第3章 他国の事務次官 No.12

結局、ガストンは姿を見せなかった。しかも、1週間である。

当本人がいないと何が起きたのか詳細が分からない。軍部内では“ガルシア死亡”ということが分かったが、外部的には“行方不明”としか言われておらず、親善大使であるサシル共和国にも伝えられた。

サシル共和国はスパイを送り込んでいるため、当然、怒って抗議をした。だが、ダマスア王国は“行方不明”と言って聞かない。ダマスア王国とサシル共和国の間には戦争しかねないような緊迫感があった。


ーーー同時刻、ダマスア王国


アゼル王視点

俺は椅子に腰掛け、難しい顔で黙っていた。

“しかし、あのガルシアがね……スパイの手紙が言うには大量の血が流れていたという報告が上がっている。果たして、どっちらが正解なのかねぇ?”

俺はスパイからそのことに対して報告を聞き、悩んでいたが、チャンドラのことを思い出し、“妻にこのことを相談しよう”と思い出した。


「遅いんじゃ!」


チャンドラは“プンスカ”怒って、腕組みをして立っていた。


「ゴメン」


俺もこの女王ことチャンドラには敵わない。技術にしても政治にしてもそうだ。しかし、唯一勝っている点がある。それは、暴走する点である。昔、敵から逃げて脱走する時もチャンドラは暴走して敵に突っ込んいこうとしたが、無理矢理引っ張って難を逃れた。

だから、チャンドラが暴走しようものなら。どんな立場でもすぐに止めていかないといけないと心に誓ったのである。


「…まぁ、良い。で、ガルシアの件じゃろ?」


俺は“パッ”と顔が明るくなった。

“分かってやっしゃる!”


「なんじゃ、“分かってやっしゃる!”って言いたいんじゃろ?当たり前じゃ!夫婦としてどれだけ暮らしているんじゃ」


チャンドラは照れ臭さそうに顔を赤らめた。俺もなんだか赤らめて照れ臭そうにしていた。部屋の中に暖かい雰囲気が漂った。


「ん?いかん!いかん!ガルシアのことじゃろ?」


俺は“うんうん”とうなずく。


「結論から言うと、アホか!ガルシアはいきとるわ!」


俺はビックリして声に出してしまった。

なぜならガルシアという人、ロマーノ王国から知っていたが、大量の血を流してまで死なないのか?凄く疑問に思えてきた。


「あの…スパイの手紙を使って調べた所“大量の血を流している模様。死亡は免れない”と書いているんだけど…」


“これって反論?”と思ったが、どうしてもチャンドラの根拠はどこにあるのか?を教えて欲しかった。


「あのスパイは嘘じゃ。もし、仮に倒れても、ほれ?カミルだったかな?その子の可能性があろう?」


“そう、カミルという子。顔が分からないが、素性を調べた所だいたい分かってきた。カミルは反対派の息子で、この事件があった時に死亡した。それで亡命をした訳だ”と俺は思っていたのだが、なぜガルシアに着いていたのかは謎であった。


「……ゴメン。その根拠はどこになるのか?を教えてほしい」

「女の勘じゃ!」


俺はビックリした。

“勘って言われたら、何も言うことはない”


「しかし、何か一悶着を起こしてくるじゃろうと思って派遣したのじゃが、予想の斜め上をいきおった。つくづく恐ろしい男じゃのう」


チャンドラは両手を上げで“まいった”のポーズをした。

“いやいや、あんたの方だから”とツッコミを入れようと思ったが心に止めた。



ーーー1週間後、マルクにて

ー深夜。


マルク城に忍び込みこみ“キョロキョロ”と見渡す。その男はどのルートが良いのかを事前に調べて実行していた。

“巨大なホール”

マルク城名物で巨大なホールを設置して2人を戦わせていたが、王の命令で取り止めになった。

“ガチャン”

そっと開けようとしたが、大きなドアが閉めてありカギがかかっていた。


「よっ!ガストン、話し合おうぜ」


ガルシアは一瞬ビックリしたが、その男を見て薄み笑いをして剣を構えた。


「話し合い?そんな、無駄なことはねーよ。ガルシア!おまえが抵抗するなら切るぞ」


ガストンとガルシア。

この2人は歴史と思える、戦いが切って落とされた。

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