第2章 未知の船上No.5

ーー大食堂ホール


「……まったく、災難じゃわい」

「………」


シルバードラゴンが“プンスカ!プンスカ!”怒っているのは全面的に“俺のせい”だと分かっているものの、何故だかそんな気持ちには、これぽっちもなれない…。

それは何故だと言うと全面的に“俺のせい”という訳ではないのだ。


「のう…ガルシアよ。オマエ……本当はお前が悪いと思っとらんやろ?」

「……うん」


それを聞いた瞬間、シルバードラゴンが炎を上げそうになるが、ゼットが咄嗟に構えて詠唱する。


「ウォーター・シールド!!」


水飛沫が怒涛の如く押し寄せ“バッジャーーン”

と勢い良く水がシルバードラゴンに飛び散った……そして、体重ならやや軽いシルバードラゴンはものの見事に吹っ飛び、どうにか部屋の端にテーブルと共に引っかかってしまった。


「何すんじゃボケ!」

「火器は厳禁です」


俺が“何故、全面的に俺のせい”と思っていないのかというと“ゼット”のせいなのだ!

ゼットが“ドラゴンの呼び出しの笛”などと、持ってくるから悪いのだ。


「だったら水がいいのか!?」

「火よりかはマシです!」


シルバードラゴンは“イラッ”とした様子に対し、ゼットはよりマシマシの状態で訴えかけていた。


「お、おう、そういう理由なら仕方ないのう……」


圧倒されたのか、シルバードラゴンはタジロッてしまった…俺はお陰で怒りの感情が“スーーッ”とスッキリしてしまう。


「ゴメンなさいね〜ゼットは“仕事モード”に入っちゃうと容赦ないですぅ」


ピノは男か女か分からない口調で必死に話をする。もちろん、そっちの毛であれば即座に排除するのだが今は要注意人物としてマークしておこう。


「まぁ、ええ…せっかく来たのであれば、ここで話をしよう」


シルバードラゴンは“コホン”と一呼吸をおいた。


「数日前にはモンスター、そして昨日海賊に襲われた」


シルバードラゴンは“淡々”としているが、クロウは海賊に襲われたことは初めて知ったらしく“ウェ!”と驚きを漏らしていた。


「まぁ、クロウには心配かけまいと思ってのう…」


シルバードラゴンは“チラッ”とクロウの顔を見たらしく申し訳ない顔を無言でしてしまった。


「じゃが、ここで2つの仮説が浮かび上がってきたのじゃ。一つ目はコレは嬉しいのじゃが“新大陸はすぐにそこにある可能性が大”ということじゃ」

「え!すぐにそこに新大陸があるの?」


“コイツ、バカか?”という顔でシルバードラゴンはため息をついた。俺もなんだか、恥ずかしい気持ちになり、顔が真っ赤になってしまう。


「当たり前じゃろ?船が破損してみい?すぐに陸に上がるはずじゃ。そこまでバカではない」


“じゃ、バカは俺だけ?”と思って周囲を見渡す。“やはり俺だけのようだ……”ここは賢く黙っておこう。


「もう二つ目は…あまり考えたくもないんじゃが…ほれ、新しいモンスターなんじゃったけ?」

「“シーモンク”」

「シーモンクじゃ!そのシーモンクが海賊に乗っ取られて可能性が高いんじゃ」


“知らなかった……もし、シーモンクのようなモンスターが操られるようであれば新しい戦略を考えないといけない…けど、新大陸だから当然、戦いのリスクが高い。どうする?”と俺は黙りこくってしまった。


「心配はせんでええ。海賊から見れば“新しい人”というのは同じじゃからな」


“パァ”と顔が明るくなった。周囲を見渡すと全員が同じ顔をしていた。


「とはいえ、早めにやった方が良いからのう…ここで提案じゃが、新たな軍隊を作ってみんか?」


“確かにそうだ……バラバラになるのであれば、新しい軍隊を作った方が良い。それこそがリスクを最小限に抑える唯一の道のような気がしてきた……まぁ、一時的な軍隊になるけどな”


「俺は賛成だぜ」


“俺も!”“俺も!”と次々に賛同していた。シルバードラゴンは“うんうん”と頷き、周囲を見渡す。


「よし!早速、新しい名を“ニューフロンティア”とし、最新鋭のモ◯ルスーツを開発するぞい!」

「それ、却下で……」


“さすが!!”と心踊ったクロウだが、ごく一部以外は全力で却下してしまった。

“このご時世、シルバードラゴンとクロウは何故、作ってしまおうとなってしまったのか……頭がおかしいのか?本人しか分からない”

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る