第20話:鈴ちゃんは中学生

 僕が小学5年生になった春、鈴ちゃんが中学生になった。中学の制服に身を包んで、いつものベンチに姉さんと制服コンビで現れた。一回転してから、「どう? かわいかろ?」とドヤ顔をする鈴ちゃんは、だんだん姉さんに似てきたようだった。


「ばりかわいい」

「私は私は?」

「ばりかわいい」

「いえーい!」


 二人がハイタッチしている。本当に仲が良いな。中学生になっても、そういうところは変わらないらしい。僕はなんだか安心して、笑った。鈴ちゃんは僕の頭をポンポンと優しく叩きながら、「ヒロくんはまだガキンチョやね」と笑う。


「中学生になったからって!」

「はっはっはー! 悔しい? ねえ悔しい?」

「いい性格してるなあ、我が妹ながら」

「くそう」


 鈴ちゃんは、満面の笑みをしていた。鈴ちゃんは僕をよく煽る。年が一番近いということもあるんだろう。なぜかよく対抗心を燃やされたし、僕に対して勝ち負けにこだわる。年齢差というどうしようもない部分で、彼女は勝ち誇っていた。


 僕は少し悔しかった。姉さんや鈴ちゃんとの年齢差を少し、気にしていたから。僕がもっと大人なら、もっと強ければと。そうしたら、みんなともっと多くの時間を一緒にいられるのかもしれない、と。


「はっはっはー! セブンイレブン!」

「いい気分!」

「やっぱり姉さんに似てきた?」

「に、似てない! 多分……」


 絶対に似てきた。こういうしょうもないギャグは、姉さんがよくやるんだ。事実、セブンイレブンと言った鈴ちゃんに続いて、姉さんがいい気分と言ったことだし。二人はニヘラと笑い合った後、僕を見た。


「セブン!」

「イレブン!」


 言え、という無言の圧を二人から感じる。


「いい気分!」


 言った後、僕は盛大にため息をついた。


 なお、小学5年生の頃の日記は全て紛失してしまった。小学6年生の頃の日記も、一部紛失している。


 この日だけは、小学4年生の頃の日記の続きにあったが……。


 今思えば、僕らは少なからず互いに影響を与え合っていた。全員が、全員に段々と似てきていたんだ。僕も姉さんに似てきた部分があったし、鈴ちゃんに似てきた部分もあった。藍ちゃんは、なんか少しずつ僕に似てきたように思う。


 それほど、とても仲が良かった。

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