第4話 ペンション?
煉瓦で舗装された
緩やかな上りのスロープの外側には
芝が綺麗に敷かれていた。
静寂の中、
小鳥の囀りと虫の鳴き声だけが
この世界をささやかながら賑わせていた。
日常生活から離れた別世界に来たことを
はっきりと意識させられた。
自然とテンションが上がった。
視線の先に見える建物は
一風変わったデザインだった。
正面から見るとソレは底辺の長い
L字型をしていた。
恐らく建物の左側だけが
2階建てになっているのだ。
近づくにつれて
徐々に違和感を抱き始めた。
玄関の前に立ってその違和感の正体を確信した。
建物は無機質なコンクリートの塊だった。
そして。
玄関だけが建物の外壁と比べると新しかった。
門にしてもこの玄関にしても、
そこだけが最近になって造られたようだった。
そういえば門からここまでの
塗装されたスロープも新しかった。
僕は小さく首を捻った。
改めて建物を観察すると
その異様さが際立った。
建物の正面には
丁度中央部分に玄関があるだけで
窓の類は一切見当たらなかった。
そのことがより一層、
見る者に無機質で冷たい印象を与えるのだ。
これがペンション?
敷地を取り囲んでいる高い塀と相まって、
刑務所という言葉が真っ先に頭に浮かんだ。
このペンションの持ち主は
朝臣市の中でも
あえてこの辺鄙な土地を選んで
この奇妙な建物を建てたのだろうか。
そんなことを考えながら
僕は玄関の扉に手を掛けた。
そして大きく深呼吸をしてから
勢いよく開いた。
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