第80話 KWの初仕事。区別は悪い言葉じゃない。必要だと思う。
草加部は休憩室に戻った。
”こっち側の人間か~”
”KW”
”なんか公安とか工作員とかの世界ってテレビとか小説とか映画とかでは見てるけどピント来ないよな~”
工作員とはと検索してみた。
”自国の利益のために他国や敵対勢力の世論の操作や政策決定への影響力行使を図る。”
公安とはと検索した。
”社会が安らかで秩序が保たれていること。公共の安寧。”
”公安ってこういう意味だったんだ。工作員って見方によってはソシオパス的な感じじゃねえ?”
”どちらかというとこっち側の人間ですよ”
”え!なに?俺はソシオパス的”
”そうなの?”
ソシオパス診断と検索してみた。35問の問題に答えると簡易的ではあるが結果が出る。
結果は平均よりもマイナス5だった。すなわち、平均よりも普通側に5点傾いている。
ソシオパスではない!
草加部はホッとした。今までの改善案は自己中心に偏った考えで周りを巻き込んでいたのかと疑心暗鬼になってしまっていたのだ。
”いや~、これって考え方とか見え方とかで正義は分からないな~、たぶんどっちも正義なんだ。勝った方が官軍。”
”でもさ~嫌がらせを止めさせたい。これだけなんだ。”
”なんで、こんなに複雑になるんだ?”
”ここ最近、ソシオパスのことを考えてたから、なんか頭がおかしい。考え過ぎてしまう。”
”寝る”
草加部は少し眠れた。5分くらいだろうか。気分が全然違う。
”考えない。考えない。”
そして、10月18日(水)4:12分
大森さんの横持ち分の荷物の整理が終わり、中沢さんの到着を待っていた。
トサカ頭のグリミー3号こと能見が積み込みをしていた。今日は急遽、ピンチヒッターで別なホームの担当することになったようだ。
コッコーコーコッ。
草加部はグリミー3号の方に歩いて行った。
静かに話しかけた。
「能見さん、頼みがあるんです。」
「ん、何や」
「こないだ仁田さんが日曜の夜間での仕事の時に、能見さんが出社してくるなり、ゆっくり休めたか?暇だったんだべ!今日なんか荷物なんかこねえだろって言われたらしいんだ。」
「俺、そんなこと言ったの?」
「おそらく、軽い気持ちの挨拶言葉のつもりで言ったんでしょうけど」
「うん、そうだ」
「能見さん、日曜の夜というのは暇なことが前提で一人体制なんです。暇だけど想定外の荷物が入ることがあって、例えば海コンとか土曜に入る予定のものが遅れたとか。その時に対応するために誰かがいなければならないし、たまたまシフトに割り当てされて来ただけなんです。ちなみにその日は満車で1台分は入ってます。あの量を捌くのに一人だと5時間かかります。」
「そんなにかかるのか。知らなかった。」
「5時間。誰がやっても疲れますよね。」
「そうだな。それは疲れるな」
「ゆっくり休めたかは、あまりよろしくないと思います。」
「俺も陰で言われたんだぞ」能見は静かに言った。
「そんなことは分かってますよ。」ナイトワーカーズを舐めるな!
草加部も静かに答えた。
「能見さん、言われて嫌じゃありませんか?」
「嫌だよ」能見の言い方には感情がなかった。
「同じですよ。そういうことでよろしくお願いします。」
そろそろ北日本便が来る。草加部は台車置き場に向かった。
草加部はふと思った。
”今村所長を通さなくてもいいんじゃないか。これからは自分でやるか。だけど、こういう風にできるようになったのは今まで所長が一生懸命にやってくれたからだし、弐零弐肆の力もある。それは忘れちゃだめだ。自分の仕事は自分でやる。”
”自分のことは自分でやる。これが大事だ、自分のことか営業所のことかの区別。”
ついでに、区別と差別の違いも考えた。
「区別」と「差別」の違い
「区別」 は違いをつけるだけでなく、違うものとして扱うことを意味する。
「差別」 は違いがあるとして差をつけて扱うことを意味する。特に不当に低く扱うことを言う。
区別。相手を尊重してその領域に入らないようにすることで、トラブルが減ってきたことは事実だ。
区別することは悪いことではないと思うし、失礼な言葉でもないと思う。仮に自分が区別された場合、嫌だろうか。相手がそうしたくてすることだ。相手を尊重すると思うし、言葉に出されなくても、そう感じたら遠慮すると思う。これが察するということではないだろうか。
『後日、時間があった時にAIに聞いてみた。
人種や民族は区別すると差別になる。
男性と女性の違いでの区別は平等の観点から好ましくはないとの事だった。
職業や専門分野に基づいて人々を区別することは、一般的には失礼ではありません。例えば、医師やエンジニアなどの職業によって人々を分けることは、特定のコミュニケーションや協力の必要性から理解されることがあります。とのことだ。』
だから、線引きがないからトラブルになるんだろう。線引きしても話しぐらいできるでしょう。
”俺の考え方は偏っているだろうか?”
能見も自家用車に向かった。
寝に行ったのだ。
”だから言われてるんだ。なぜ、気づかない?”
グリミー3号こと能見は、人には手伝えというが自分はやらないで寝ている。そして起きた後に今まで仕事をしていたかのように疲れたアピールを振りまく。
だから陰口を言われるのだ。
基本、うちの人達は陰口を言われてない人はいないと思う。
草加部も、
「俺が陰口言われてないわけないだろ。それくらい言わせてやれよ。この歳になって気にならねえよ。俺が悪いんだ、分かってるけど直らないんだ。ごめんね。」
という感じだ。
だけど、業務上のことで仕事をしていないかのような、事実と違う噂を広められるのは違うと思う。
大型トラックが入ってくる音がした。
中沢さんの北日本便が到着した。
ーつづくー
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