第3章 他国の事務次官 No.9

俺は店の前に立って凄く感動した。

『カレー屋 マルコ』

何度も言うがカレーを求めて旅に出た。時には国のナンバー2に脅されて逃げ回った時もあった。砂漠のクーデターに巻き込まれて争ったこともあった。悔しい気持ちもあっただろう。だが、今この瞬間“今まであった感情は水に流してやる!”と思えるぐらいの感動だ。


「……さっさと入り…」


俺はカミルの言葉を遮った。

“もう少し待ってくれ…”と言うような仕草で無言でジェスチャーをする。そして、思いっきり深呼吸をする。

“スーーーッ”

カレー独特のスパイシーな香がにおう。まさに世界一、いや宇宙一の店だ!……まぁ、これは俺独自の調べだが……。


「行くぞ!」


俺はカミルの白い目を無視しながら、一歩また一歩また近づいていく。


ギギギィ…。


店を開けると“グツグツ”と煮込んだカレーの味がダイレクトに匂ってきた。


「早く行きましょうよ!」


他のお客の白い目を見て焦ったのか、カミルは急いで奥の椅子に着く。


「いらっしゃい。何にします?」


ぶっきらぼうな男の店員はグラスを2つ持って真顔で口にした。一瞬“イラッ”としたが、聖地のカレーの店である。“グッ”と我慢して作り笑いをする。


「どんなカレーあります?」

「カレーはカレーですよ?そうじゃなくて、カレーの辛さはどのくらいにします?という意味ですよ」


店員は“こんなことも知らないの?”と鼻で笑った。

“ピキッピキッ”

“ドゥドゥ……我慢しろ!俺!”


「じゃあ、普通で」

「俺も普通で」

「あいよ」


爆破寸前だった俺は青筋を立てながら我慢して作り笑いをした。それを見たカミルは顔が蒼白になっていた。それを知らない店員は見向きもせずに帰っていった。


「もう少しですよ!あと、少し!」


小さな声で励ましてくれたカミルは涙が出そうになった。そして、ついについに!念願のカレーを拝むことが出来た!

“念願のカレー”

目の前にあるカレーは、白茶のコントラストを出し独特のスパイシーさがお腹を鳴らしていた。俺はすぐにでも、かぶり付きたい衝動を抑えゆっくりとスプーンをすくう。

“カレーのパラダイスや!!”

何度も言おうと!カレーが1番!カレーしか勝たん!それぐらいの感動を表してきた!


ーーー数時間後


どれぐらい時間をかかったのだろうか?俺は無我夢中でカレーの皿を胃袋がパンパンになるぐらい食らっていた。

カミルも“うんうん”と感動をしたのだが、時間が経つにつれて段々蒼白になり、しまいには“もう止めましょうよ”と暴言(?)に似た発言をした。

と、その時である、ぶっきらぼうな店員が俺の前に立ち口にした。


「勘定はいらねーよ」

「へっ?」


俺とカミルは思わずアホな声で発してしまい、しばらくは二人は固まっていた。


「だから、勘定はいらねって!念願のカレーだろ?この食いっぷりを見てたら、こっちが嬉しくなっちまった」


周り店員を見渡してみた。他の客も“うんうん”とうなづいていた。


「だから、心置きなく食べていきな!ただし、次からはお金を頂くぜ」


ぶっきらぼうな店員は満面の笑みでカレー運んでいた。


「なぁ、言いにくかったら言わなくていい。アンタの名前は?」


ぶっきらぼうの店員は一瞬“ウッ”と固まったが、気を取り直し口にした。


「ベルドだ」


俺とベルドの会話が続く。


「?『カレー屋マルコ』って聞くんだけど、どんな関係が?」

「ん?あぁ、アレは兄弟だ。兄貴は少し変わってなぁ。最初は普通の料理人を目指していたんだが、兄貴が“カレー屋しろ!カレー屋しろ!”とうるさいもんだから、少しだけカレーを作ってみたわけよ。そしたら、どっぷりハマってしまって……気がついたら店の店長よ」


俺は唖然としてしまった。

“世の中には狭いものだからなぁ…”そう感じて、カレーの皿を食らい尽くした。

ちなみに俺が帰った後、すぐに店を閉まっていた。

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