第3章 他国の事務次官 No.2

「遅いですね…」


王国秘書の“ラウル・アルフォンシン”は青筋を立てて、睨んでいた。

もちろん、その先ある二人である。


「すいません…」

「申し訳ないです…」


二人というのは“ガルシア”と“ガストン”だが、二人は正座して、この広い応接間である、客席にしゃがんでいた。


「だいたい、遅刻することは何事ですか?」


ラウルはイライラしながら、足の甲を“バンバン”叩いていた。

“これは、怒りMAXのやつだ…”

そう感じた、ガストンは素直にことの説明をした。


「あの〜ですね…嫌な事務次官の話がいましてね…ガルシアがキレそうになったので、すぐ止めに行ったのですが…思いっきり失神してしまったんです…」

「失神!?」


ラウルはこの世とは思えない顔になった。

“うぁ〜こ、こわい……”

ガストンは目を見開いて硬直してしまった。


「頂けないですね…」

“ピキッピキッピキッ”


ラウルの顔の青筋が又、一つ増えた…

“本当、怖いですって……”

ガルシアは血の気が引いた。


「そ、それでですね…後から説教をして、この応接間をどのようにすれば良いかを白熱して……」

「それで遅れたんですね」


ラウルは“フーッ”とため息をついた。

ガルシアは“もう許しを得たから大丈夫だよな”と思い、そっと正座を解こうとしたが、


「正座は解かない!」


とラウルの顔が凄く怖かったので、すぐ正座してしまった。


「まったく……ちょっと、気が緩んだらコレですよ。後輩には、どういう教育してんですか?」

「いや、今日の主人公です…」


ラウルは立ったまま、目が点になった。


「……マジ??」


再びラウルはガルシアの方に向く。そして、ガストンの方に向き直す。


「これが親善大使(ガルシアのこと)??」

「いや、親善大使ってどこにおんねん!」


ガルシアは思いっきりツッコミを入れた。


「本来なら、すぐ帰っていることが多くて…」


“どおりで、こんなに帰ってしまう訳だ”

ガルシアは少し黙り込む。

“今、見た所、このダマスア王国は検問という検問が多くいて、たとえ親善大使だろうと、金銭を要求してくる。これがプライドの高い貴族が検問したとて、すぐ怒ってしまうのだろう。そして、これがサシル共和国ならなおらだ。

今は同盟関係があるのだが、少しでも文句一つでも言いようものなら、すぐに戦争になりかねない。

だから、いつでも良いようにサシル共和国と関係がない俺が選ばれたのだ(まぁ、立候補ではすぐ手を挙げたのだが……)”


「こほん、エーーーッ……少し予定は狂ったのですが、まずは親善大使も連れてきたのですね。本当におめでとう。ですが、これがゴールではなく、スタートです。ガストンさん、アナタがどうフォローするかで天国でも地獄でもありますから気を締めないよいけませんよ」


“あっ、秘書(ラウル)が持ち直した”俺はその姿を見て“大変だなぁ”と凄く関心した。

“けど、コレ扱いは頂けないなぁ”


再び、ラウルとガストンの会話のやり取りが出てきた。


「我が王は、少しでも時間よりかかっても許されずに、明日に回す予定ができる偉大な方です。だから、明日一番にお会いした時謝りなさい…それと……」


ガストンは俺の腕を“チョンチョン”と指し、手紙を渡す。

俺は“思わずビックリして、周りを見渡す”ガストンとラウルは“怪しまれる!”と思わず険しい顔になった。

ガストンは再びメモが書かれていた手紙を取り出すと“ここを読め”とガストンのジェスチャーで訴えきた。

俺は“仕方がないないぁ”と思い、これを読む。


“ガルシアへ

今、話すべきかどうかを迷ったが俺も腹をくくる。ここ、マルクの城はすべて監視されていると言っても過言ではない。

それぐらい猜疑心の強い男だ。今は騎士の事情も教えたいぐらいだが、そんな時間がない。

だから、今やるだけの要点だけ話す。今の状況からしてダマスア王国とサシル共和国はいつ戦争したくても仕方ない状況だ。だから、これを阻止しなければならない。

明日は王様の皮肉がより一層強くなるはずだ。イラッとするかもしれない、嫌味を言うかもしれない、そして、それに耐えてからこそ真の勇者だ。明後日はカレーを奢ってやるぞ”


それを見た俺は、いつになく目の輝きを放ち元気になってしまった。つまり、ガストンとラウルはカモフラージュで、長時間、説教しては王のことを調べていたのである。

もしくは、本気でカレーを食べたいという理由もある。


だが、カモフラージュで説教をしていた、ラウルでさえ“こいつ大丈夫か!?”と思っていたはずだ。


果たして大丈夫だろうか?

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