第14話 決勝戦

翌朝、パリの空が澄み渡り、オリンピックスタジアムには期待と興奮が満ち溢れていた。今日はいよいよ決勝戦の日。佐藤翔太、美咲、大和、結衣、それぞれが自分の競技に臨むために準備を進めていた。


スタジアムに着くと、翔太はウォームアップを始めた。トラックの感触を確かめながら、心を落ち着ける。「今日こそ全力を出し切るんだ。」彼は自分に言い聞かせ、スタートラインに立った。


スタートの合図が響き渡り、翔太は全力で走り出した。風が顔に当たり、足音がトラックに響く。彼は過去の怪我や不安を全て振り払い、ただ前を見据えて走り続けた。ゴールラインが近づくにつれ、彼の心臓は早鐘のように打ち、体中に力が漲った。


フィニッシュラインを越えた瞬間、翔太は全力を出し切ったことを確信した。しかし、タイムを確認すると、僅差でメダルを逃してしまった。「もう少しだったのに…」彼は悔しさに拳を握りしめたが、全力を尽くした自分を誇らしく感じた。「次の挑戦に向けて、もっと強くなるんだ。」彼は心の中で新たな誓いを立てた。


柔道場に着いた美咲は、師範とのビデオ通話を思い出しながら、心を落ち着けた。「君ならできる。自分を信じろ。」師範の言葉が耳に残っていた。


試合が始まると、美咲は相手の動きを鋭く観察し、一瞬の隙を見逃さなかった。技をかけるタイミングを見極め、冷静に攻めていった。相手が攻撃を仕掛けるたびにそれをかわし、反撃のチャンスを狙う。


「ここだ!」美咲は一瞬の隙を見つけ、素早く技をかけた。相手が畳に倒れると、「一本!」の声が響き渡り、試合は終了した。美咲は金メダルを獲得し、師範と家族に感謝の意を示した。「これまで支えてくれた全ての人に感謝します。」彼女は深く頭を下げた。


プールサイドに立った大和は、自己ベストを更新することを目標にしていた。「今日こそやるぞ。」彼はゴーグルをかけ、スタート台に立った。


スタートの合図と共に、大和は力強く飛び込んだ。冷たい水が体を包み込み、全身の筋肉を使って水をかいた。50メートルのターンを終え、後半に入ると、体が疲れ始めるのを感じたが、「ここからが勝負だ。」彼はさらにスピードを上げた。


最後のストロークでタッチパッドに手をつけると、タイムを確認した。「銀メダルだ!」彼は喜びを噛みしめながら、「次は金メダルを目指すぞ。」と心に誓った。


結衣と奈々はバドミントンコートに立ち、決勝戦に臨んでいた。「私たちならできる。」結衣は奈々と目を合わせ、静かに頷いた。


試合が始まり、シャトルが空中を飛び交う。結衣は相手の動きを冷静に観察し、瞬時に対応した。スマッシュ、ドロップショット、ラリーの連続。ペアのコンビネーションが光り、二人は息の合ったプレーを続けた。


最後のポイントが決まり、金メダルを獲得した瞬間、結衣の顔には喜びと達成感が広がった。「やったね!」奈々と抱き合いながら、結衣は次の目標に向けての意欲を新たにした。


試合を終えた選手たちは、それぞれの成果と課題を胸に、選手村に戻った。夕食の時間になると、彼らは一緒に食堂に集まり、互いの試合の話をしながら食事を楽しんだ。「今日の試合、どうだった?」翔太が美咲に尋ねた。「金メダルを取れたよ。でも、これからももっと強くなりたい。」美咲が答えると、大和も続けた。「銀メダルだった。でも、次は絶対に金メダルを取る。」


結衣は笑顔で頷きながら、「私たちも金メダルを取れたよ。次も全力で頑張る。」と応えた。


パリの夜空には星が輝き、選手村は再び静寂に包まれた。彼らはそれぞれの結果を胸に、新たな挑戦に向けて歩み始めた。「これからも全力で戦おう。」翔太が言うと、全員が微笑みながら頷いた。

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