2 無性・無産・不死人間の時代(12)

 そんな話を興奮気味に話すユーさんの横顔を見ながら、ミーさんはかつて百年前にこの横顔に恋したことを思い出していました。二十歳のころ、ミーはユーの三番目の、でも一番長くつきあった彼であり彼女でした。もちろん当時二人は、両性人間でしたので。二人の間にできた子供は、二人ともお腹を痛めて交替に生みました。生んだ後は国が育てるので、今どこでどうしているかは一切わかりません。ミーさんとユーさんは、このやすらかな時代に、親、夫婦無しで、いいや家族という概念すら忘却の彼方において、ひとりっきりでずっと穏やかに生きてきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る