第8話 知らない

「お仕事行ってきますね」

僕の家でシャワーを終えた優は、ビシッと黒いスーツに紺色のネクタイでキメて、玄関のドアを出ていこうとしていた。

「……優の仕事ってさ」

「はい?」

そんな優に、僕は話かけた。

話かけた瞬間、悪いことをしたと思う。

「どういう所?」


優はキョトンとしていた。

「え、知りませんでしたっけ」


「知らないけど……」


優は仕事用のスーツだけ、僕の部屋に置いていく。

スーツを着る前は必ずシャワーを浴びるのだが、それがいつも僕の家で、いつも不思議でしかない。

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