第51話 ルナの特異日
꧁————前話あらすじ————꧂
ルナ達の成長を見守っていた王宮付きサイキック軍の隊長・ファスターが地下世界の大侵攻を目の前にして遂に動き出した。
地上の魔法使いを統べる四強=
それにより地上の実力者たちがまとまり始める。ファスターの計画とは何か。
そしてルナ達に期待している事とは。
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<本文>
この所の更なる大活躍のルナ達。逆を言えば地下から送られる敵数の増加も顕著だという事だ。
「今日は本当大変だった。街の修復も大変だし……こんなに攻めて来るなんて、やっぱ大侵攻の予兆かな。でもその御蔭で更に実力アップ。ちょっと休憩して行こうか、ルナ」
その日、活躍を終えて帰宅の途中、丘の上の自然公園に寄る。
「うん。確かにこの所実戦づくし。でもエマさんとの実戦訓練をやっといたお陰で戦闘が楽に感じる。
更に徳の倍率もついに三百超え。今、魔力はトータル12万、更に
「市街をもっと守れるね。でどう? もう地下へと乗り込める? 例の戦士と戦えそう?」
「多分全然……そもそもこの前のエマさん、全然手加減してた……最初に出会った日の
「だからこそ瞬間移動対策の新技を習得して来た」
「雷神……あれは凄く有効だと思う。多分奴らも手を出しずらい筈」
今は防御技の雷神だが、もしあれで
「ああ、早く強く成りたい! あの子がいつまで無事かも分からないのに一向にジャナス攻略に目途が立たないのは速度だけじゃない、サイの力が弱いからだ……」
思わず拳を握り込むルナ。
「だって戦士でもないセイカちゃんがジャナスの動きを邪魔出来てた……だからサイは大事。
でもボクのサイは未だ転生時のルカの1/10程。すぐに上達は難しいよ、ルカの30万が羨ましい……」
「最近、やたら天のお告げがよくあるの。 もっとルナと一つになりなさいって……」
「な、何イキナリ! ま……またルカは変なコト考えてるんでしょ!」
そう言って胸の前で腕をクロスして半歩退く保身のポーズのルナ。苦笑いのルカ。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093084698911424
「いや……ホントよく最近起き抜けにそんな言葉が何処からか頭の中に響いてくるの」
「ついにそこまでイっちゃった?! もうヤバいんじゃない? やっぱ妄想ヘンタイ?」
「って、ルナにだけは言われたくない! じゃなくて何かもっと優しい想いに満ちた感じなの。で、よく考えてみたら『凄い事』に気付いた。
私のが羨ましいならその通り一つになればいいんだって」
少し得意げに鼻下に人差し指のルカ。滔々と続ける。
「前に言ってたよね『ルカがサイで透視や予知して指示出せればAIつきスカウター持ってる様なもの』って。
今私は各倍率掛けて魔力3千、サイ33万、物理4万で丁度ルナと欠点を補い合える。そこでルナを一気にレベルアップする裏ワザを考えたよ」
「えっ! なになに!」
「その名も――――サイキック・ユニティー!」
「おお、なんかカッコイイかも! ルカ、ネーミングセンス良き~」
「フフン!……で、この世界で初めて会った日、私は自分の思念をルナに送りこんだでしょ」
「う、うん……ルカの悲しみをダイレクトに脳内にブチ込まれた……サイによる精神攻撃」
「そう、その様にしてこのサイで捉えた情報を言語テレパスではなく直接共有するの。 その時だけ乗っとる様に私がルナに精神干渉する……
それをコントロ一ルして、
「スゴいよ! それが出来ればスカウターなんてもんじゃない!」
「でもこれは余程息が合わないと……」
却って精神攻撃の様に邪魔になったら本末転倒だからだ。それ故に普段のトレーニングでイザという時に極自然にシンクロ出来る様にならないと使えない。真剣な眼差しでそれを伝えるルカ。
「そうだね……じゃ、さっそくやってみよう! 上手く行った暁にはボクはルカのサイをそのまま手に入れたのに等しいんだから何が何でも会得したい!」
―――早速訓練開始。
出だしから息の合う二人。元々が運命の出会い。疑う余地もなく互いに自然と受け入れた。そこでポシェットからノエルを呼び出す。
「ノエちゃん! それじゃ、お願いね。その魔法の速射砲をねぇねに当てたらオヤツ2倍になるゲームだよ」
「やる~っ! ぜったいあてるもん! ニシシ……」
バババババババババババババババババババババババババババババ……
背後から乱射するノエルの魔法の速射砲を、ルカの予知力で瞑目のまま避けて行く。
その桁違いの攻撃予知能力にルナは驚嘆する。
「あたらないよー! のえる、もぉおこったー!」
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093084698919178
ドババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ
エスカレートするそれは、もはや現代兵器のそれの数十倍高速な大連射。
それでも万倍速で避けてゆくルナ。
「ルカ……これは……やっぱサイは凄い! 成る程ジャナスがボクの攻撃をものともしないのはコレか?」
……でもコレなら大侵攻も恐れるに足らない! 決戦の地で大暴れだ!
