第50話 「「大量ゲット♪ 一攫千金♪」」
「——うお!? マジか!!」
「——ッえ!? なになに? 見せて見せて! ……おう! ぶっすり!!」
さすがの僕も驚いた。若干の抵抗はあったものの、僕の神器である【
「——ッ!? おぉ〜〜♪ 面白〜〜い!」
試しに、刃の向きと平行して力を加えてみる。すると【虚】は少しずつ動き鉱石を切る。それは熱したナイフをバターに突き刺したような感覚だった。
「ほら! ヴェルテ、お前もやってみろ!」
「……え?! いいの?」
「おうよ! じゃんじゃん、鉱石を掻き集めろ!」
「——うん! 分かった!!」
そして、一連の動作を羨ましそうに眺めていたヴェルテに、僕は影の中から【
この時、僕は気づいてしまったんだ。僕の神器は青魔法石を壊せる。いや斬れることに……
だって、思い返してみてくれ……
僕は人生で青魔法石の加工品を見たのは2回だ。
授業で使っている魔法の試し撃ち用の的と……
そして、もう1つがアイリス嬢特注の片刃の刀剣——
それで、おさらいだが——青魔法石とは……硬く魔力を吸収する性質を持った魔力そのものと言っても過言ではない鉱石。そして、まず壊れないと見ていい代物だ。それがだ——僕は、人生で見た2種類の加工品、その双方が壊れた瞬間を見てしまっている。てか、僕が壊したんだけどね。
その結果を生んだのが……僕の持つ魔力の性質『
『影』の魔力は、青魔法石と同じく魔力の吸収を性質として持っている。そして青魔法石は吸収する性質があると同時にほぼ魔力そのもの。
僕の『影』の魔力吸収が、青魔法石の魔力吸収効果を上回り、魔力を吸うことで、まるで物体を溶かしてしまうように、壊してしまう。
だが、そうとわかれば……話は早い。
僕は神器にアイリス嬢の刀剣を折った時のように、自身の魔力を武器に流し纏わせる魔技【魔装】を使いコーティング——こうすることで、武器は『影』の魔力の性質を付与したことになり、刀身は魔力を吸収する。
よって……
突き立てた僕の神器は、青魔法石を溶かし、切断することに成功した——というわけだ。
「鉱石〜鉱石〜大量ゲット!」
「……鉱石〜鉱石〜大量ゲット!」
後の僕は、もう有頂天で無我夢中に鉱石漁りに没頭した。
「売却〜売却〜一攫千金♪」
「……売却〜売却〜一攫千金♪」
この時の心境を歌にしながらね。僕が歌えば、そのリズムに合わせてヴェルテも一緒に歌う。2人して小躍りするように鉱石を漁っていた。ついつい年甲斐もなくはしゃいでしまったよ。
……え? 年寄り臭い?
はは……何を馬鹿なことを……
僕はもう15歳だ。学業には専念しているが、1人で生きていくための下地を作らなくてはいけない歳だよ。田舎を飛び出してきてしまった手前もある。だから、こうして一生懸命に金を稼いでいるわけだからな。
「……売却〜売却〜一攫せん……き……ん? ねぇねぇ、一攫千金ってなに?」
「……あん? それは、まぁ〜〜……お肉が、いっぱい食べれるってことだ!」
「——お肉がいっぱい!? お腹いっ〜〜ぱい食べれるの!?」
「ああ、お肉食べ放題だ!」
「——食べ放題!!」
「霜降り肉だっていけちゃうぞぉ〜〜!」
「わぁ〜い霜降り! 私、赤身の方が好き!!」
テンションと言葉がミスマッチ——会話が、な〜んか噛み合ってないが、まぁ〜この子はいいや……こういうモノだと思っておこう。彼女も僕と同級生なら年齢も同じはずだが、これが獣人クオリティーなんだと思っておこう。この子の将来は心配だけどな。
そして今回、ヴェルテには手伝ってくれたことと、口止め料を加味して報酬は山分けだ。ただ、一気に売り払うことはできないから、一部は仕舞い込んでおかなくてはいけない。その点は彼女から理解をもらって、納得してもらおう。
ヴェルテなら大丈夫。きっと秘密は守ってくれると思うよ。もしものときは、口に肉でも突っ込めば問題ない。うん。
「ふう〜〜♪ いっぱい集めた! お肉いっぱい……ジュルリ……」
「おい、齧るなよ。これはまだ肉じゃないぞ?」
さて、数十分にわたって青魔法石を集めたわけだが手頃サイズにカットして、目の前には鉱石のブロックが山となって積まれている。
ざっくり見積もって10キロぐらい——まぁ、これだけ集めれば十分だろう。
僕の予想が正しければ、これで金貨200枚分——ジュルリ……グヘヘ、ヨダレが止まらないぜ!
「う〜〜ん?! ウィルも齧っちゃ駄目だよ?」
おっと、僕としたことが……少し我を忘れてしまったようだ。ヴェルテにこう言われてしまうとは不覚——!
「ところで……これどうやってもって帰るの?」
さて、ここでヴェルテが思った疑問を口にしてくる。
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