死神は女子高生(極楽荘の賛劇)

猫野 尻尾

第1話:4時2分56秒に訪ねてきた女子高生。

俺は大学生、で歳は22歳。

以前住んでいた土地からより大学に近い土地に引っ越して来た。

知り合いのツテで家賃が激安の一軒のアパートを紹介してもらった。

激安だから訳ありかもしれないぞって言われた。


家賃が高いマンションなんかに住めるご身分でもないし・・・。

バイトから帰って来たら寝るだけのために高額は出せないだろ?

ボロくても雨風さえ凌げたらそれでよかった。


俺が尋ねたそのアパートの名前は「極楽荘ごくらくそう

その極楽荘は街中に建っていた。

街中に建っていたのは昔、映画館だったんだろうなって分かる風情の

佇まいだったからだ。

それをアパートとして改築したんだろう。


ここは基本独身しか賃貸は受け付けていないから女人禁制、男子禁制。

だから、女の子なんか連れ込んじゃダメみたいだ。

まあ、今のところ俺に女っ気はないから関係ないけどな。


管理人さんの説明によると、建物自体は二階建だが住居は一階だけで

二階は物置になってるんだそうだ。


部屋が全部で6部屋・・・入り口から見て通路を分けて左側が俺の部屋。

そして俺の部屋のすぐ横が女性で、その向こうが男性、その向こうの部屋に

売れないピン芸人さんが住んでいるらしい。


で俺の部屋の向かいが浪人生。

浪人生の横の部屋が、どこかの芸能事務所が借りてるんだそうで、芸能事務所

が借りてる部屋の横の部屋は今は空き部屋になってるんだそうだ。


極楽荘にはそんな住人たちが住んでいる。

とくに不満があったわけじゃないから俺はこのアパートに住むことに決めた。


そして極楽荘に引っ越して間もなくのことだった・・・夜中って言うか

もう朝方に近かったか。

俺は浅い眠りの中うつらうつらしていた・・・そしたら玄関のドアをドンドン

叩くやつがいる。

その音で目は覚めたが俺が起きないでいたら誰か知らないが、しつこく

何度もドアを叩きやがった。


「え〜いやめろ・・・ドアが壊れるよ・・・誰だよ、こんな夜中に」

「そんなにドンドン叩いたら隣や向かいに迷惑だろうが?」


で、時計を見たら、4時2分56秒だった。


4256・・・死にごろ?・・・って読めなくもない。


そのまま居留守を使おうと思った。

出ないと、ドアを壊されそうだったから、しぶしぶ起きてドアスコープを覗いたら

外に女子高生がひとり立ってるじゃないか。

女子高生が訪ねて来てるのに眠くても無視するわけにはいかないだろ。

しかも可愛いと来たらなおさらだ。


鼻の下が伸びたままドアを開けてあげた。


「こんな夜中になにか?」


「どうも、夜分すいません・・・こんにちんこ」


「ちんこ?」


「こちら井戸川 万平いとかわ まんぺいさんのお宅で間違いでしょか?」


「間違いないでしょうか?・・・じゃないの?、日本語おかしいよ」

「で、万平は俺ですけど・・・なにか?」

「用事があるなら早くしてくれる?ここ女子の連れ込みは禁止なんだよね・・・」

「そんなところに立って誰かに見られたら誤解されるから、とにかく中に入って」


「では失礼しますぅ」


俺は周りを確かめて、その子を部屋に入れた。

部屋の中に入って来た女子高生は見るから、おぼこいし未成年っぽい。

だけど制服着てるからって女子高生とは限らない。

もしかたらコスプレーヤーかもしれないし・・・。


ん〜俺の記憶を辿っても憶えのない女の子。

行きつけのたこ焼き屋のバイトの美幸ちゃんとも違う・・・うん、美幸ちゃん

とは顔が違うからね、目をつむってても匂いで分かるわ。

もしどこかで出会ってたらこんな可愛い子、俺が忘れる訳ないんだよ。


はて?・・・いくら考えても思い当たる節のない・・・。


「あの、なにかの集金?」


「集金と言えばそのようなもんかもぉ」


つづく。


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