* * *
訓練を終えて膝を抱えて座り、丘から陶然と星空を見上げる二人。背中合わせで寄りかかる。
ああルカ……自分にこんな相棒がいるなんて……これはまさしく出会いの奇跡。
キミはいつでもボクに勇気をくれる。キミがいなければこの異世界でとっくに押し潰されてた……
お陰でこんなにも希望を持てるなんて……もう、何か胸が一杯だよ……
このまま一緒に歩める日々がずっと続いてほしいな……
心地良い夜風が吹くと、月明かりに照る愛らしく真っ白なルカの頬からひと房の美しい髪がルナへとそよぎ、その頬を撫でた。藤桃色の長い髪から花の様に甘く薫るものが鼻腔をくすぐり、ルナの胸を焦がした。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093076663984854
かけがえのない想いに世界が、満天の星々が、二人の周りをグルリと回った気がした。ルナの焦がれた想いがジンワリとルカに伝わって行く。
――ルナ、これでまた少し、キミに近づけたかな。いつか本当に分かり合いたい……。
「これで私達は文字通り二人でひとつだね、ルナっ!」
これからはもっと役に立てる、とルカの満足顔。
となれば調子に乗って毎度の
「じゃあさルナ、もっとシンクロ出来るようにやっぱ今晩から寝るのも一緒にしよっ!」
「それはダメ~、ユニティーで何されるか分からないし! (てか、こっちが抑えきれん)」
「チェ~、ルナのケチ~! (フフ、実際その通り! 大好きだから仕方ないもん)」
あーでもマズったぁ……この交渉は明日すれば良かった。だって明日は満月……明日ならきっと……
―――そう、その翌日は満月。ルナにとってそれは特異日だった。
* * *
人体、特に女性の
この異世界ではその日は妙に女らしくなり、戦闘力も激減、情緒も安定せず、故に完全オフの日にしている。
日中からスカートなどをは穿き、鼻歌を歌って料理やら菓子を作り、ルカとノエルにまかなう。
普段は家事をルカにやらせ放題のルナ。まあ、ノエルと遊んであげてる訳だが―――とにかく特異日では甲斐甲斐しくなる。
そして一段落するとルカ達を連れて街にショッピングに出る。ルカとデート気分で服選び。交互に試着して感想を。
気分が高揚しているルナは何軒も渡り歩き、行きつ戻りつシコタマ買い込む。
『なあに、ねえね……あっ!!』
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16817330663556730771
山のようにオーダーしたスイーツがやって来た。
その攻略を三人で開始。切り分け合って前世に無かった様々な味をお試ししながら『こんなの無かったよね~』なんて感想を交わす。 ノエルも大満足でニッコニコ。
ルカもそんなひと時を実は楽しみにしている。
いつ迄も続いて欲しい幸せな時間が穏やかに流れてゆく。
そこへ突然ルナがプレゼントと言って渡してきた包み。慎重派な分、優柔不断なルカが迷って買い逸していた服を内緒でゲット。ポロポロ泣き出すルカに
『そんな大した事してないでしょ』
とその泣き上戸を呆れ笑いで慰めるルナ。
更にノエルポシェットから大量の包みを取り出して渡す。ルカに着て欲しかったルナ見立ての服の山。両手一杯で大泣きのルカ。
「ふえぇぇぇ……ル……ルナァ――……(こんなのズルいよ……やっぱ大好きだよ!)」
普段から自分への態度をハッキリしてくれない分だけこんなサプライズは反則。
うれしいときわ、ないたらだめなんだよ~、とノエルに小言をもらったルカであった。
「だって女子になったら却ってルナに放っとかれて……。ならなきゃ良かったかなって」
「ちがっ、そんな事ない! むしろ……てゆうかそれ以上可愛くなられたら……困る……」
思わず想いが溢れる二人。
「え……(キュンッ)ルナったら……あれ ?! またお互い男子になっちゃったかも……」
「ヒッ! 何かまた部分的に主張が! ナニこれ、ルカ助けて~ もうこんなジェンダーやだよ~」
思わず真赤になってオープンカフェの椅子に身を縮こまらせるルナ。
「フフ、大丈夫! 第一、この
「え~この世界の目的、衆生救済と理解者獲得がこんなんでなれる~? ナハハハハ」
―――クスッ、と柔らかく笑むルカ。
にしてもルナ、少し変わったかな。あの喪失への
いい傾向かな。
ただ、今日のルナ、何かやたらと見つめて来るんだけど、……ちょっと視線が痛いんですけど……
これって……?!
< continue to next time >
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この後に来るであろう大戦乱を前に、一気に実力アップして準備万端。束の間のひと時を過ごすルナ達。
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