けもじなばなし

真冬野

第1話 真っ黒な丸いカタマリ


本当に私、見たんです…。



その日、深夜の閉店後のバーで、


知り合い達と私と、4人で、


怪談話をしてたんです。



聞いた怖い話を出し合ったりとか、

心霊写真を見せ合ったり。



オレンジの電気の真下を

バスケットボールくらいの大きさの

真っ黒な丸いのが


尻尾をU字にひきながら

ブルン!と飛んで


キッチンに入って行きました。



その直後、キッチンからものが落ちる音がして…。


全員で見たはずなのに、キッチンには何も居ない。


ハープの形の風に揺れる飾りが、

窓のない、風もない店内でゆらゆら揺れているだけ。


その日は全員、急いで店を出ました。


次の日、店長から連絡がありました。


「バイトの子に言われたんだよ、

『店長!昨日、なにかしましたか!?なんか、黒いのが、たくさんいます!』」



結局、よくわからないまま。



でも後日、この話を面白いと思って、違うお店でみんなに聞かせたんですよね。



不思議だね〜くらいで終わろうとしてたその時、

1人の子が、



「信じるし、その話、あんまりしない方がいいかも」


って、真剣な顔で言うんです。



「だって、この話が始まった途端、窓にたくさん、集まってきてるよ

真っ黒な丸いカタマリ…。」



まさか、

深夜に怖い話をすること自体が、降霊術になるなんて、知りませんでした。



ほら、あなたの後ろにも、


黒いナニカ、


集まってきていませんか?

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