第16話 驚異の攻撃 最強種族の力
身の丈2Mを越すアルビノのような白さの端正な顔立ちの巨人の出現。足音も無く只、忽然と。
大型の剣を背負い、明らかに戦士である事を体現している。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16817330661003907476
慌ててセイカを背にして立ちはだかるルナ。
「遂に見つけた……召喚者らの噂は本当だった。……お前は王の姫として暮らすのだ」
「あなたが神官の言っていた両性持ちの命を狙う……一体何者? なぜ私を?!」
「命は取らん。身柄を貰うだけ。ワレは地下世界最強部族・アンドロジャナスの戦士」
背に留めたヌンチャクに手を掛けるルナ。身を固くして息を止める。
コイツが噂の最強部族の残党! 確か見えない攻撃……
「お前が両性をねらう
冷徹な目でチラと見る白い戦士。
「弱き地上の者など相手にもならん。これまでも何百と斬ったが5秒と戦えたヤツはいなかった。
それにお前、サイも魔力も赤子同然、興味すら持てん。抵抗はムダだ。では頂いていく」
「来るなぁっ!」
《ルナさん! 私はサイキック使い。極めて危ない予感!……今度は私が守る番》
サイに長けたセイカはその予知力を駆使して死を覚悟して体をはり、敵の瞬間移動での攻撃先に『危ない!』と飛び込み軌道を狂わせる。
〈サイキック瞬間移動〉は出現先で物体と重なると細胞結合、或いは核融合で死ぬ事もある。それを嫌って攻撃が狂う白い戦士。
ハッ……セイカちゃんっ!
ルナはその飛び込みが無ければ斬られていた事を悟るが、既にその剣撃はセイカを
「はぐぅっ!」
「セイカ――――ッ!」
そのまま抱えられて連れ去られかける。
瞬時にテレパスでルナに伝意するセイカ。
《ルナさんっ、念をまとめて伝えますっ、大丈夫だから今は動かないでっ!》
「ィやめろ―――――っ!」
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123434840
飛びかかると同時に呆然となるルナ。
気づけば大剣により胴部で上下真っ二つに切られていた。
――― 太刀筋なくいきなり剣が!
と即座に掌の光で自己接合して再び構える。
「ホウ!
「だったら万倍速っ!!」
―――――ドゴォォォォ―――――ン!!
空を切る万倍速ロッドヌンチャク。衝撃波を伴った猛威は猛爆撃の如く周囲の大地をボッコリ
「ギャイィィィィィィン……」
敵の大剣をロッドで受け、互いの途轍も無いパワーの衝突で辺り一面に飛び散る火花。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123441396
《速度万倍視でも剣撃がイキナリ眼前に?!……》
と、触れる程の位置から出現した大剣を首に1mm入った所で食い止める。
あり得ぬ反射神経に白い戦士も驚きの色を隠し得ず、
《小僧!
と改まる。即座に万倍速で飛び退き、全速特攻し直すルナ。だが敵のどの太刀も首や頭部に触れる程の所で現れる。
不可視の攻撃にただ防戦一方。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123447751
『ギャギャギャ……』
と軌道の見えない猛襲を深さ数㎜で受け続ける様子は、さながら火花と闘っているが如く、その連撃に『ギャギャギャ』と耐え続けるも、遂に7撃目、背後からの刃が首の半分まで入った。
―――えっ………死ぬ?!
