第726話 まずはダンから
「おやっさん、頼むっ。どうやったか教えてくれっ」
「知らぬと言うたじゃろうがっ」
「ドワン、一回も使わんと死んだくせに必要ないだろうがっ」
「アーノルドっ、きっさまぁぁぁっ! お前なんぞアイナを取られてしまえっ。アイナも坊主と一緒にいる方が楽しそうじゃっ!」
「なんだとってめぇっ」
あーあー、始まったよ。
「ダン、ジョン、飯行こう。あの二人は好きにさせとこ」
「おっ、そうだな」
俺達はアーノルドとドワンを風呂場に捨てていく。
「ぶちょー、乾かしてぇー」
ん?
「めぐみ、ちょっとこっち来てみ」
「なに?」
並んで立ってみる。少し小さくなってる?
いや、最近自分の年齢をいじくって体格変えてたからな。そのせいかもしれん。
女性陣の皆が乾かしてというので、並んで貰って乾かしていく。
皆少し眠そうだな。寝なくても良いのに眠くなるのは不思議だ。俺も寝るけど人間の魂があるからかと思ってたな。
「ゼウちゃん、女体化出来てから眠くなった?」
「ううん、前のままよ」
「母さんは眠くなる?」
「寝なくても平気だけど眠れるわよ」
「ダンは?」
「俺も寝れるが寝なくても平気だな」
なるほど、実体化が影響するのか記憶がそうさせるのかわからんな。別にいいけど。
飯はまた焼き肉か・・
ダンはミケと、ジョンはマルグリッドと並んで座る。キキララシルフィードは3人でと思ったらめぐみもそっちにいった。俺の両隣にアイナとチルチル、その隣にラムザとゼウちゃんだ。ラムザは子供達の面倒を見てくれている。
食べさせる人がいないのでそれぞれで焼いて貰って食べることに。
ちょっとご飯食べたいなとか思うけど、シルフィは子供だしな。エールで我慢しよう。
「ゲイル、あーんされてあげようか?」
「たまにはゆっくり食わせろよ」
「ふんっ、ちょっと寂しそうだったから聞いてあげたのにっ」
「チルチルは優しいな。ほれあーん」
「もういいよっだ」
それを見ためぐみが来て食べてった。
「あっ・・・」
そのあとキキララも口を開けて食べては戻っていく。シルフィードよ君もか。
「ほら、ちゃんと座って食べるのだ。たまにはパパをゆっくり食べさせてあげろ。ほれ、あーんだ」
キキララはラムザから食べたけど、さすがにシルフィードとめぐみは遠慮していた。
しかし、めぐみが俺以外の人・・・ じゃないか。まぁ仲良くするのは良いことだ。
「ダン、タコわさ・・・」
ミケが寝てしまった様でダンが膝枕しながら愛おしそうに撫でていた。もうダン達は大丈夫そうだな。
ようやくアーノルドとドワンが帰ってきた。殴りあった跡はあるけど勝手にすぐ治るだろ。
「ゼウちゃん、おやっさんにこのタコわさと〆鯖持ってて。昆布〆とかも食べる?」
「あら、いいわねぇ。日本酒で頂くわね」
タコわさとか持ってドワンの元へいそいそと行くゼウちゃん。ドワンと一緒に酒飲んでる時楽しそうだからな。ドワンはちゃんと昆布を外してやっていた。
(母さん、父さんの隣に行かなくていいの?)
