その5

街のみんな誰でも知っている噂。


毎日赤いフードを被っている彼女は一度天に上って生き返ったらしい。


ある日、彼女に直接聞いた若者がいた。


「なあ、噂って本当なのか?」


「本当よ」


彼女は笑顔で答えた。


「祖母の家へお使いに行ったとき、オオカミに襲われたの。祖母も一緒にね。幸いすぐ助けられたんだけど……」


そう言って彼女は袖をまくった。


右腕はたくさんの大きな歯型があり、左腕は本当に彼女の腕かと疑うレベルでシワが多くボロボロだった。


そしてフードの下から少し見えた首元の傷。


若者は彼女のたくさんの傷に怯えた。


しかし彼女は気にせず続ける。


「母の言いつけを守らなかった、わたしが悪いのよ」


彼女はそう言って去っていった。


怖くない怖い話「あかずきん」

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