第22話

「彩花ちゃん…!」


「陽翔さん」


「うわぁ。これはもう、綺麗を通り越して美しい。やっぱりモデルを彩花ちゃんに頼んでよかったよ!」


そう言って貰えて良かった。


陽翔さんはお洋服のお仕事をしているからだろうか、お世辞がお上手だ。


「ふふ、ありがとうございます。お世辞でも嬉しいです」


「お世辞なんかじゃないよ!でも、湊がこのドレスをよく許可したよね。昔の湊なら絶対スカートの丈がみじ『彩花と三秒以上目を合わせるな』えぇ、なにそれ」


「流石に三秒は短すぎる気が…」


「湊ったら独占欲丸出しなんだから。彩花ちゃんが他の男と話してたら嫉妬で狂いそう。ははっ、想像しただけでも面白い」


陽翔さん、それは笑い事じゃないような気が…


「こんな綺麗な姿、誰にも見せたくないぐらいだ」


「湊さん...」


独占欲強めな湊さんもかっこいい。

とか言ってる場合じゃないんだけど。


「だから、他の人がいる前ではそんな顔しないでね」


へ?顔…?

私、今どんな顔してる?


「変な顔してた?」


「可愛い顔してた」

「なっ、」


か、可愛いなんて、


「だからそんな顔しちゃだめだよ。襲いたくなるから」


「お、襲うって、」


公共の場で何を言い出すんだか。


「ちょっとちょっと!彼女のいない俺の前で、イチャイチャしないでもらえます!?」

「すみません、」


こんなことを言ったらあれだけど、陽翔さんがいたこと、すっかり忘れてた。


「ほんに、もう。甘すぎてやってられない。邪魔者はとっとと退散するよ。じゃあ、また後でね」


「あ、また後で、」


私達もそろそろ…


「…さっきの話の続きだけど、彩花に手を出した奴は許さないよ。どんな手を使ってでも潰してあげる。あいつを、」


「…?」

あいつって誰のことだろう


「だから彩花は、心配も、気にもしなくていいから。いつも通りで大丈夫だからね。」


よく分からないけど、何があっても湊さんが守ってくれるってことだよね。


「分かった」

「じゃあ行こうか」


相変わらず豪華な会場...


「っ、」


「緊張してる?」

「そういう訳じゃないけど...」


豪華なシャンデリアに、少しきつい香水、あと華やかなドレス。


こんな所にいてもいいのだろうかって、いつも思ってた。


「じゃあ...こんな所、身の丈には合わないって?」


「えっ、」


どうして分かるの。


「当たりでしょ?」


「どうして…」

私の気持ちを分かってくれるの。


「彩花の考えてる事はなんでも分かるよ。大丈夫。彩花は、ここにいるどの人よりも輝いてるから」


「ありがとう。そんな事言ってくれる人は湊さんしかいないよ」


「そんな事ないよ」


そんなことあるよ。


「でもね、昔より堂々としていられるの。このドレスと、湊さんがくれたネックレスのおかげだよ」


湊さんに大切にしてもらってるって、身に染みて感じられるから。


「そっか、良かった。彩花が自信持ってくれて嬉しいよ」


そう言って頭を撫でてくれた。


それだけで私は世界中のどの人達よりも幸せだって思える。



私も、勇気を出して一歩踏み出すんだ。

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