第95話 君たちはなぜこんな所に?

 前方のトンネルの奥、そして後方、私達が来た方向の両側からモンスターの集団が挟撃してきた。

 その数も尋常じゃない。


 後方のモンスターたちは、さっきの側道みたいな洞窟から来たんだろうなと思う。

 ともかく、迂闊ではあったがこうなってしまってはやるしかないよね。

 躊躇する事なく襲ってくる前後のモンスター達。


 「シャルル、伏せろ。」

 「はい!」


 モンスターに向かって風の魔法を纏った横なぎの斬撃を繰り出すルナ様。

 5体を真っ二つにしたところで、すかさずシャルルが火の魔法で残骸を焼却する。

 二人の連携は息もピッタリだ。

 けど……


 「前、数が増えてる?」

 「ああ、そうみたいだな、だけどよ、こっちもだぜ!」

 「き、キリがない……」


 とはいえ、手は止められない。

 モンスターに斬りつけつつも、魔力を練って光の魔法を圧縮して放つ。

 フェスタ―様の助言で作った、もはや普通の魔法じゃない魔法だ。

 群れに飛び込んだ光の魔法は、そのまま爆裂すると10数体のモンスターは塵になって消える。

 強力な魔法だけど、それなりに魔力を消費してしまうので連発は厳しい、かな。

 でも

 増援のペースが尋常じゃない。

 本当にこのままだとキリがない。

 どうしようかと逡巡していると


 「ディーナ!前に行くぞ!」

 「え?ウリエル様?」

 「こっちは放っとけ、急げ!」

 「?? は、はい!」


 後方のモンスター集団を無視し、ウリエル様に従って前方のシャルルとルナ様に合流する。

 こっちはこっちで一時は半分以下まで数を減らしたけど、やはり増援がなだれ込んできている。


 「おお、来たか。」

 「ああ、こっちに集中しようぜ。」

 「で、でもウリエル様、後ろ、迫ってきてますけど!?」

 「大丈夫だろ。任せときゃいい。」

 「へ?」

 「誰に?というか、何を?」


 その途端、入口方面の群れの、最後尾だろうか。

 まばゆい光の後に激しい衝撃がやってきた。


 「え?え?」

 「気にすんな、こっちを片づけるぞ。」

 「え、は、はい!」


 ひとまず目の前の群れを殲滅する。

 4人なら4、50体程度のモンスターは何とかなる!

 そうして、10分程で前方のモンスターは一掃できた。

 あとは後ろ……は?


 「う、うそ……」

 「1体も、いない?」

 「ぜ、全滅させたの!?」

 「え?何が、というか誰が?」


 と、誰かがこっちに歩いてくる。

 暗くてよく見えないけど……二人?


 「いやいや、お前達、かなり強くなったな。」


 と、突然背後に誰かが現れ、そんな事を言った。

 これって……


 「ア、アズライール様?」

 「て、てめぇだったのか!」

 「い、いつの間に!?」

 「ルナ、ウリエル、すまんな、遅れた。」

 「な、何を?」

 「ほッほッほッ、大したもんじゃな。やはり強いの、お前ら。」

 「だ、誰だてめぇ!」


 知らないおじいさんまで!

 え、何?何が起こってるの?

 と、歩いてくる二人が見える様になってきた。

 その姿は……


 「カ、カルロ!?」

 「え?ウソ!?」


 い、いや、違う。似てるようだけど、よく見ると全然ちがった。

 でも、まだ少年、だよね……


 「カルロ?だれだそりゃ?」

 「てか、ねぇちゃん達スゲエな。」

 「き、君たちは?」

 「俺らはそこのじいちゃんに騙されて連れてこられたんだよ。」

 「こんな大仕事だとは思わなかったぜ。」

 「へ?」


 何が何やら、まったくわからない……

 と、アズライールさんは


 「このジジイは悪魔だ。そして、そこの二人は悪魔に騙された可哀そうな子供だ。」

 「このバカ者が。可哀そうなのはワシじゃ。それじゃワシが一方的にワルになるだろうが。」

 「うん?お前は一方的にワルなんだから良いだろう?」

 「何がだ!。」

 「おい、ジジイ、お前もしかして……」

 「うん?やはりウリエルにはわかるかの。」

 「ル、ルシファー……」

 「ルシファー、だと?何だそれは。」

 「マコーミックよりも高位の、有名な大悪魔だ……」

 「悪魔!?」

 「じゃ、じゃあアズライールさんも悪魔なの?」

 「あー、私はその逆だな。私はウリエルと同じだよ。天の使いだ。」

 「何だと?」


 「なー、ねぇちゃん達が“でぃあまんてす”ってやつか?」

 「そ、そうだけど、何で知って、っていうか、なんで君たちはここに居るの?」

 「まー理由はねぇちゃん達と同じだよ。モンスターを殺しにきたんだよ。」

 「そ、それって、君たちが?」

 「ああ、俺たちは強いんだぜ!」

 「こんなモンスターなんて屁でもないさ。」

 「へ、へぇー……」


 とりあえずピンチは脱した、のかな。

 というか、この状況をまず何とかしないとね。

 頭は混乱したままだ……

 

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