(いいのよ。一人の寂しさを味わったほうがね)
アーノルドに睨み付けられながら飲む酒不味いんだけどな。
「ゲイル、あーんされてあげてもいいよ」
「何が食べたいんだ?」
「その昆布に乗った白いやつ」
「ほれ」
パクっ
「あーーーーっ!アーノルドにやって貰いなさいよっ」
「ふふっ、美味し♪」
アイナ、やめてそんな顔で俺を見るの・・・
「何お母さんに赤くなってんのよっ」
ドンっとチルチルに肘鉄をくらった。そりゃ、そうだ。
もう一度チルチルに食べさせようとするとめぐみが膝の上に乗って先に食べる。アイナに食べさせても邪魔しない。チルチルだと邪魔をする。アイナには本能的に逆らってはいけないと感じてるのだろうか? チルチルも初めてアイナに合った時に固まってたからな。
そしてチルチルは拗ねてしまったので、人ゲイルを出して食べさせた。めぐみがこっちに来たのはキキララとシルフィードは寝てしまったからなんだな。
シルフィードを抱っこして、キキララはラムザが抱っこして寝かせに行った。ラムザはそのまま一緒に寝てやるらしい。
皆の元に戻るとめぐみとチルチルが寝てたので分裂して寝にいかせる。
戻るともう食事時間も終わりのようだ。結局あまり食べられなかった。けどもう少し飲みたいな。
「解散する?」
「そうじゃな。また明日もあるしの」
ダンもミケを寝かせにいった。
「ゼウちゃんも寝る?」
「うーん、もう少し飲みたいかな」
「じゃ、ラウンジで飲もうか。俺も昆布〆でちょっと飲みたいんだよね。昨日のお刺身も少し残ってるし」
「あら、いいわね」
「おやっさんどうする? ちょっと打ち合わせもしたいんだけど」
「そうじゃの、ワシも相談があるから飲みながら話すか」
「父さん達はどうする?」
「アイナはどうするんだ?」
「もちろん行くわよ」
そしてジョンとマルグリッドも来ることに。みなでラウンジに移動。
「おやっさん、ダンジョンタワーってのを7つ作ってあるんだけどね」
と、ダンジョンやら洞窟やらの話をする。
「なるほど、遺跡みたいなもんじゃな?」
「そうなんだよ。まぁ、クリアは出来ないかもしれない。かなり難易度上げてあるから。おやっさんも誰がクリアするか楽しみができるだろ?」
「そうじゃの。どれぐらいの難易度なんじゃ?」
「おやっさん達のパーティーでもクリア出来ないぐらい」
「そんなに上げてあるのか?」
「途中までは攻略出来るよ。だからそのうちタワーの近くに街が出来ていくと思うんだよね。で、より高い層をクリアするために終わりなき高みを目指してくれればいいなって」
「ほう、面白いの」
「で、考えたんだけどさ、今の人達でもクリア出来そうなレベルのをいくつか作ろうか? お宝は魔道具とかにして。今のままなら買えないから欲しがらないだろ? 誰か使い出したら欲しがるようになるんじゃないかな?」
「うむ、そこに金と銀はおけるか?」
「通貨にするの?」
「そうじゃ。素材を落とすゴーレムでもいいんじゃが。鉱山からとって来るにはまだ人が足らんでの」
「なら、銀と銅を多めにお宝にしておくよ。他の素材は?」
「色々とあると助かるの」
「なら俺の持ってるのを置いておくよ。その分あとでここから貰っておくから。金や銀はめぐみの所のやつでも問題ないね」
「ゲイル、俺は何をすればよいのだ?」
「まだ騎士が出るほど発展してないからねぇ。皆の目標になるようにしてみたら?」
「目標?」
「あぁ、こいつ凄いな、こんな風になりたいなという人物像だよ。おやっさんはドワーフ達から、ダン達は住民から、父さんは冒険者や狩りをする人からそれぞれこうなりたいなという目標像になってくれたらいいと思う。チュール達やシルフィもそうだね」
「俺はなんの目標になれるようにすればいいんだ?」
ジョンは自分がどのような目標になれば良いのかピンとこない。
「それは自分で考えな。俺がこれをやれと言ったところで借り物の目標なんて意味ないだろ?」
「それはそうだが、ヒントぐらいくれればいいだろ?」
「お前らしくやればいいよ」
「なんだよそれ?」
そのままいつも通りにやればいい。皆、俺が凄いと思った人達なんだから。
しかし、ジョンには仕掛けを作っておいてやらんとな。まだ国として不完全な状態だから代わりになるものが必要だ。
その後は色々と駄弁りながら飲んで解散。
風呂入ってからの焼き肉だったからもう一度風呂にはいろ。さっきはのんびり浸かれなかったからな。
で、風呂に入ってるとまずダンが。
「ぼっちゃんも入ってたのか」
「あぁ、ダン良かったな」
「あぁ」
「二人でいるのが当たり前だと思ってたろ?」
「そうだな」
「でも当たり前なんて誰がどう決めるもんでもないからな。あやふやなんだよ。いつその当たり前が変わってもおかしくない」
「ぼっちゃんは昔からそんな話をよくしてたな」
「意味わかったろ?」
「そうだな。でもよ、俺はこの当たり前をもう変えるつもりはねぇ」
「俺もそう思うよ。俺とダンの基準はよく似てるからな」
「そういやそうだったな」
そう言ってカッカッカッカとダンは笑った。
翌日からも同じように遊び、俺はアイナと行動を共にして冒険者で稼いだ。
自分でアイナに魅かれる理由を考えてみる。好みとか相性とかを越えた何かがあるんじゃないかと。
始めに自分で言ったプログラミングされてるという言葉は今更ながらにしっくりくる。元々魅かれ合うように作られてるんじゃないだろうか?
カスの所に行って自分の魂の履歴を初めから見てもらおう。ゼウちゃんは俺の魂が特殊になってるからわからないと言ってたしな。
こうして1ヶ月近く経ち、マグロが食べ頃になった。
ドワンはこれをゼウちゃんに食べさせたかったのだろう。日本酒で俺が説明した事を嬉しそうに説明しながら食べていた。
「ぶちょー、これ美味しいね♪」
今日のめぐみは今まで通りのめぐみだった。
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