第2章 砂漠の姫No.3
「お〜い、新人!こっちに来てくれ!」
「イエッサー」
初めて教えてもらった返事は“イエッサー”だった……なんでやねん!?
“王女チャンドラの一言がなかったら……”毎回の如くため息が漏れる。
では何故、こういう事をしているのかというと“月の神アレス”に会いに行くためである。アレスとは少々……いや、結構変わり者で、守護神でありながらクーデターを焚き付ける…そんな神である。先代王が“なぜ、クーデターの事を焚きつけるか?”と聞いたところ、“だって、平和ばかりで面白くないじゃん!”と言われたそうだ……なんという鬼畜っぷりだ。
そんなアレスに会いに行く。しかも、一年を通して一番暑い月に…。
「おい!新人!何だこれ?」
「えっ板ですけど?」
「おまえ、アホか!!!どこの世界に板で修復するやつおるか!!工具だよ!工具!すぐに取ってこい!」
「イエッサー」
ガルシアはムカつきつつもグッと堪える。だって、こんな砂漠に放り出されたらシンドイもん……。
修復、掃除、操縦の手伝いなど船員は慌しく作業し、夕方が沈む頃にはヘトヘトになっていた。
「作業終了!明日は日の出と共に出発するぞ!」
“やっと終わった……”ガルシアは安堵と共に倒れてしまった。
「おつかれ!砂船の作業はどうだった?」
マッシュことアゼルは満面の笑みで近づいてきた。
「どうもこうもねーよ!こっちとしては疲れてんだよ!」
ガルシアはムカムカしていた。なぜなら、アゼルは王女の護衛付き兵士になり、王女の命令で少しブランクがあったものの補佐がついて一番命令を出せる立場になった。
おそらく、ガルシアも一番キツいところで配置しているのであろう。
「はっはっは!キツいだろ?だって一番キツい配置転換したからなぁ。あと、3日間で目的の洞穴に着く。それまでの辛抱だ」
“コイツ…隠しておけよ”ガルシアはプルプル震え出した。
“どうしたら、コイツ(アゼル)の鼻をへし折ってやろうか…?そうだ!王女の夫になれば良い!夫になればコイツ(アゼル)を馬車馬のように働かせることができる。よし!作戦を練るぞ!”
ガルシアは最初はムカついたものの最後は不敵な笑みを浮かべた。
「気持ちワリーなぁ…まぁ、いいわ。とりあえず頼んだよ」
アゼルはガルシアの様子を見て引いたものの、疲れ具合に対して大丈夫だなぁと確信した。そして、ガルシアの肩を“ポンポン”と叩き、あとにする。
ーーー3日後。
ガルシアの“あなたのことが好きですよ❤︎”作戦が何度も何度も撃沈していった……。
「お〜い!錘を下ろすぞ」
“ドーーン”
錘が地面に叩きつけていった。何故、砂漠なのに錘かというと短時間であれば必要ないが、もし長時間になると風が吹いて動き出し、砂船が動き出すのだ。それを防ぐために錘が必要になる仕組みになっていた。
「前にも話をしたように、ここからは洞穴探索隊になる。王女様どうかお気付けて行って下さい」
この指揮の隊長であるアイヤールが敬礼をした。ここで整理しよう。
洞穴探索隊は“王妃セダ=チャンドラ”“クバード”“サリム”“アゼル”“ガルシア”の5人。他は砂船で待機している。
「うむ」
「あの……言いにくいのですが洞穴なので、くれぐれもガルーダだけは使わないで下さいね。本当にシャレにならないですからね」
「くどい!」
チャンドラはアイヤールの再三の説明に対して苛立ちを覚えた。そして、チャンドラは“スタスタ”と勝手に歩いていた。
「おい!ガルーダって何だ?」
ガルシアは疑問に思ったので、アゼルに聞いてみた。
「ん?あぁ、そういえば知らなかったなぁ。ガルーダって風の精霊なのよ。風の精霊が操ることは王を意味する証。そして風の精霊を操れば洞穴なんか一発で吹き飛ぶ…それぐらい威力があるのよ。しかも王女は歴代の中でも“天才”と呼ばれて技術、センス、そして魔力が飛び抜けていたんだ」
アゼルは熱心に話した。
“チャンドラの事になると、凄く熱くなるなぁ……”
「うるさいぞ!ほれ、さっさと横につかんか!」
「はっ!」
アゼルは急いでチャンドラの横についた。
いよいよ洞穴である。
“仏が出るか蛇が出るか”誰にも分からない。
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