【承】王位継承権
グレモラ・デアノリスが自らの家の異常さに気づいたのは、12歳の頃だった。
父は国王、兄弟は上に4人いた。兄は一子、二子、三子の3人、姉である四子が1人。それぞれ母親が違う異母兄弟で、母親とは物心ついたときには引き剥がされていた。当然ながら末の子であるグレモラの立場は一番低い。それぞれが王位継承の可能性があり、兄弟たちは一つの席を奪い合う競争相手だと教えられてきた。
まだ幼かったグレモラは、兄弟であるのになぜ仲良くできないのか疑問に持っていた。――が、そんな人並みの感情を持っていたのは彼だけだったのだろう。《《姉が毒殺されたその日に、兄たちは本気なのだと思い知らされた。
武力に長けた一子。
経済に対しての嗅覚が鋭い二子。
人心の掌握に長けていた三子。
グレモラは才知に溢れていたが、特に目立ってはいなかった。
姉は
同じ食事の席で、一歩間違えばグレモラが犠牲になっていた可能性もあっただけに、彼はその日から食事を摂るのが怖くなってしまう。従者を毒見役にすればいい、兄弟たちはそうしている、だが優しいグレモラはそうはしなかった。
主に口にするのは、僅かに限られた信用のおける者から受け取った食料のみ。他人のいる場所では、ごくごく少量しか食べなくなり、徐々にやせ衰えていく。
その様子の酷さは、兄たちからは競争相手とは見られなくなり、父親である王からも見放されるのではないか、と従者たちが心配をするほどだった。
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