第31話:姉さん、ネットに毒されエロゲに凝る
僕がニコニコ動画にハマッていた中学1年生の頃、姉さんも同じようにニコニコ動画にハマり、ニコニコで流行っているミームの元ネタを漁りだした。姉さんが特にハマッたのは、東方Projectだった。原作にまで手を出したのだから、本物だと思う。
他にも、ニコニコ黎明期のネタを彼女は網羅していた。他にも当時のネットスラング、やや古いネットスラングまで網羅している。
姉さんが元気なときは、ネットのネタを口頭で擦るようになっていた。同時に重度のアニオタになっていた。その影響を受けて、僕もアニオタになりラノベを読むようにもなった。
ある日、姉さんの部屋に入ると「ノックキボンヌ」とか言い始めて、この人はもうダメだと思った。仕方がないからノッてやるかと、僕も古のネットスラングというか、2ちゃんねる用語で返す。
「今北産業」
「次に買う、エロゲを探し、悶々と」
「三行というか五七五やんけ」
「へへへ」
ネット文化に染まり切るとほぼ同時に、姉さんはエロゲを遊ぶようになっていた。「ランス4」「鬼畜王ランス」「D+VINE」など、昔のエロゲにも手を出していたから本物のエロゲオタクである。しかも、ゲームシステムが凝っているタイプのエロゲを好んでいた。
当時のネット文化に触れるということは、エロゲ文化の一端にも触れるということと同義と言っても差し支えなかったから、深堀り体質の姉さんは見事にハマッてしまったのだろう。深夜アニメについても、そういうことなのかもしれない。
「今度二人でとらのあな行こうね~」
「僕18禁コーナー入れんやろ」
「二人羽織で入ればなんとか!」
「無理がありすぎる!」
「やだやだ! ヒロくんとエロ同人漁りたい!」
「こん変態が! あと5年待て」
当時の元気なときの僕らは、だいたいこんな感じだ。僕のツッコミも、小学生の頃より鋭利になった。姉さんの変態発言も一定のレベルを上回るようになり、僕は笑いながらツッコミを入れるのが定番になっていた。
「でもとらのあなは行こうね」
「健全コーナーならね」
「お、触手病棟面白そう」
「どう考えても抜きゲーやん」
「私は抜きゲーでも構わん……そこにエロスがあればよか」
触手病棟は、ディーゼルマインというサークルが2008年に出した同人エロゲだ。まだ同人エロゲがそこまで流行していない時代に、商業だけでなく同人にまで手を広げていたとは。当時の僕は当然気がついていなかったが、今思えばオタクが過ぎる。抜きゲーなどの用語は、当時の僕も姉さんのせいでわかるようになってしまっていたが。
ただ、僕は小学生の頃からネットに侵食されている人間だから、姉さんの影響がなくとも遅かれ早かれ毒されていただろう。
「エロスとメロスって似てない?」
「頼むから誰かに怒られてくれ」
「君にならご褒美」
「というかメロス好きすぎやろ、何年続けてんねんそのネタ」
ネットスラングもアニメネタもよく擦る姉さんだが、恐らく一番長く擦り続けていたのはメロスだった。
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