一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】

結城芙由奈

1話

 私の名前はステファニー・ベルモンド。


名門の由緒正しい伯爵家の、いわゆる御令嬢という存在だ。

ホワイトブロンドの長い髪に、まるで宝石のような緑の大きな瞳。

自分で言うのも何だけれど、なかなかの美人だと思う。


騒がしいことを好まず、群れるのが嫌い。

1人、静かに読書をして過ごす時間をこよなく愛している。


当然親しい友人もおらず、学園内では「クールビューティー」などと呼ばれている。

他にも、もう一つ私の呼び名があったようだけど……そんなのはどうでも良いことだった――



****

 


いつものように中庭で昼食を頂いた私は、図書室で大好きな読書をしていた。

日差しがよく差し込む窓際の席、ここが私の特等席。


今読んでいるのは、恋愛小説。

夢中になってページをめくって読んでいると、不意に視界が暗くなった。


「?」


不思議に思って顔を上げると、見知らぬ3人の女子生徒が私を取り囲んでいる。


「ごきげんよう。ステファニーさん」


見知らぬ赤毛の女子生徒が声をかけてきた。


「ごきげんよう。……どなたかしら?」


「あなたは私のことを知らないようだけど、私はよーく知ってるわよ?」


赤毛の女子生徒は敵意のある視線を向けてくる。

彼女の取り巻きのような女子生徒たちも同様の視線だ。


「……そう。私に何か用でもあるの?」


「あるに決まってるじゃない」

「だから話しかけているんでしょう?」


2人の取り巻きが聞えよがしにヒソヒソと話している。


「大事な話があって来たのよ。どれだけ捜し回ったと思ってるの?」


赤毛の女子生徒は腕組みするとふんぞり返った。


「ふ〜ん」


彼女が捜し回ろうが、私には関係のない話。再び本に目を落とすとヒステリックな声があがる。


「何勝手に本を読んでいるのよ! 話を聞きなさいよ!」


「分かったわ」


本に栞を挟んでページを閉じ……。


「はぁ〜……」


大きなため息をついた。


「信じられない!」

「ため息をついたわ!」


取り巻き女子生徒が再び騒ぐ。


「ちょ、ちょおっと!! 聞えよがしに大きなため息をつくのはやめてもらえないかしら!?」


地団駄を踏む赤毛の少女の背後から図書室司書の女性が「ゴホン」と咳払いする。

そう、図書室では私語は慎まなければならないのだ。


「……ここは場所が悪いわ、外へ行きましょう」


バツが悪いと思ったのか、赤毛の女子生徒が小声で提案してきた。


「嫌よ」


「は! 即答!? 少しは考える素振りでもしたらどうなの!」


注意されないように再び小声で文句を言ってくる。


「何故あなたの都合に振り回されなければならないのよ。用件なら手短に、ここ

で1分以内に済ませて頂戴」


図書室にかけられた時計をチラリと見れば、貴重な昼休みは残り時間が後20分しかない。

折角面白いところだったのに……これ以上読書の時間を邪魔されるのはごめんだ。


「本当に気に食わない態度を取ってくれるわね」


彼女の目が釣り上がる。


「外見だけでなく、性格もキツイのね」

「だから友人もいないのよ」


取り巻き2人の声が耳障りで仕方ない。私は彼女たちを一瞥すると無視し、赤毛の女子生徒に尋ねた。


「その前に、まずはあなたの名前を教えて頂けないかしら?」


失礼なこの赤毛女子生徒はまだ名前すら名乗っていない。


「いいわ、恋敵の名前を知っておきたいってわけね?」


フフンと鼻をならす赤毛女。

聞き間違いだろうか? 今。恋敵って言わなかった?


「まぁいいわ。こっちだって、あなたの為に貴重な休み時間を取られたくはないものね。私の名前はシビル・ワンダー。単刀直入に言わせてもらうわ。ステファニー・ベルモンドさん!! サイラス様から手を引きなさい!! あの方は私の将来の夫になる方なのですから!」


ビシッと赤毛の女子生徒は私を指さしてきた――


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