その刹那、目も眩む強烈な光球に瞬時に包まれ、その場から離れた場所へと瞬間移動〈連れテレポート〉で救われる。
空を切る白い戦士の大剣。
光の消えた虚空を不満げに目で追う白い戦士。が、すぐにセイカを抱え地下世界へと連れ去っていった。
* * *
ルナを奪った光球は安全な広い野原に出現し、その光度が和らいで少女を抱く人影が姿を現した。ルナはそっと優しく地に降ろされた。
直ちにその者が懐の内の手かざしでルナの創部をサイキック
だが同時にハッ、とした驚きと僅かに悲しい表情となるその男。
ルナの心の深奥に
そしてこだまし続ける妄言。
『助けないで欲しかった………助けないで欲しかった………助けないで欲しかった………助けないで欲しかった………助けないで欲しかった………こんなに苦しむ事になるなら、助けないで欲しかった………
………こんなに苦しむ事になるなら、助けないで欲しかった………………こんなに苦しむ事になるなら、助けないで欲しかった………………こんなに苦しむ事になるなら、助けないで欲しかった………』
そして外見とはまるで異なる心象風景――――
それは爆撃で何処までも廃墟となった様な無人の都市に、たった独りたたずむ亡霊のような少女。
まるで千回は自殺を試みたであろう壮絶な姿。
自分を責めて責め抜いてついた体中傷だらけ、血みどろとなり裂けてただれた皮膚。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123453000
足元に散乱する砕け散った宝物をただ虚しく掻き集めるその虚ろな瞳には、絶望だけを帯びて涙さえ枯れ果てている。
誰も寄せ付けない孤独なオーラを漂わせて。
……何て痛々しい……
慰める言葉も見つからず治癒を続ける男。
それにより、ルナは切断された神経が繋がり始める。
先ず声が、そして少しずつピクピクと動ける様にもなってゆく。
「お……お願いあそこへ戻して……」
その者へ向きながら懇願するルナ。
「またボクの為に大切な人を失う訳に行……!!! 」
――――はあぁぁっっくっ……
激しく吸い止まる息。
余りに度肝を抜かれ限界まで目をむく。
血走る
―――そ……そんな……まさか!
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123457441
「……お……お……お兄……ちゃん?!?!……」
その瞬間、衣服が千切れんばかりのしがみ付きと
ブワッ……と溢れ出したルナの涙
それを見て、その男は再び読心する。
何て心の中がズタズタなんだ……コレじゃこの世界の強敵と闘う戦士としては……
余りに
……これではいかに私のサイキックパワーで
男は表情を変えずに悔しげに想う。
だがいつか力になってあげられたら……
でもとりあえず今は……
そして取り繕うようにルナに向き直り、
「ん? 違いますよ。似てますか? ……凄い戦闘気配を感じたので……通りすがりでしたが差し出がましくも。さらわれた子も命は取られないから落ち着いて行動を」
そうさせようとしているからなのか、限りなく優しい眼差しで僅かに微笑みながら語りかける眉目秀麗な好青年。
とても似ているが兄より幾分年上に見える。
「命は取られない?」
「ヤツらの目的は別にある。取り返すチャンスはまだあるからムダ死にをしてはいけない」
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123465968
無礼にもその軍服にしがみついた手に気づき、緩めるルナ。
「……私はラグレイシア王国の宮廷付き第一級戦士、隊長ファスターと申します。
あなたは転生者ルナさんですね。噂は早速聞きましたよ、国境での大活躍を。
いつか協力して戦えたらいいですね」
なんて慈しみ深く見つめてくるんだろう。――――ただ硬直するルナ。
「……だが今回のあの敵は強い。この世界では最強種族の一員。私でもマトモでは勝てない。今は出会わない方がいい敵だ。
それにヤツらは訳あってすぐに我々を襲ってくることは無いだろうから、その日のために力を上げるしかない……」
自分を助けてくれた兄に極めてよく似たこの青年。
そして何やら色々事情も知っている。
ひたすら吸い寄せられるように見つめ続けるルナだった。
[ ▼挿絵 ]
https://kakuyomu.jp/users/kei-star/news/16818093082123470720
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チート超人としてこの世界の救世主を自認し、活躍し始めた矢先に出会ってしまった絶対強者。
そして奪われた最大の理解者。
もしこんなルナを応援頂けるなら ☆・♡・フォローのタップにて宜しくお願いします。
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イメージBGM (youtube)
▼Bring the pain
https://youtu.be/6ZH6uwNH6d4?si=LMeuqcud1_Da3fa4
(アンドロジャナスの圧倒的な攻撃に押されるまくる感じの表現)
▼Time Line
https://youtu.be/-erHcsoGoVQ
(テレポーテーション救出後、ファスターとルナの想いの交錯とルナの圧倒的な驚き。この曲以上は望めない)
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