第5話

「お金も溜ったことだし戻るか」


 俺達は再び酒場に戻った。


「戻ったか兄ちゃんたち何にする?」

 マスターが気さくに声をかけてくれた。


 こんな気さくな人なのに腹黒なんだよな。


「日本酒!」

 詩織はカウンターに座り嬉しそうに注文した。


 この野郎、もう俺達殺したこと忘れてるんじゃないだろうな。


「異世界に日本酒なんてあるわけないだろ」

 和は両手を広げやれやれと首を振って、詩織をバカにした。


「はい日本酒ね」

 と、マスターは日本酒の入った瓶を詩織に渡した。


 和ってこんなにバカだったっけ?アイドル文化があって日本酒が無いわけないのに。


「早速だがマスター冒険者にはどうやったらなれるんだ?」


「そんなことか冒険者ライセンスを買って好きな職業を選べばいいんだ。冒険者ライセンス買ってくか?」


 そんなことっていうなら初めから教えろよ。俺がこの先魔王を討伐して大金持ちとなりハーレムを築いてもこの酒場には絶対来ない。


「3つ頼む、職業は何があるんだ?」


「まいど」

 と、マスターはクレジットカードのような大きさのカードを俺達に手渡した。


「職業は冒険者、魔法使い、僧侶、戦士があってだな。冒険者は魔法と剣術で戦う職業、魔法使いは冒険者が魔法に特化した感じで魔力が成長しやすい、僧侶は周りの人間の回復や強化を得意とするそして魔法使い同様に魔力が成長しやすい、戦士は近接戦を得意としどんな武器でも扱える筋力が成長しやす


い。どれにする?」


「私は人を轢き殺してもいいように僧侶にするわ」


「は?え?」

 俺と和は詩織の発言に戸惑いを隠せなかった。


 こいつ絶対俺達殺したこと悪いなって思ってないだろ、必ず復習してやる。


「俺は面白そうだし魔法使いだな、和はどうする?」


「俺もだ」


「決まりだな。酒と冒険者ライセンスで十万ギラだ。おまけで杖魔法を使う用の三本つけてやるよ」

 と、杖を三本をそれぞれ俺達三人に手渡した。


「ありがとうマスター。後おすすめの宿教えてくれ」


「それならそこの快楽の間がおすすめだよ」


 ラブホ?快楽ってラブホだよな……、まあ行ってみるか。


「サンキューマスター」

 そして俺達は酒場を後にした。


「馬鹿どもが本当は五万ギラなのに倍の額言っても気づかなかったな」

 と、マスターがほくそ笑んだ。


 酒場を後にした俺達は十分ほど歩きマスターに教えてもらった宿快楽の間に着いた。


 宿快楽の間は街の景観に見合わないピンクを基調とした色合いだ。


「宿をご利用される方ですか?一泊一万ギラです。」


「分かりました。」

 と、俺は一万ギラを支払った。


「では階段を上がって頂いて一番手前の部屋となります。」

 受付のお姉さんが案内してくれた。俺達は案内に従い部屋に向かった。


「なんとか宿も見つかってよかったな」

 和がベッドに倒れこんだ。


「そうだな」

 俺もベッドに倒れこんだ。


 全然ラブホじゃなかったー……、ちょっと期待してた自分が恥ずかしい。


「さてそろそろ行くか」

 和はおもむろに起き上がった。


「どこに?」


「魔法使いとなって俺は透明化を習得した。つまり覗きに行くんだよ、クリアー」

 和はゲスい笑いを浮かべた、そして和の姿は見えなくなった。


 詩織を怒らせたらどうなるかこいつだって知っているはずなのに失敗を恐れないなんて和、漢だぜ。


「俺にも頼む」


「任せろ、クリアー」

 俺の姿も見えなくなった。そして俺達は女性用浴場に向かった。


 これから男には入れない男の楽園女湯に入れる。思えばこのためだけに二十年間生きてきた、ついに目的が果たされる。


 俺達は女湯に入った。中には詩織しかおらず詩織は体にタオルを巻きお風呂に入っている。


「ちょうどいい」


「入浴を見て改めて感じるこいつ本当に顔だけだな」


「貧乳だからな」

 馬鹿にしたような和の声は少し大きかった。


「馬鹿お前……」

 俺は急いで和の口を塞いだ。おもむろに詩織が立ち上がったり俺達に殴りかかってきた。和は透明になっている俺達を的確に殴ってきた。


「ぶっ殺すぞ!人の裸勝手に見て文句言ってんじゃないわよ!」


「ぐふ……透明化してるのに何で的確に殴ってこれるんだ?」

 俺は今にも消えそうな声で言った。


「視線が気持ち悪いのよ、このカスども!」

 軽蔑の眼差しで俺達を見下ろした。


「すびばじぇんでじた」


 俺と和の顔は腫れて活舌が悪い。


 転生生活一日目にして人生二度目の死を味わうところだった。もう二度とムキムキペチャパイの詩織さんとは揉めないようにしよう。一日目からこんな感じで魔王討伐出来るのだろうか?

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