聖十字騎士学院の異端児〜学園でただ1人の男の俺は個性豊かな女子達に迫られながらも、世界最強の聖剣を駆使して成り上がる〜
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1話「学院の自己紹介にて俺は女子達の注目の的」
突然だが俺こと【ハヤト・Ⅵ・オウエンズ】は今物凄く緊張している。
その理由としては周りを見渡す限り、この学院には女子しか居ないからだ。
そして周囲から向けられる好奇な感情を孕んだような視線を一身に受けながら、今か今かと迫り来る自己紹介という最悪な時間を耐え忍んでいる最中だ。
というのも俺は聖十字騎士学院の一組に在籍することになり今日が入学初日であるのだ。
そもそも聖十字騎士学院がどんな学院かと言うと、この世界では女性にしか扱えない聖剣という武器があり、それを自分の手足のように使いこなせるようにする為の学舎と言ったところである。
「それでは最後にハヤト=オウエンズ。お前の番だ。印象に残る自己紹介をするのだぞ」
そう言いながら俺の方を睨んでくる先生……いや姉貴というべきだろうか。
実は一組の担任は何を隠そう俺の姉であり、元世界最強の聖剣使いであるのだ。
もしかしたら引退した今現在でも最強なのかも知れないが。
「は、はい……」
取り敢えず姉貴に氏名された以上は無視する事も出来ずに渋々席を立ち上がる事にした。
「「「…………」」」
するとそれに比例して周りからの視線も吸い付くように動くのを感じる。
だがそれは更に俺の緊張感を高める行為であり、胃がきりきりと締め付けられるような感覚を受けて普通に痛い。
「くっ……自己紹介っつても一体何を……」
周りに聞かれない程度の声量で小さく呟くと額に脂汗のようなものが滲む感覚を覚えるが、それでも視線を泳がせつつ自己紹介の内容を考えていると、ふと視界の端に幼馴染の【ヒカリ=グレイヴズ】の姿を捉えた。
彼女は美しい漆黒色の長髪を髪留めを使用して上手く纏めていて、顔は昔から気が強そうな表情をしており、身長は俺より若干低くいのだが……これは成長期というのが影響しているのか胸の部分だけは大きく巨乳なのだ。
それはもう大人顔負けと呼べるぐらいであり、それを更に学院の制服が良い感じに体の骨格を顕にしていて主張が激しいのだ。
しかしヒカリは姉貴と同様に何故か睨みつけるような視線を俺に向けていて、何処か不機嫌そうな雰囲気を全体から漂わせながら両腕を組んでいた。
なにか彼女を怒らせる行為を無意識のうちにやっていたのだろうか?
だがそれでも今は彼女の力を借りてこの自己紹介という局面を乗り切る他ない。
頼むぞ……ヒカリ。俺にお前の力をかしてくれーーッ!
「ふんっ」
そう聞こえた気がした。いや、聞こえたのではなく態度で理解できたのだ。
ヒカリは俺と視線が合うと同時に両目を閉じると、一瞬のうちに顔を逸らしては我関与せずという意思が伺えた。
「おいおい……はぁ」
そんな彼女の様子を目の当たりにして小さく溜息が漏れ出ると、なぜ俺が今こんな状態になっているか刹那の間に走馬灯のように記憶が次々に蘇り始めた。
先に言うと俺はこの世界の出身ではないのだ。いや厳密に言えば出身はこの世界だが、元々は日本というそれなりに平和な国で普通に生活していた男子高校生なのだ。まあ両親は早々に病気で他界して親戚付き合いもろくに無かったから、ずっと独りきりだったけど。
それから元日本人の俺がどうしてこの聖剣と魔法の入り乱れる世界に来られたのかと言う理由としては、ある日俺が学校に行くために駅のホームで電車を待っていると突然背後からギャルの集団に突き飛ばされてそのまま電車に轢かれて死んだというのが主な要因だ。
文字通り目の前が真っ暗になるというのを身を持って知ったのは後にも先にもこれだけだ。
しかし暫くすると何も無い真っ暗な空間に徐々にだが女性の声のようなものが聞こえてきて、それが次第に鮮明になっていくと気が付いた時には既にこの世界に居て、姉貴が俺の手を掴みながら必死に何から逃げている場面であったのだ。
あの時は本当に何がなんだがで頭が混乱していて訳が分からなかったが、今でも姉貴は当時の事を詳しくは話してくれないのだ。
それから俺達が一日中、森の中を走り続けると漸く街にたどり着く事が出来たのだ。
けれど街に着いたところで特に宛がある訳けもなく姉貴と俺は途方に暮れていると、そこへ偶然ヒカリの両親が声を掛けてくれたのだ。
その時の姉貴は誰に対しても敵対心剥き出しで怖かったのだが、俺がヒカリの両親に事情を説明するとなんと俺達の面倒を暫く見てくれると言ってくれたのだ。
おかげで俺と姉貴の今がある訳だから、本当に感謝してもしきれないぐらいである。
そうしてヒカリとも出会う事ができて今日まで幼馴染の関係は続いているのだ。
ちなみに今は姉貴が聖剣を駆使して戦う世界大会【ラート・デス・シックザールス】通称、RDSで得た賞金で家を建ててそこで暮らしている。
おかげで住民登録も無事に済ませる事ができて、正式に俺と姉貴がパルメシル王国の住民となることが出来たのだ。勿論だが今まで面倒を見てくれたヒカリの両親に恩を返す為にも、姉貴は屋敷のような広い家をプレゼントして困らせていた事もあった。
まあそれも今となれば随分と昔の出来事で懐かしい記憶の一部である。
「おい、ハヤト。自己紹介如きで貴重は時間を使わせるな。さっさと言え」
「は、はい!」
記憶という名の走馬灯を体験していると姉貴から怒声混じりの声を掛けられて、直ぐに意識を現実へと引きずり戻すと簡素な自己紹介を述べて早々に終わらせようと決意する。
「えーっと、ハヤト=オウエンズです。よろしくお願いします」
頬を掻きながら気を紛らわしつつ早口で名前を言うと、まるで磁石のように椅子と腰が吸い寄せられるようにして座り込む。
日本で生活をしていた時も、こういう自己紹介をして幾度となく局面を乗り越えてきたのだ。
そう、最初から何も深く考える必要はなかった。
例え世界が違えど結局のところ自己紹介というのは何処も共通なのだから。
「えっ、それだけ?」
ふとそんな声が俺の左斜め後ろの方から聞こえてくる。
だが反応はしない。そうだ、俺の自己紹介はそれだけなのだ。
どうだ、実につまらない男だろう?
