呪いの人形

 これは不要になった日本人形を引き取って貰おうと、リサイクルショップに持って行った結果、自宅が全壊した時の話だ。


「これは……元々は精工な人形のようですが、古くて傷みがあるので査定が下がりますね。買取金額2000円になりますけどよろしいですか?」



 かつてこれをプレゼントしてきた祖母からは高価な人形だと聞かされていたのに…… 思ったより金額がつかず落胆してしまった。


 まぁ、"この娘"は、これまで捨ててもどこにやっても戻ってきた呪いの人形なので、まだ金額つくだけ充分なのかも知れない。


なんなら今ここで売り飛ばしても家に戻ってくる恐れすらある。

2000円で何回も売れると考えれば、呪いどころかお小遣いが稼げて得な気すらするが……



 どうしたものかと悩んでいると、怪しげな男が声をかけて来た。

「あのー もしよければその人形、私に譲って頂けないでしょうか?」


男は万円札を数枚取り出すと「謝礼はこちらでいかがですか」と聞いてくる。

迷うまでもない。私は二つ返事で人形を引き渡した。







 数日後、男がテレビに出ていた。どうやら宇宙開発に関わる偉い人だったらしい。


「どうりで金払いがいいはずである」と私は勝手に得心した。



男は「必ず地球に帰ってくると思われるいい探査機が手に入ったんですよッ!!」


と、嬉しそうに私が売った人形を、ロケットと分離する前の探査船の壁面に埋め込んでいる。


外装に埋め込まれて青白い顔だけが露出しており、もはや原形をとどめていない。

一応元はプレゼントなので、さすがにこの扱いは良い気がしない。



 私はクレームを入れる為、男に連絡を取った。

「お金は戻すのですぐに人形返してください」





が、ふと気づく。"あの状態"でこちらに戻ってくる可能性は?


寒気が走った。


気づきたくなかったが、私が自宅から逃げようとした時にはもう手遅れらしかった。


空気の振動で窓ガラスがカタカタと揺れている。






「何か来た」




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