第9話 必死
「うわぁぁぁぁ!!!!」
オークは勝ち誇った薄ら笑いを浮かべながら棍棒を大きく振りかぶって、俺の頭目掛けて振り下ろした。
パァンッ!!!!
俺の頭に振り下ろされたオークの棍棒の方が粉々に砕け散った。
痛みは‥‥‥全くない。
さっきまでの痛みも‥‥‥何故か消え去った?
オークは困惑しているようだ。
それ以上に俺は困惑していたが。
「「‥‥‥‥‥‥??」」
沈黙が流れた。どちらも状況が掴めていない。
「! ブヒィィィ!!」
オークが殴りつけてくる。
ビビった俺は目を瞑り両腕で顔を覆い隠す。
「ギャアァァァ!!!」
叫んだのは‥‥‥オークの方だった。
俺の方はというとまたもや痛くもなんともない。
‥‥‥? なんで?
オークは俺を殴りつけてきた拳が痛いみたいで手を押さえて悶絶している。
何が起きているんだ?
なんか力が湧いてきているような気もするが。
さっきまでより身体も軽い気もするし。
俺の方からオークに近づくとそれに気づいたオークは後退りをした。完全に恐れられてるな。
「ブヒィィィ!!」
オークは俺に背中を向けて走って逃げ出した。
ちょ、待てよ。と足に力を入れた瞬間‥‥‥風景が流れ、逃げたオークを追い越してしまった。
「!?!? ブヒィブヒィ!!!!」
追い越されて困惑気味のオークが再び殴りつけてきた。
あれ? さっきは目を瞑ってたからわかんなかったけど、こんなにスローだったのか?
これなら俺でも簡単にカウンターを入れられるじゃないか。
せーのっ!! パァンッ!!!!
俺の拳が当たると炸裂音と共に弾け飛んだ‥‥‥オークのあの巨体が。
まるで爆発魔法でも食らったかのように。
「‥‥‥?」
その後キラキラが始まった。モンスターは死ぬとキラキラ光って消滅していく。それでみんなこの現象をキラキラと呼ぶのだが。
オークの肉がドロップされた。
大きいな。
そうだ、荷物! さっきの場所に戻って散らばった荷物を回収していく。しかしポーションの瓶は割れていなかった。
え? じゃあ何が割れたんだ?
確認するとズボンの股間部分が濡れている。うわぁ‥‥‥、恥ずかしいよな。
でもお漏らし‥‥‥じゃない?
ポケットを漁ると飛竜の糞ポーションが割れていた。これでズボンが濡れたのか。
ていうか、クッサ!!!
臭えぇぇぇぇ!!
これなら俺の尿の方が千倍マシだわ。お漏らしした方が良かったわ。洗って臭い取れるかなぁ? おぇぇ‥‥‥。
そんなことに気を取られていたらもう夕暮れだ。あと数分で日が沈み夜になってしまう。急いで帰らないと。
走ろうとした瞬間、また背景が流れるようになった。
そこでようやく理解した、これは俺が凄いスピードで走っているからなのだと。
歩いたら数時間はかかるであろう街の門の前まで日が沈み切る前に着いた。
そこで急に身体が重くなる、というより元に戻った。これはもしかしてあの薬の効果だったのか?
「ギャアアア!!!!」
途端、全身に痛みが走る。ほんの少し動かしただけでも全身に針を刺されたような激痛が襲ってきた。
う、動けない‥‥‥!
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