまれている。不思議ふしぎ魅力みりょくのあるだった。どもはなんとなくあかぼうになり、ばしてれてみた。


その瞬間しゅんかんどもはなかまれた。たくさんの目撃者もくげきしゃなかでの出来事できごとだったため、その大騒おおさわぎになった。


どもは静寂せいじゃくなかました。薄暗うすぐら空間くうかん足元あしもとると、そこには螺旋階段らせんかいだんがあった。すぐうえ天井てんじょうだったためどもは階段かいだんくだっていくことにした。20分にじゅっぷんほどりたらひろ部屋へやいた。とてもちいさな映画館えいがかんのようだった。イスにすわってみると、映像えいぞうながした。


おじいさんとおばあさんがて、おばあさんのおなかなかにはあかちゃんが宿やどっているようだった。


おばあさん「このえるのがたのしみで仕方しかたないわ。」

おじいさん「ああ、そうだね。でも、おそらくこの中学生ちゅうがくせいになるころには、わたしたちはくなっているかもしれない。もしかしたらもっとはやくに…。それをかんがえるともうわけなさでいっぱいになるよ。」

「そうね。たよれる身内みうちもいないから、わたしたちがくなったあとは施設しせつはいるしかなくなるわ。でも、ずっともとめていたわたしたちのども。ってみたいのよ。」

「そうだね。それにこのとしさずかれるのは奇跡きせきだ。ぜひその奇跡きせきって、できるかぎりの愛情あいじょうそそいでそだてていきたいね。」


場面ばめんわって、おばあさんがくるしみながらあかぼうむ。

「「無事ぶじまれててくれてありがとう。」」と2人ふたりあかぼうこえをかけた。


あかぼうすこおおきくなって幼児ようじになったのをどもはづいた。その幼児ようじ自分じぶんであることに。

結局けっきょくどもが物心ものごころつくまえに両親りょうしんくなってしまったが、この映像えいぞう幼児期ようじき自分じぶんがどれだけあいされてそだてられたのかはよくかった。これが本当ほんとう映像えいぞうなのかはからない。しかし、どもはしんじてみることにした。


このあいされてきた記憶きおくがあれば、これからさき前向まえむきにきていけるがした。映像えいぞうわりをむかえた瞬間しゅんかんまえがとてもあかるくなりどもはをつぶった。

つぎけたら芸術げいじゅつはしらまえにいて、たくさんの大人おとなかこまれていた。体感たいかん時間じかんとしては3時間さんじかんほどだったが、実際じっさい3週間さんしゅうかんっていたという。どもがまれたようにえたので、はしら予約よやくをキャンセルして様子ようすていたそうだ。


あのいた名前なまえ予約よやく一覧いちらんから調しらべてみたが、すでくなっていた画家がか名前なまえだった。


きっとあのから両親りょうしんがおねがいして、画家がかいてもらったんだろうなとどもはおもった。



ひとこと

あいされてきた記憶きおくこころかてとなる。

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