月の都ジュエル ~秘匿の姫~
榊原 梦子
第1話 プロローグ
月の都ジュエル ~秘匿の姫~
プロローグ
惑星ティアドロップスは、その美しい風景から、悪しき神・シェムハザの手に落ち、環境汚染によって滅びる結果になった。
「この世に美しい風景などいらぬ」と言って、シェムハザ軍が押し寄せて来た時、平和に暮らしていて、争いなどしたことがほとんどなかった人々は、ただ逃げ惑うしかなかった。
アザトゥース、イグ・ハンをはじめとする化け物たちが、海を汚し、空を汚し、人々の住む家に火を放った。
惑星ティアドロップスに、ヴェロニカという少女、そしてアイレスとディアスの兄弟が住んでいた。
3人はティーンエイジャーであった。
なすがまま、死を待つしかなかった。逃げ場所が、どんどん狭くなっていく。
アイレスは剣ができた。ディアスも、同じく剣ができた。だが、惑星ティアドロップスの剣士たちは、みな未知の敵にやられていった。
この世界には魔法など存在しなかった。ただ、シェムハザ軍は、何やら「死生術」と名乗るおかしな技を使ってきた。
「ああ、神様・・・」と、ヴェロニカたちは最後の砦・教会へと逃げ込んだ。
ヴェロニカとアイレスは婚約していた。
アイレスとディアスが、教会の入り口をがれきでふさぎ、入口を封鎖する。
「これで15分は持つだろう」と、ディアスが言った。
「兄さん、ヴェロニカ、最後に大聖母・女神イリス様に祈ろう」と、ディアスが、二人に話しかけた。
「聖なるイリス様、どうかわたくしめたちをお助け下さい、私たちが、最期まで離れることのないように。静かな最期のときをください・・・・」と、ヴェロニカが手を組んで、ステンドグラスの女神に祈る。
「最期の時を!!」と、アイレスとディアスが同時に言った。
と、その時、教会の外から、ガタガタ、と扉を突き破ろうとする恐竜の声がした。アザトゥースだろう。
ヴェロニカがおびえた顔をする。
右手を負傷しているディアスが、「ここまでかよ・・・」と悔しそうに言う。
『強い絆で結ばれた3人よ、そなたたちにリーリアの魔法を授けましょう』と、その時三人の頭上で声がした。
ステンドグラスからだ。
「”リーリアの魔法“だと!?!?」と、アイレス。
『そなたたちならできるはず。心を一つにして・・・』と、女神イリスの声が静かにする。
三人は、手を差し出し、目を閉じた。
「リーリアの魔法」。伝承に伝わる魔法。女神イリス様しか使えないはずの、この世の終わりを意味する魔法。
『さあ、私を信じて、唱えなさい、少年少女よ、リーリア、と』と、女神様の声がした。
「リーリア!!」と、ヴェロニカと、アイレスとディアスが強く叫んだ。
3人の差し出した手に、魔法陣が浮かび上がる。
次に3人が目を覚ましたのは、教会ではなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます