第34話

「そう、だったんだ…全部私のために…」


今までの行動全て私のためにしてくれてたこと…


「ごめん。素直に好きになって貰えるように努力するべきだったのに。わざと嫌われるような態度を取った。沢山傷つけた。ほんとに、ごめん」


そう言って深く頭を下げた。


「許しますから、頭をあげてください」

「でも、」


私も、許してもらったから。



「だから一つだけ約束して」


「なに?」

「このことで心を痛めたり泣いたりしないこと」


「それって…、」


湊さんがそう言ってくれたから。


「ふふ。あの時、湊さんにそう言って貰えて本当に嬉しかったから。もういいです」


「彩花…」


私は今を大切にしていきたい。


「それにしても、湊さんがお義母様にそんなことを言っていたなんて知らなかった」


好きどころか嫌いだったなんて、


「お母さんが家に来ると、君の様子がおかしいから、嫌味を言われるのが嫌なだけだと思ってた。でも、まさか叩かれてたなんて…気づいてあげられなくてごめん」


本当に、気づいてなかったんだ。

気づいていないフリをしていたんだとばかり…


「あんな姿は見られたくなくて、湊さんには内緒にしてたの。それに、言ったところで…」


「ん?」


「お前がちゃんとしていないからだとか言われると思って。自分が情けなくなるだけだし、どうしようもないことだと…」


言う前から諦めてた。

湊さんに言っていたら、何か変わったんだろうか。


「どんな理由でも暴力はいけないだろ」

「それはそうなんだけど…」


暴言を浴びせられるよりは、暴力の方がマシだから。


「母も、彩花に酷い言葉をぶつけていたんだろうね、」


「私が至らないのが気に入らなかったみたいで、何度も早く離婚をしろと、」


だけど、離婚だけはどうしてもしたくなかった


「あいつ…」


余計な話をしてしまった。


「でも、もう過ぎた話なので、大丈夫です」


「家族共々ほんとにごめん。俺が言えたことじゃないんだろうけど…彩花は自分が思っているよりも魅力的で素敵な女性だよ」


魅力的で素敵…


「う、嘘だ」


そんなの嘘


「え?」



「湊さんは、私に地味なドレスしか着せてくれなかったもん...」


私には


「それは…!俺が、彩花にダサいドレスを着せてたのは、他の男に狙われないように。彩花が可愛すぎて色んな男が彩花に近づくところを想像したら…綺麗なドレスなんて着せたくなかった」


「狙うって…」


私を狙う人なんて…

一人しか知らない。


「それと、あいつが彩花に好意を寄せてたのを知ってたから」


「湊さんも、知ってたの…?」


あの人がパーティーの度に私に近寄ってくること


「あの時は彩花の事を直接、守れる立場じゃなかったから、せめてもと思って...」


そういえば…


あの人が、いつも湊さんが邪魔してきたって言ってたけど、私が知らないところで守ってくれていたんだ。



「そっか、あの人のこと気づいてくれてたんだ、」

「俺がどれだけ彩花の事を目で追っていたと思ってるんだ?」

「そんなの知らなかった....あ、」



ずっと疑問に思ってたこと


「ん?」


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