第19話

色鮮やかで素敵なドレスがいくつも並べられていた。


「すごく素敵....こんなに沢山あると迷っちゃう...」


自分でドレスを選ぶのってこんなに楽しいんだ。しかも今回は、自分に似合うドレスを選ぶんじゃなくて、私が気に入ったドレスを選んでいいって言われてる。


「時間なら沢山あるから、ゆっくり見てね」

「ふふ、うん」


湊さんはそう言うけど。待たせてるから、なるべく早く気に入るドレスを見つけたい。


他の人がすごく綺麗なドレスを着てて、私もあんなドレスを着てみたいと思った。


その願いはきっと叶うことない。そう思っていたのに。まるで夢のような時間だ。


「これだ…」


一目惚れした。


私が思い描いていた物がそのまま形になった様な

ドレスを見つけた。


「気に入ったの見つかった?」


綺麗な赤色で、それもすごく鮮やかで、花が散りばめられている。そんなドレス。


だけど、私があの人達みたいに着こなせるわけがない。


湊さんの顔に泥を塗るわけにはいかない。それに、私のせいで陽翔さんの会社の売り上げが落ちるかもしれない。


「うん。だけど... スタイルが悪いから、このドレスは私にはもったいない気がする...」


いくらドレスが良くても、着る人が駄目なら台無しになる。


「昔の俺が言ったこと気にしてる?」


お前は何を着ても似合わない。


お前は暗い色のドレスを着ていればいい。


足は見せるな。


今でも呪いのようにまとわりついてくる。


「...正直に言えばそうかな。だけど事実だから仕方ないよ、」


「昔の俺が、意地悪で言っただけだと思うから気にしないで。彩花なら絶対似合うから」


「そうかな....」


湊さんは私のドレス姿を見たことがない。だから分からないんだろう。


「俺を信じて」


湊さんも一目見たら分かるだろう。


「分かった。あの、試着してもいいですか?」


「もちろんです。お預かり致します。こちらへどうぞ」

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