第3楽章
第15話 出口
応接室の柱時計が
コツコツコツと時を刻んでいた。
テーブルを挟んだソファーには
平原と六条、
そして松平と菅野がそれぞれ並んで座っていた。
西岡は少し離れたところで
壁に背を持たせて立っていた。
重く暗い空気が部屋を支配していた。
「・・どうしましたか?」
車椅子の塚本が僕の隣にやってきて
小声で囁いた。
僕はできるだけ驚かせないように
2階で見つけた死体について説明した。
少女は一瞬、
驚いた表情を浮かべたものの
取り乱すことなく冷静に僕の話を聞いていた。
「・・そうですか。
お話はわかりました。
・・それで。
出口の方は見つかりましたか?」
これ以上彼女を心配させないように
どう話すか迷っていると、
「2階は廊下に中庭が臨める窓があるだけで、
各部屋には
外に繋がる窓や出入り口はなかったわ」
と僕達の様子に気付いた菅野が
あっけらかんと事実を説明した。
それを聞いた時、
僕はあの鬱蒼と茂った森のことを思い出した。
「あの・・。
2階の窓から見た時、
森の先はどうなっていましたか?」
「見える範囲では森が続いていたわ。
まさかあの森から逃げるとでも言いたいの?」
菅野が「無理無理」と首を振った。
「森に入って建物の外壁に沿って
回り込めないのか?」
松平が僕が考えていたことを口にした。
「多分、無理だろうな」
答えたのは西岡だった。
「すべてを考慮した結果、
こんな辺鄙な場所に
こんなわけのわからない建物を
建てたんだろう。
森に入るのは危険すぎるぜ」
それを聞いた松平は「チッ」と舌打ちをして
バンッとテーブルを叩いた。
「それで。
1階はどうだったんだい?」
これまで黙っていた平原が話を促した。
「1階も同じようなもんだ。
どの部屋にも窓はない。
ただし。
一番奥の部屋だけは
鍵がかかって入れなかった」
「ちなみに。
そのドアは鉄製で壊すことは不可能。
ついでに言うと。
廊下の壁や部屋の壁。
この建物の壁はすべてコンクリートだ。
ぶち破って脱出するのも無理だな」
松平の発言を西岡が補足した。
「ここから出る術はないということですか・・」
両手で自分の体をギュッと抱きしめた塚本が
小さく震えていた。
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