だからその好奇な眼差しを向け続けるのを早急に辞めるんだ。
これ以上は俺のライフポイントを削ることになるぞ!
「でもあれだよね?」
「うん、あれだね!」
「「「なんか、クールで格好良いねっ!」」」
しかしそれは逆効果のようで周りから聞こえる女子達の声を聞いて、俺は呆気に取られるともう何を言っても言わなくとも同じだとして、至る箇所から向けられる視線の圧を身に受けつつ顔を机にうつ伏した。
「まったく、本当につまらない男だな。我が弟は」
感情が一切篭っていない氷のように冷たい姉貴の声が聞こえてくる。
「弟? あ、あの先生!」
「なんだ? 質問の時間は設けていないぞ」
そう言いながら姉貴は手を上げている女子に視線を向けて話を終わらせようとする。
だがその女子は意を決した様子で席を立ち上がると、
「い、いえその……先生の自己紹介とかはないのかなーって……あははっ」
手をもじもじと弄りながら弱々しく姉貴に自己紹介を求めていた。それに対して周りからも彼女に賛同するかのように、俺に集まっていた視線の数々は姉貴の方へと注がれ始めていた。
「ふむ、そうだな。今教えておいた方が何かと好都合か。よろしい、よく聞いて一度で覚えろ。私の名は【サクヤ=オウエンズ】だ。これから一年間お前達に聖剣がどいう物かというのを理解させるために無理難題を押し付ける。弱音を吐いてもいいが、私は一切取り合う気はないからな。しっかりと覚悟を決めて授業に励むように。以上だ」
俺の姉貴こと【サクヤ・M・オウエンズ】は両手を教卓に乗せて若干身を乗り出しながら自己紹介という名の脅迫を述べていくと、それを聞いてクラスの女子達の何人かは姉貴の覇気に押されたのか青い顔をして肩が小刻みに震えていた。
しかし名前を聞くたびに疑問に思うことがあるのだ。
それは俺や姉貴の名前には普通では使われないような
姉貴はそれについても何も教えてはくれず、ただ一言『絶対に人前でⅥを名乗るな』と強めの口調で言っていた。だから俺と姉貴は普段名前を教える時は略しているのだ。
俺達姉弟の全ての名を知っているのは現状ヒカリの家の者たちだけである。
「ん? ちょっとまってサクヤ=オウエンズって名前どこかで聞いたことある……。確かRDSの大会で常に優勝していて、あと一歩で殿堂入り確実だったのに突如電撃引退を発表した――あの伝説の黒騎士の女帝!?」
脅迫まがいの姉貴の自己紹介をしっかりと聞いてた者がいたらしく俺の前の席からそんな言葉が聞こえてくると、彼女は等々その事実に気付いたらしく声を荒げると同時に席を立って教室内に響かせていた。
そして案の定驚きは連鎖していくと教室内は、
「「「えーーーーっ!?」」」
阿鼻叫喚の嵐となり俺は静かに耳を塞いだ。
それから暫くして教室内に落ち着きが伺えると耳から手を離すが、
「う、うそよ! だってサクヤ様は引退後、家族と一緒に過ごすって田舎に帰ったって聞いたわよ!」
「なにそれ、デマなんじゃないの? 私が聞いた噂では引退したあと結婚したって聞いたよ?」
「それこそ嘘だ! サクヤ様は私達の永遠の憧れなんだから、絶対に誰とも結婚し・な・い・の!」
周りからは興奮冷めやらぬ様子で女子達の会話の数々が流れ聞こえてくる。
そうなのだ。実は俺の姉貴は聖剣を扱う者ならば誰もが知っている超有名人物であり、大会では負け知らずで無敗を誇るほどの実力を有していたのだが、何故か急に現役を退いたのだ。
理由は今でも教えてもらっていない。本当に姉貴というのは秘密の多い人物だと言える。
少しは腹を割って話すことはできないものかとたまに考えるのだが、姉貴は口が堅いので直ぐに無理だという結論に毎回たどり着いて諦めている現状だ。
「はぁ……今年の一年もうるさい奴らが勢揃いだな。まったく先が思いやられる」
片手で頭を押さえながら深くため息を吐く姉貴は黒色のスーツのような服を着こなして弟の俺から見ても美人女教師に見えるほどである。
長い黒髪に何事も見透かしていそうな冷たい瞳をしていて身長は俺と同じぐらいであり、胸は年相応よりも大きく本当に自分の足元が見えているのだろうかと心配になるほどの巨乳ぶりであるのだ。
――――だがここでちょうど時を見計らうようにして、鐘の音が教室内に鳴り響くとHRの終わりを知らせるのであった。
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