第21話 逮捕の瞬間

病院から帰宅した途端に、ドアベルが鳴り響いた。私は驚いて玄関に向かい、ドアを開けると、警察官が数名立っていた。


「佐伯直人さん、少しお話を伺いたいのですが、よろしいでしょうか?」一人の警察官が丁寧に言った。


直人は驚いた表情で立ち上がった。「もちろんです。何があったのですか?」


「健太君の体内から異常な物質が検出されました。これについて詳しく調査するために、あなたにご同行願います。」警察官は落ち着いた声で言った。


直人は困惑しながらも、警察官に従うことを決めた。


私は心臓が激しく鼓動していた。計画が思わぬ方向に進み、直人が疑われるなんて。これは私にとっても予期せぬ展開だった。しかし、ここで感情を表に出してはいけない。私は冷静を装い続ける必要があった。


「直人、何か必要なものがあったら言ってね。私ができる限りのことをするわ。」私は彼に微笑みかけた。


「ありがとう、美香。健太のことを頼む。」直人は私に向かって深く頷いた。


警察官は直人を連行し、私はその後ろ姿を見送りながら、心の中で複雑な感情が渦巻いていた。直人が逮捕されることで、計画が完遂する可能性もあるが、それによって家庭内の絆が完全に崩れる危険性もあった。


数時間後、家に戻ると、私は一人リビングで考え込んでいた。警察の捜査が進む中で、私の行動がさらに注目されることになる。直人が無実であることを証明するためには、私自身が疑われないようにしなければならない。


その夜、子供たちが寝静まった後、私は再び計画を見直した。直人が逮捕されている間に、どのようにして健太の存在を排除し、翔太を跡取りにするか。心の中で罪悪感と冷酷さが交錯する。


突然、電話が鳴り響いた。私は驚きながら受話器を取り、耳に当てた。


「もしもし、神谷美香です。」


「美香さん、関田です。直人さんが逮捕されたと聞きました。これは一体どういうことですか?」関田の声には緊張が滲んでいた。


「関田さん、警察が健太の体内から異常な物質を検出したんです。それで直人が疑われてしまいました。」私は冷静を装いながら答えた。


「そうですか…何か手助けできることがあれば言ってください。私は直人さんの無実を証明するために協力します。」関田は力強く言った。


「ありがとうございます。私もできる限りのことをします。」私は感謝の気持ちを込めて答えた。


直人が逮捕され、家庭内の緊張が一気に高まる中、美香は次の一手を考える。真実が暴かれる瞬間が近づく中で、彼女は冷静さを保ち続けることができるのか。

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