自殺ゲーム

岸亜里沙

自殺ゲーム

俺は小学生の頃から、友達ダチ一馬かずまと共に自殺ゲームと名付けた遊びをしていた。

お互い一人ずつ同級生を選び、そいつを自殺させたら勝ちというものだ。

俺が初めて自殺をさせたAには、毎日のように様々な暴言を浴びせ、無理矢理全裸になるよう強要したりもした。

今となってはかなり問題にもなるだろうが、一昔前はいじめなど知らぬ存ぜぬでまかり通っていたのも事実。

実際、学校では優等生の仮面を被っていた俺と一馬かずまを疑う者は、親や先生せんこう含め、誰一人いなかった。

そもそも学校側も、いじめの有無を調査している暇もないので、生徒指導の改善をするなど聞こえの良い事を述べ、自殺を有耶無耶うやむやにするのがお決まりだ。


小学校時代は、一馬かずまが一人を自殺に追い込み、一馬かずまに軍配が上がったが、中学校時代には俺が巻き返す。二人を自殺させ、通算成績で一馬かずまを逆転した。

その後、高校時代にはお互いに一人ずつを自殺させる事に成功し、通算で俺の三勝二敗だ。

大学は、お互い別の大学に進学した為、この自殺ゲームは俺の勝利で幕を下ろすはずだったのだが、この前、一馬かずまから突然の電話があった。


「よお純平じゅんぺい、元気か?そっちの大学はどうよ?」

一馬かずまが俺に聞いてきた。


「ぶっちゃけ退屈だな。可愛いも全然いないしな」

そう言って俺は笑う。


「お前の理想が高すぎるんじゃねか?」

一馬かずまも笑っていた。


「ところでよ、あの自殺ゲームってどうなった?」

急に一馬かずまが聞いてきた。


「ああ、あれは俺の勝ちだろ?三勝二敗だからな」

俺は誇らしげに答える。


「そうか。そうだったよな・・・」

一馬かずまはポツリと呟く。


「なんだ、どうしたんだよ?」

俺は一馬かずまたずねる。


「実はよ、今、俺が大学でいじめを受けてんだよ。情けねえよな」


「マジかよ?相手は誰だ?」


「同じ大学の先輩だ。柔道をやってただけあって、体格がたいはいいから、力じゃ敵わねえしな」


「大学に通報したらどうだ?なんか対応してくれるんじゃねえか?」


「どうだろうな。だけど先輩の報復が怖くて・・・」


「ならよ、俺がその先輩を自殺させてやるよ。そうすりゃ、もう何も問題はなくなるな」


「考えたんだけどよ、これって俺たちが今までしてきた事の罰じゃねえかなって。因果応報ってやつ」


「何言ってんだよ、一馬かずま


「最近さ、俺がいじめられるようになってから毎晩のように、俺が二人が、窓から覗いているんだよ。不気味に笑いながらな」


「そんなの気のせいだ。それに、お前が殺したんじゃないだろ?」


純平じゃんぺい、俺たちは間違っていたんだ。俺はいじめられて、ようやくいじめられる苦しさを知った。あいつらも、こんな悔しい思いをしてたんだな」


「やめろ。そんな話は聞きたくねえよ」


「なあ、窓の外を見てみろよ。お前が奴らがきっと覗いてるぜ。あっ、くそ。また俺の所にも・・・あいつらが」


「おい、一馬かずまっ」


その時、窓の外で不協和音のような耳障りな物音がし、俺は携帯電話ケータイを床に落とした。落とした衝撃で一馬かずまとの通話は切れた。

そして見知らぬアドレスから、謎のメールが届く。

メールの文章は、短い内容で『お前に殺された。償え』とだけ書かれていた。


「違う。俺じゃない・・・・・・」




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