第1話 無邪気な呪い③
昨夜は妻に相談相手ができたことを伝え、早めに眠りについた。
「佐々木先輩は顔が広いからオカルトに詳しい人物が見つかるはずだ。」
妻を安心させるために吐いた言葉だったが、それは同時に自分を言い聞かせるためでもあった。
昨日よりも心なしか仕事に集中できている。
週末は例の約束がるので、今のうちに仕事を終わらせておく必要がある。
昼過ぎまでは営業先を訪問し、14時からデスクワークを開始する。
15時過ぎに一度スマホを確認すると、妻から5件も不在着信が入っていた。
嫌な予感がしてすぐにかけ直す。
2コールで出た妻はひどく焦っていた。
「どうしよう!ハルトが事故に遭った!」「すぐに広南医療センターに来て!」
背中に冷たい汗を感じながらも妻に問いかける。
「落ち着け!ハルトの容態はどうなんだ!」
電話をしながら帰宅の準備をする。
「わからない!今病院に向かってる!学校の帰りに車にはねられたみたい!」
悲鳴のような声で妻が答える。
「とにかくすぐに向かうから!何かわかったら連絡してくれ!」
電話を切るとすぐに部長に連絡し、早退する許可をもらう。
車をとばして病院に着いたのは30分後。
救急入り口にいた妻に駆け寄り状況を確認する。
結果的にハルトは無事だった。
骨折と額をすりむいて出血している状態。
車にはねられた衝撃で頭部を打ち、意識を失ったようだが幸い検査では異常が見られなかった。
大事をとって今日は1日入院するようで妻が付き添う。
ユウトを迎えに行って世話をするのは私の役目になった。
意識を取り戻したハルトと少し話をして帰宅の準備をする。
帰り際に妻が引き留めてきた。
「ねぇあなた…。ハルトの怪我だけど…。」
妻が言おうとしている事は簡単に予想がつく。
ハルトが骨折したのは左足。
はねられた拍子に打って出血したのは右側頭部。
否が応でも今回の事故を写真にかかったもやと結びつけてしまう。
「ただの偶然かもしれない…。」
私は歯切れの悪い返事をすることしかできなかった。
保育園に迎えに行ったあと、近所のスーパーによって出来合いのおかずを購入する。
夕食を手軽にすまし、ユウトを風呂に入れる。
やはり兄の事故、母がいない状況を不安に感じているようだった。
ユウトを早めに寝かしつけ、私は布団の中で写真のことについて少し考える。
写真でおかしかった部位を怪我した。
そんなベタな心霊現象みたいなことがあるのだろうか?
なぜハルトだけに起こるのか?
この現象はこれで終わってくれるのだろうか?
いくら考えても答えは出ない…。
とりあえず明日一度妻に頼んでハルトの写真を撮ってもらおう。
これで写真に異変がなければひとまず解決だ。
あたまの中がぐちゃぐちゃで眠れる気はしないが、無理やり目を閉じて何も考えないようにした。
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