第4章 決戦突入No.3

「なんだこりゃ!!」


サリムは槍を片手に大声で叫んでいた。背後にからクバードが追ってきて“バコン”と小突く。


「さっきからウルサイ!敵が出てきたらどうするんだ……なんじゃこりゃ!!」


サリムとクバードの二人は両手を開いて絶句した。ここは砂漠の祠:ガアバの地下中枢。

滝がある所だ。ガルシアはここで一人で敵兵、数十人と対峙していた。

よく見ると男達が倒れ、血の海と化していた。


「……おまえ、これやったんか?」

「アダヤドさん、知らないッスよ!」


サリムは涙目になってコチラに向いた。


「本当か!?なんか、怪しいなぁ」


アダヤドは目を細めて“怪しい”雰囲気を作り、腕組みをする。


「コラッ!冗談言ってないで対象(ガルシア)を探す!」


アイヤールはアダヤドとサリムを小突く。


「イテッ!隊長、痛いじゃないですか!?」


サリムは頭を“ナデナデ”しながら、アイヤールに向いた。


「お前らが冗談ばかり言っているからだ!さっさとせんか!カーセムの隊員達は違う場所で探しているぞ」


アイヤールは急かすような仕草をしていた。


「………」

「どうした?」


アイヤールは“何か当たったのかな?”と少し心配する。なぜなら、クーデターとの争いで少しでも戦力が欲しいからである。こんな所で戦力が減るのは惜しい。


「……だって、血の海ですもん」


アイヤールは一瞬、膝が崩れ落ちそうになった。そして、サリムは凄く嫌そうな顔をした。


「…いっぺん、殴ったろか?」


アイヤールは拳を握り締め“プルプル”と震え出した。


「イエス、ボス!」


サリムは慌てて駆け出した。

”サリムは優秀だ。けれど、優秀ゆえにサボるし、ポカをする。どうしたら上手くいくのか?”とため息をつく。


アイヤールは肩を落とした直後、突然、緊張感が走る。人影が“ムクッ”と起き上がったのだ。


「あぁ!!!悪霊!退散!悪霊!退散!お願い!出てって!」


サリムはどこで覚えたのは知らないが“ブンブン”振り回し後ずさりをする。もちろん、サリムの顔が血の気を引くのが分かる程度で“ガクガク”震えていた。

他にも


「お前は誰だ!」

「あっ、オレパス…」

「ウァチョ〜!!」


などと、どこかの国で流行った拳法という技を繰り出す人もいた。


アイヤールはすぐさま前に進み、剣を構えて声をかける。


「申し訳ない!どなたかな?この状況からして、通りすがりには見えないですが…ハッキリした事情を喋って欲しい」


アイヤールは一件、余裕を見せていたが内面的には余裕ではなかった。むしろ、パニックになっていた。


「…オレだよ。オレ。ガルシアだよ」


そう言ってガルシアは顔の血を拭う。


「あっ、ガルシア!助かって良かったよ」


アイヤールは再会に安堵してガルシアに抱きついたと思ったが、全身の血が飛び散った様子を見て立ち止まった。


「ん?どうしたん?」


ガルシアは二人で抱き合おうとした直後、嫌な予感がした。アイヤールが血で染まるのをためらっていたようだが…


「いや〜(血が)臭そうだなぁと思って…」


アイヤールはすぐに水を浴びれたら、すぐにでも飛びつくだろう。しかし、ここは戦場なのだ。ちょっとの血は拭っても良いが大量の血だったら拭うことができない。


「分かったよ……と見せかけて!」


ガルシアはアイヤールに飛びつく。その瞬間、飛びつくと同時、アイヤールは半歩切り替えてガルシアの胴を剣に振り下ろした。胴は安全とはいえ、ちょっと間違えると命を落としかねない。


「グェ!」


ガルシアはこの世とは思えないぐらい、奇妙な声を発した。


「冗談はよせ。それより、姫様はどこにいった?アゼルは?ここで、詳細を話せ」


穏やかな雰囲気とは一変、アイヤールは少し怒ったように感じた。


「分かったよ。話すよ。どこから、喋っていいかな?俺が…」


上手く話せるのか疑問だが、ガルシアは詳細に話をした。

途中で敵兵を遭遇して逃げたこと

崖に追い詰められたこと

姫様(チャンドラ)が危ないのでアゼル共に逃したこと

俺、一人で敵兵を戦闘し勝利したこと

など、ガルシアは盛りに盛って話をした。


「なるほど…所々、怪しいが大まかな所を見ると正しいだろう…まぁ、姫様なら大丈夫だろう」


アイヤールは“ホッ”と肩を落とした。そして、全員に伝令を伝えた。


「ガルシアの救出を成功とし、改めてサリム共和国の奪還に向かう。そして、これからの戦略はすぐ向かうのか?それとも待機するのか?話し合いたいと思う。それでは撤収!」

「はっ!」


ここにいる全員が一斉に声を上げた。


「サリム!」


全員で帰路に着くと、アイヤールはサリムの姿を見つけてすぐに呼び出した。


「ガルシアの件だが、まだ誰も知らないと思うから走って伝えてくれ。頼んだぞ」


アイヤールは目を輝かせながら肩を叩いた。


「了解致しました!……あの、他の隊員はどこにいるのでしょうか?」


サリムは恐る恐る、質問をする。


「知らん!どこか適当にいるだろう?早急に探してくれ!」


アイヤールは目を輝かせて、サリムの質問に応えた。


「えっ……」


完全、忘れてた…それがあったのだ。その隊長(アイヤール)の鬼畜ぷりが…。

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