ーーサンーー
第6話
眠っていた。気が付けば朝、十時三十二分。
今日もなんとなく調子が悪い。寝る前調子が良くても朝になると高確率で体が重くなる。僕はベッドに寝転びながら天井を見つめている。起きたらティファと二人でカナガワへ移動しなければならない。――ああ、やっぱり、調査なんて面倒くさいなぁ。
僕はタバコが吸いたい、僕は酒を飲みたい。僕は堕落していたい。今ならずっと退屈なままでもいい。自分でも思う、廃人だ、と。
そして、目を瞑って何もなかったことにしようとしたその時。
「陸さん、起きてますか?」
涼香――いや、ティファが僕を呼びに来た。
ティファはもうすでに着替えていて、とっくに出発準備を済ませていた様子だ。
「ねえ、やっぱり、今から依頼を断ることとかはできないの?」
ダメもとでティファに聞いてみた。
「それは、できません」
立ち尽くすティファは僕が完全に起き上がるのを待っている。
「じゃあ、もう少しだけ寝させて」
「ダメです。出発時刻が遅れると到着時刻が遅くなります」
アンドロイドだから時間に厳しいのだろうか。いや、誰でも思うことか。
「じゃあ、起こして―」
僕は仰向けのまま、立ち尽くすティファに向かって両手を広げてみせた。
実に気持ち悪い光景だ。二十八の男が何を赤ちゃんみたいなことやっているのだろう。
ティファはすたすたと僕の目の前にやってきて、「はい」と腕をつかんで僕の体を上へ引っ張る。僕は「よっと」と声を上げ見事に起き上がった。ティファの力は人並み以上にあるようだ。もしかしたら、僕より力があるのかもしれないな。
おっと、ちょっとばかし調子がくるっていたようだ。起きたからにはもう調査をしに行くしかないな。
「わかったよ、行ってやるよ」
僕は気合を入れて準備に取り掛かることにした。
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